11 狂戦士、歴戦の風を吹かせる。
ウルガルダの魔石を拾うと、私はもう一度剣に〈サンダーボルト〉を纏わせてみた。
……やはり問題なくできるな。
私は前世で雷属性を多用していたこともあり、これの扱いが大の得意だ。なのでこんな芸当もできる。
しかし、先ほどの魔法店では、武器に雷を付与する魔法は〈サンダーウエポン〉という名で別個に販売していた。前の時代にはまだ存在していなかった魔法ではあるのだが……。
私は自分の中にある魔法を確認してみた。
ふむ、確かに武器に纏わせるのは〈サンダーボルト〉とは独立して存在しているぞ。
以前はただの技のように思っていたが、どうやらこれは魔法、〈サンダーウエポン〉らしいな。
そうか、私、魔法を生み出していたのか。
言われてみれば、昔もなかなか真似できる奴いなかったしな。
とにかく……、何か得した。
「ふふ、お前は今日から〈サンダーウエポン〉だぞ」
と剣に喋りかけていると、あちらから観戦していた六人が走ってくるのが見えた。
……今の、聞かれなかっただろうな。
リーダーの男性が代表して話しかけてきた。
「助かりました……、キミ、いえ、あなたはすごいですね……。そんなに可愛い、いえ、小さな体であのウルガルダを倒してしまうなんて……」
「可愛いも小さいも余計なお世話だ。この魔石は私がもらって構わないな?」
「はい、もちろんです!」
よしよし、これでまずは大型討伐の方はクリアだ。後は群れの魔獣を……、とちょうどいいのが来たじゃないか。
魔力感知で接近する複数の魔獣に気付く。その正体にもすぐに察しがついた。
なんせ、私が初めて仕留めた奴だからな。
森の奥から駆けてきたのは六頭のレギドランだった。
私は六人の新人戦士達をぐるりと見回す。
「一人一頭ずつだが、いけるか?」
「……ちょっと、無理そうです」
仲間内で相談するまでもなく、リーダーが即答していた。
「じゃあ、あれも私がもらっていいな?」
「「「はい、どうぞ」」」
六人の返事が綺麗に重なった。
では、遠慮なく。実はもう一つ試したい技、いや、魔法があった。
かつての私が好んで使っていた技で、大勢の敵兵をまとめて……、……やめておこう、私は生まれ変わったんだ(現実的に)。ともかくこれも魔法店に並んでいたから気になっていた。
まずは大剣に雷を這わせて〈サンダーウエポン〉の状態に。
そして、これを斬撃の波動と共に、前方へ放つ!
横一閃に剣を薙ぎ払うと、生じた稲妻の波動がレギドラン達に向かって飛んでいった。
ズバッシュ――――――――ッ!
六頭の魔獣が同時に塵と化した。
……〈サンダースラッシュ〉を自力で習得したぞ。得した。
魔石を拾い集めながら、今度は〈識別〉を自分に使い、また魔法が一つ増えているのを確認する。
新たに生まれた二つの魔法、〈サンダーボルト〉からつながっている感じがするな。なるほど、普通は〈サンダーボルト〉を買った上で、ウエポンやスラッシュを習得するわけか。それ、かなり金かかるだろ。
……他に自力で編み出せそうな魔法がないか、後でもう一回魔法店に行こう。
「じゃあ、レジセネの町に向かうか」
視線をやると六人は揃って唖然とした表情で立っている。
「おい、どうした? お前らには雷は放ってないぞ」
「いえ! 本当に、あまりにすごかったもので……! ……上位の戦士はここまでなのかって。……俺達、これからやっていけるのか不安ですよ……」
町に向かって歩きながら、リーダーの男性はそんな弱音をこぼした。
いかん、まだ来たばかりなのに自信を失いかけている。ここは私が何とか励ましてやらねば。上位の戦士という響き、悪くなかった。
「……お前らは、素質があると思うぞ」
「え……?」
「まず、私が駆けつけるまで誰も死なずに持ち堪えた。そして、何かに酔っている感じはしたが、全員で弱者を守ろうとした(本当は弱者じゃなかったが)。お前らはいいチームだ。きっとこれから強くなるだろう」
「ほ、本当ですか!」
「ああ、この私が言うんだから間違いない」
「あの、あなたのお名前を伺ってもよろしいですか?」
「いいぞ、私の名はリムマイアだ」
「リムマイア様……! いつかあなたのようになれるように俺達、頑張ります!」
リーダーの彼だけじゃなく、他のメンバー達も私をリムマイア様と呼び、次々に戦いの心得なんかを聞いてきた。
ふふ、なかなかに可愛い奴らじゃないか。
そうこうしている間に町に到着し、私は彼らを関所に案内してやった。ちょうどコレットの受付が空いていたのでそこに連れていく。
お喋りな受付嬢は早速リーダーの男性と話し始めた。
「そうですか、リムマイアさんに」
「はい、助けていただいて、本当に幸運でした。あんな子供のように小さいのに凄まじい強さで、リムマイア様はすごい方です。こんな歴戦の勇士を目指して頑張ろうって、皆で話していたんですよ」
「……あの、リムマイアさんは見た目通りの十歳ですし、皆さんと同じ、本日到着したばかりの新人さんですよ?」
コレットの言葉を聞いた六人は一斉に硬直した。
む、言ってなかったか?
それにしてもよく固まる奴らだ。