平和の礎は誰か手に委ねることは誰かの思い
僕はずっと前から知っていたかもしれない。
お兄ちゃんが何者であっても、僕はそのままだった。
ハルト、君が羨ましいよ。
とってもとっても大事に育てられている君に羨ましい。
そして妬ましいよ、前世の世界が壊すぐらい俺は君が愛おしいよ?
おかしいだろ、お前がいた願いを奪った人格の形成を。それでも許すお前が憎い。
もう喰っちまったんだろ。
兄貴や世界の半数を――――――――――。
愛おしいだろ、苦しいだろ、もどかしいだろ、呪っただろ、お前が望んだ声だ。
この世界でお前が作った未来は来ない。
喰ったこの世界のみが終末した処理場になったことを後悔するがいい。
奪ったのはお前自身だったことを忘れるな
化け物の退治とは違う世界で形成した愚か者はお前自身であると証明する。
これを綴る日記にはもう。現れない人の子に託す。
この手紙のような日記でも読んで頂ければ幸いだよ。
それでも、君が羨ましい。
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少女は望んだ未来を作った。
結果として、国に奪われた。
壊したい欲望を撒き散らし、彼女は望んだ。
もう一度があるなら、復讐の名を借りて。
殺すことを誓う。
慈悲はいらない。
スキルであの国を滅ぼすことを望んで歩み寄る。
転生した私たちで、あの国を滅ぼす。
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北にそびえ立つ城に領主のハピロンがいた。
一人娘の祝いに受け取った花飾りを身につけた女主人のローガ・ハヴィロン氏がいた。その隣に娘のネルへイムの姿がある。
館の主であるローガ・ハヴィロンは領主であるハピロンに問いかける。
「夕暮れ時に来られた。ハブロス伯爵に自慢げに語っていたことは本当かしら」
頷き肯定する領主は空の向こう側を見つめ、窓の奥に潜む怪物の方に向けてローガ・ハヴィロン女主人に。
「龍の祠があったなど、言えるものか。最悪のドラゴンの黒龍だぞ!それを何匹もなどと、我々に手段などないというのに。どう討伐しろというのだ。我が領地のすぐ近くに巣を作っていると報告は受けている。港近くの連中ははぐれ者として盗賊化しているのだ。兵力差は歴然だ。領地の民はもう混乱に陥っている。この状況にどうすれというのだ。我々の攻撃手段はもうとっくに潰えている、ギルドの連中はあてならん。逃げるしか方法がない!」
ハピロンはずっと壁に打ち続けていた。ひたすらに何も変えられぬ現状に苛立っていた。
「もうすぐ、ここまで来ると報告があった。ハヴィロン女史お願い申し上げる娘を頼む。我らで何とか食い止める。有能な冒険者を呼んでおいてくれ、我が領地に踏み込んだこと後悔させてやる。よろしく頼みましたぞ」
最初最後の仕事だと言い聞かせ体にムチを打つハピロンは屋敷から出て行き、出陣の準備をする。
彼はずっと壁に打ち続けていたことは知っていた。でも。ここまでよく持ち堪えたと思う彼女は南の先にある目的地へ準備をする。
館から続々とメイドとその執事がハヴィロン女史とともに南の平原のグランハズシタの深き森のロッパルに向かう。
数週間前に起こった出来事だった。
互いの領地を護ってきた二人は訪れた不幸を嘆きつつも淡々に起こる出来事を振り返らずに目の前の優先順位を決めた二人はこの地で消え去る我が身を案じて子を託すと700の兵力で挑む。
住民もここに残り生涯を過ごすはずだったろう。仕方なかったのだとハピロンは心の中で言い聞かせた。
「これより先は死しか待っていない。諸君に問う。我らが逝く道は果てしなく終わる。皆が同じ気持ちであったことをここに願う、いまここに誓う。己の為にここで死んでくれ」
苦虫を噛みつぶした表情で号令をかける。
「いざ、ここに眠る兵士たち。龍の下へ進軍する」
静かに兵士たちは声を発することなく前へ前へ進む。




