マイマインド ~親ガチャ失敗して日本を追放された俺が突如目覚めた能力で上級国民をぶっ飛ばし無双する~
マジでイライラする。
なんとか必死に頑張ってここまでやってきたが――
無職。
クソみたいな義務教育。
仕方なく通った工業高校。
そしてクソみたいな工場での仕事。
毎日クソみたいな工場長の嫌がらせにも耐えた。
それがちょっと不況になっただけであっさりクビを切られた。
退職金もなし。
なんなら今月の給与も半分しか支払われていない。
なんとしてでも給与の半分はもわらなくてはいけない。
俺は工場へ向かい歩みをすすめた。
一歩一歩は地面を割るほどに力強い。
そんなイメージで歩いている。
思えば生まれた時からクソだった。
物心ついた時に母親は毎晩飲み歩いて家には、ほとんど居なかった。
父親は存在すら知らない。
ほとんど母親のバアちゃんに育てられたようなものだ。
完全な親ガチャ失敗。
世界中には生まれたら戦場でした。
なんてもっと悲惨なケースもあるだろう。
だが、なまじ周囲の幸せそうな様子を見せつけられ、なまじ考える余裕があるだけつらい。
相対的には世界で一番ガチャ失敗だろう。
あれこれ考えていたら、いつの間にか工場の目の前に居た。
いつも見慣れた景色。
中ではムカつく工場長や同僚が居るんだろう。
「よお。タカシ、何やってるんだ?」
「いてっ!」
後頭部に衝撃が走った。
挨拶がてら殴ってくる奴はアイツしか居ない。
「工場長……」
勢いよく怒鳴りつけたつもりだ。
「お前、クビだったよな? こんな所で何やってるんだ?」
工場長はニヤニヤと下品な笑みを浮かべていった。
「きゅ、給料が半分しか入ってなかったんで……」
俺は勇気を出して言った。
「なんだぁ? お前使えないくせに給料の文句か?」
「いえ、月給手取り14万のはずが振り込みが7万しかなかったので……」
「バカやろう! お前みたいな使えない奴は半額入っただけでも感謝しろよ!」
「で、でも……」
「うるせーな!」
工場長は突然ケリを入れてきた。
「うぐぅ!」
い、いてえ。
俺はその場にへたりこんだ。
「ハーッハッハッハ! おもしれえ奴だな」
俺が地面にへたり込んでる様子を見下ろし工場長はバカ笑いした。
く、くそお!
ぶん殴ってやりたい。
だが、工場長の体躯は身長180をこえゴリラのような体格。
俺は身長160で痩せ型。
到底勝ち目は無い。
仮に一発なぐった所で百発は殴り返されそうだ。
「ん? どうした?」
工場長はしゃがみこむと俺の顔を覗き込んできた。
くそっ!
くそっ!
くそっ!
こうなったらもうどうなってもいい!
やってやる!
---
目が覚めると、ぼんやりと白い天井が見えた。
左目しかあかない。
体中が痛い。
両手、両足とも動かない。
包帯でぐるぐるにまかれてベッドに固定されているようだ。
俺の目が覚めたことを「意識不明だったトワタカシさん回復しました」と誰かに報告する声が聞こえる。
誰かが近づいて来たと思ったら一瞬、視界が黒い手帳で遮られた。
それはすぐに引っ込められると声が聞こえた。
「トワタカシさんですね?」
「は、はい……」
何とか返事をして声の主の方へ視線をやるとスーツ姿の2名の男が居た。
刑事課の何だとか言ってる。
目がさめたばかりで、頭がぼんやりとしていまいちはっきり聞き取れない。
「以上で事情聴取は終わりです。サインはこちらで代筆しておきますので」
そういうと2人は去っていった。
どうやら俺は工場長にボコボコにされて意識不明の重体だったらしい。
まったく記憶は無いが、少なくとも工場長はこれで終わりだ。
刑務所行きだろう。
ここまでボロボロなら慰謝料もたんまりともらえるだろう。
親ガチャ失敗したが、捨て身のガチャで大金ゲットだ。
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「いててて……」
病院に来て三ヶ月。
リハビリで何とか歩けるようになった。
一応、右目も大丈夫だった。
視界がぼんやりとするので視力は落ちたんだろう。
しかし、これからあの工場長が裁かれて慰謝料も貰えるなら気もおさまると言うものだ。
俺が病室に戻ると若い女性看護師が待っていた。
新卒ではいったばかりだろうか?
