夢見る少女と親の仕事
少女は恋い焦がれる婚約者が愛おしいほど好きだった。でも、彼女の母は酷く困惑した声で子を叱った。
名前も知らぬ事実は誰かに生み換えていく。
何も知らなかったあの頃に比べたら特段変わらない。
彼女の母は、娘と父の仕事に押し付けた酷く哀れな母親だったであろうか。
人として、曲げては成らぬ信念はあったかも知れない。
リサエルの子を持つ母親は婚約者の親の下へ足を運ぶ。
遠い祖先で縁だ、だからだろう。
親が赴く場所が一番危険だと。そう知りながら母親のリセネルが侯爵の館へ向かった。
齢28でありながらも力強い意志を感じつつ進む彼女の心は孫娘の損害賠償の請求権でどういう経緯であのような発言をしたのか追及するつもりで単身で侯爵領へ入っていく。
旅は穏やかだったろう、が。一早く、気がせいて向かう先に果たして求める回答が返って来るか心配だった。
彼女は到着する頃には、婚約者の侯爵家では慌ただしい準備の段階まで勧めていた。
侯爵のハラカルは息子がやらかした始末書を処理していた。
侯爵家にリセネルの夫人が来られた。
使用人たちが急ぎ出迎えた。
淡い金色の髪を靡かせ歩く姿は子供を産んだとは思えない豊満な女性の夫人の姿があった。
賓客室に案内されたリセネルは調度品の品々を見ながら、羽毛に包まれた椅子に座る。
見るからに上品な数々の資材で使われていることがよくわかる。
美術品の絵画が程よく上手い具合に描けれていた。
リセネルは使用人のメイド服の一人に話し掛けた。
「ここにくるよね、侯爵様は」
メイドたちは戸惑いながらも小柄のメイド服の姿の女性が頭を下げる。
「はい、もちろん。旦那様はよくここへ来られます」
「まあ、いいわ。私はよくも、コケにした罪を贖って貰うつもりよ」
そう言う彼女の瞳には懲らしめてやる気持ちでいっぱいだった。
ハラカルはどうしようもない危機的状態化に置かれた気づき急いで対処する方法を模索した。
だが、時間がそれを許さず訪問のベルが鳴る。
ここに仕えて早二十年のロースは旦那様の様子を見て執事長たる彼は庭師のログヴァに相談する。
「それはちったぁ考えろやくそ餓鬼が」
10才以上離れているログヴァ・イステルバーグ。
孤児のままにここに引き取られてずっと、住まわせて貰っている立場の人間だったがハラカルの父に亡くなってから、考えを変えた男であった。
口調は孤児の時のままで、やってきたからこれからも変えるつもりもない。
中身はくそ餓鬼同然だが、立派な庭師と成長している。
殆どを賄っている主人の前では忠誠を誓っている。
そんなログヴァはロース・エレ・ルーシュヴェークが二十年の付き合いだが、未だに気に食わないことがあると突っかかってくる。
ロースはそんなことは気にもかけない男であった。
「旦那様があの息子同然だった男がやらかしていた案件がもうすぐ来られています。どうすればいいか、ここに来れば解決するかと思い、きた。」
全く平然と言う男の前では冗談も通じない男に何言っても無意味だと思いつつ、考えれば分かることを聞いてくる当たり変なやつだと。
「お前ら貴族は義務があるだろ。それに従えばいいじゃねぇか」
「旦那様には旦那様の事情があります」
頭をひねり出す気持ちでフル回転する。
何も出なかった。
「じゃあ、あんたが出迎えて遇った方がいいじゃねぇか」
ロースはそんなものに拘り、旦那様の先に出迎えてやるとは。
この時のログヴァは思いもしない。
彼女が来て数分の時間が経過した。
青髪の黒みを帯びた男性が出迎えた。
「リセネル夫人、よくいらっしゃいました。旦那様は今は忙しい時期で出迎えられないので私たちがこのような者たちが対応しますのでご了承願います」
彼女は侯爵様が出迎えられないやましいことがあるような発言をする男性を怪しむが詮無きことだと思い、妻の名前である名を告げてみる。
「シャラリア夫人はどこにいらっしゃるのかしら、私はその方にもお話しをして差し上げたく存じます」
侯爵夫人の名を告げるリセネルは娘の恥曝し受けた屈辱を味わせるべくここへ参った次第だった。
メイド服の姿のチャオがリセネル夫人の前に頭を下げ九十度までお辞儀する。
「今、旦那様と奥様は現在いらっしゃる時間には居られません。しかしながら、リセネル夫人は何用で参られたのですか」
メイド風情がこんなことを聴くに値しないことを十分にわかっているのに、聞かざる終えなかった。
執事の男にいるのに関わらず、シャオはこの男のことを信用すれば。後悔すると思い行動に移しただけ。
たったそれだけで、後悔もしないと決めていた。
リセネルはこの地方のことはよく知らなかった。
「私は、娘の恥を晒した侯爵家の息子に謝罪と請求を申し立てています。我が家のことは十分にご存じなはずです。私はあの言葉の意味を知りたくて存じます。娘があのパーティーで受けた屈辱を晴らす為にも申し立てています」
なぜ彼女がここに出迎えられなければいけなかったのかは夫のローザイクが知っている。
事の発端は誕生パーティーにある。
彼、彼女らは。ある時期のパーティー会場で婚約者は相談なしに発言した事が原因だった。
何でこんなことを繰り返すのか。
「奥様。これ以上は旦那様が困ってしまいます!引き取りをお願います」
執事の男がそう告げてみるがリセネルはどうしても許せなかった。
侯爵家の有様がひどく醜く見えて歪んで聞こえる。
ここまで一方的だったのか失望しているリセネルに追い打ちをかけるように。
ルーシュクラン家、ヴァルフォルト家、ヴェルシュタイン家、コーフェムト家、エルデ家、メルハラド家。
中級階級の社会に包まれる貴族たちは中立の立場で物事を見る。
その中でリセネル夫人は中流階級の立場だった。
娘の為に来た彼女は平民の彼らのことをひどく哀れんだ。
やっと来た侯爵家のハラカルが賓客室に入室する。
彼は彼女を見た瞬間、頭を下げ部下に対しての怒りをぶつける。
「貴様は、夫人対しての礼儀を巻き舞えないか。この地位があるのは、貴様自身の問題だろう。即興クビにしたいが、夫人がいる前で無様な姿を晒してほしいのか?即刻貴様をノータリア王国に突き出して胴体真っ二つにしてやろうか!」
彼女はこれが当たり前の国に生きていることを実感する。
平民と隔たりがある国ではごく当たり前だった習慣。
六家の家々に属する者が国の地位を守ることを義務付けされる。
その一つに彼女がいた。
エルデ家である。
伯爵家にヴァルフォルト家へ嫁いだ長女の娘がエルデ家だった。
その親として、責任を果たす役割で担っていた子供が自分たちでやってきた知識、経験を駆使して子供の頃に詰め込んでいた時代背景に彼らは教育を施した。
そして、現在に至る。




