初めての『寄生』
洞窟に入って2時間ほどたった。
俺は今、襲われてる。
「ガアアアアア!」「 グオオオオオオオオオ!」
逃げる。じゃないと死ぬ。
洞窟に入ってから………いや、転生してからずっとこの調子だ。
魔物から見れば、俺は美味しいのだろうか。
確かにナマコは美味しいと聞いた事があるが………
これってもしかして、洞窟の方が大変じゃないのか?
今追いかけてきている魔物は三体。
その三体とも狼のような見た目をしている。
今戦ったとして、負けて食い殺されるのが目に見える。
どこかに隠れなければ……
と、俺は辺りを見渡す。
「ん?あそこ………」
目 (?)線の先に、この体しか入れないような隙間が見えた。
…………俺は運がいい。
俺は急いでそこに入る。
そしてさらに奥に進む。
まるでスパイ映画の主人公がダクトを通るみたいだ。
狼の魔物は前足を突っ込み掘ろうとするが硬い岩はビクともしない。
奥に進むと少し広い空間に出た。
丁寧に、発光する鉱石………魔鉱石ってところか?その魔鉱石のおかげで視界も確保出来ている。
「これからはここを拠点にしよう」
俺はこの場所の居心地の良さにそう決める。
そしてまずこれからの事を考えた。
先程までは『触手』を使い逃げていた。
だがそれだけでこの先やっていけないのは確実。
何か、他の手が必要だ。
『叡智』、俺の………ステータスは見れないか?
"種族名 エンシラルパラサイト”
転生スキル 『叡智』
種族スキル『寄生』『触手』
ある。『触手』以外にもうひとつ。
『叡智』、『寄生』の詳細
"スキル『寄生 』”
対象の生物の体力が元の半分以下に下回ると使用可能
使用すると対象の体に入り、肉体を乗っ取る
さらに寄生した生物のスキルを覚えることが可能
───なるほど。このスキルは今後頼ることになるな。スキル『寄生』、対象の生物の半分以下まで下回ると使用可能…
「キツくね?」
思わず愚痴が出る。
このスキルは相手のHPを半分以上削らないと使えない。つまりは最初は『触手』だけで戦わないといけないのだ。
………まぁやるしかないか。
最初の標的は、さっきの狼になるだろう。
「スキル『叡智』、あの魔物の名前は?」
"種族名 レッサーアダマントウルフ”
レッサー…あれでレッサーなのか…。
だが、1匹だけなら何とか上手くいくだろうか?
そもそも、体力の半分ちょっと削ればいいのだ。
──多分、大丈夫。
俺は戦略を幾つか考え、拠点を出る。
気配を隠しながら、周囲を探すと……いた。
あの狼の魔物が1匹で休んでいたのだ。
全く、運がいいんだか悪いんだか
よし、少し卑怯だけど、生きるためだ仕方ない。
俺は回り込み背後から『触手』を伸ばす。
そして
「首、絞め!!」
「ッッッ!!」
急に首を絞められた狼は苦しさに悶え、俺を振り下ろそうと躍起になっていた。
だが、背にのった死に物狂いの俺を振りほどくことはできない。
そのまま、おそらくこの洞窟内で一番滑稽な悶着がが繰り広がれる。
そして数分か、数十分ほど時間が経って次第に狼は弱っていき、抵抗力も下がっている。
──今なら、『寄生』
俺は詠唱する。
するとゼリー状の俺の体はスルスルと狼の身体に入っていき、次第に狼の手足が自分の体となっていくのを感じた。
「成功………ってことでいいのか?──『叡智」
"種族名 エンシラルパラサイト”
寄生先 レッサーアダマントウルフ
転生スキル 『叡智』
種族スキル『寄生』『触手』
習得スキル 『嗅覚強化』『豪爪』『豪牙』『脚力強化』
先程よりも増えたステータス欄。
初めての『寄生』に成功した。
四話になります
初投稿から1ヶ月経ちました
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