幼い顔をしている。
だが巨乳。
いかにもなナース。
まさか俺に告白か?
「あ、あの……」
「は、はい」
まさか本当に?
「あの、まことに言いづらいのですが……」
え? マジで?
「入院費等の未払いが100万円を越えていて、一部でもお支払い頂けないと今日中に退院となって……」
「ファッ!?」
どういうことだ?
入院費が自腹?
「あの俺のケガは暴行を受けたもので支払いは相手が、いや、相手が無理でも保険なり……少なくとも自分じゃなく」
「え? そうなんですか? ケガは工場内で自暴自棄になって暴れてみずから負ったものだと聞いてたので……」
「ファッ!!!???」
ま、まさか。
暴行事件が隠蔽されたのか?
工場長が嘘をついて。
「ちょっと! まってください!」
俺は興奮のあまり病院を飛び出した。
まだうまく歩けないが、必死に左右の足を動かした。
(とにかく真相を話さなければ)
俺の意識が無いのをいいことに工場長の暴行が隠蔽されたのだ。
病院の前にとまっているタクシーに乗ると俺は警察署へと向かった。
「運転手さん。ここで待っててください」
俺は警察署へと向かった。
受付で騒ぐと奥から病室で俺に話しかけてきたスーツの男が現れた。
「あー、あなたですか、今日はどうかしました?」
「どうかも何も! どういうことですか!」
俺は工場長の暴行についてまくしたてた。
「何言ってるんですか? あなたは自分でケガしたんですよ」
「ふ、ふざけるな!」
さすがの俺も怒鳴りあたりに響くほどの大きな声をあげた。
「それに工場長の飯塚さんですが」
「アイツが何だっていうんだ!」
「飯塚さんは上級国民なんですよ」
「ファッ!?ファッ!?ファッ!?」
---
俺は日本を追放され各離島へと送られた。
上級国民への反逆的行為はもちろん思想でさえ重罪となる。
「まさか工場長が上級国民だったなんて……」
自動車事故で人を死なせる程度の話。
相手が中級以下の国民であれば無罪なのはもちろん、
上級国民の下級国民へ対する殺人でさえも罰せられることは無い。
それほど上級国民と下級国民の命の価値は違うのだ。
親ガチャ失敗した俺は当然下級国民。
工場で働く工場長も下級は無くとも良くて中級だと思っていた。
それでまさかの上級国民。
あれほどやりたい放題だったのもうなづける。
仕事が目的ではなく俺のような下級国民をいびるのを面白がってたんだろう。
そしてこの島。
各離島は上級国民が下級国民の殺し合いを楽しむ場所なのだ。
島へ供給される食料は常に少なくコントロールされ奪い合いを誘発する。
クソ!
クソ!
クソ!
いよいよ底辺の中の底辺へ落ちてしまった。
とにかく生き残ることを考えなくては。
そして生き残って日本に戻ってやる。
次の瞬間、俺は暗闇の中にいた。
いや、空中に浮いているようだ。
眼下には光が見える。
高層ビルから見たことある光景。
夜のどこか都会の空中にいるみたいだ。
「な、なんだ? これ」
俺が驚いていると目の前で叫び声がした。
「うおおおおお! なんだ、こりゃあああ!」
俺と同じように空中に浮いているのは工場長だった。
「工場長……」
「ん? タカシ? お前、日本を追放されたんじゃなかったのか?」
空中でバタバタと無様に動きながら工場長は言った。
こんな状況でも偉そうな奴だ。
だいたい、上級国民というだけで俺を日本から追放しやりたい放題。
(ブン殴ってやりたい)
俺の右の拳は思いっきり工場長の顔面をとらえていた。
いっきに振り抜くと工場長は足元へ広がる遥か地面へ向け一直線に落ちていった。
道路に激突すると轟音をたてて土煙をあげた。
「ファッ!?」
道路は陥没し工場長は粉々に砕け散ったようだ。
「な、なんだ? ……これ」
これがマインドだと俺は知っている。
そう誰かがつぶやいた。
何であれば俺はにっくき工場長をぶっ飛ばすことに成功した。
親ガチャ失敗した俺が日本追放までされたのに上級国民に一矢をむくいたのだ。
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