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第三章

圧倒的な力をもつプロキオンへの対抗策として、プレアデス側が編み出した秘術。それに対してプロキオンは?

エピソード6


 アンタレスは目を開けた。

 黒い天井に、硬い寝台。いつもとあまり変わらない。

 帝国研究所だろうか? いつのまにか戻ってきてしまったのだろうか?

 「気がつきましたね」

 長い髪の女性が、彼のことを覗き込んだ。

 「……君は?」

 紫の長い髪に、整った顔。見覚えのない女性だ。

 「あなたを調査しているものです」

 調査? いったいなんのことなのだろう。

 「しばらくは危害を加えません、魔王さまの命令です」

 魔王。その単語で、彼の頭が動き出した。自分たちが魔王に戦いを挑み、敗れた記憶がはっきりと蘇る。

 「まさか、ここは?」

 「魔王国暗黒星座。その砦のひとつです」

 彼は、驚きのあまり寝台から飛び起きた。だが、腕に金属質の感触が食い込み、途中で寝台に引き戻される。

 「危害は加えません。しかし、自由は与えません」

 両腕に鋼鉄の腕輪をはめられていた。それは、硬質の床に鎖でつながれている。

 「僕をどうする気だ?」

 殺されはしなかったが、素直には喜べない。

 「先ほど申し上げたように調査です」

 「なんの調査だ?」

 「あなたは、わたしの言うとおりにしていればいいのです」

 彼女はアンタレスの質問に答えない。

 「あなたには主張する権利はもちろん、考える自由もありません。ただ、わたしのすることに逆らわなければいいのです」

 冷たい表情と口調で淡々と言葉を続ける。

 「所詮、あなたは捕虜なのです」

 「生かしてもらえるだけでもありがたいと思え、か」

 突然、腕に激痛が走った。

 「う!」

 「口の利き方には気をつけるように」

 電流かなにかが流れる仕組みになっているようだ。

 「危害は加えないんじゃなかったのか?」

 「あくまで従順にしていれば、の話です」

 もう一回、電流の痛みが彼を襲う。

 「逆らうごとにこれです。もし脱走でも企てようものなら」

 彼女は無表情のまま、言葉を続ける。

 「殺します」

整った顔と澄んだ声であるため、余計に不気味だった。一瞬、背筋に冷たいものが走る。

「なにか聞きたいことは? 可能な範囲で答えてあげましょう」

可能な範囲。どうせ、たいしたことは聞けないだろう。

「……きみの名前は?」

とりあえず、それくらいはなら聞いても問題はあるまい。

「ヴェガ。あなたのことはなんとお呼びすれば?」

「アンタレスと呼んでくれ」

こうして、アンタレスの捕虜生活が始まった。そしてそれは、ヴェガと名乗る奇妙な女性との生活でもあった。


ポラリスは、整列した軍団員を見下ろす。

「魔王様は大変お嘆きでした」

そして、大げさにため息をつく。

「魔王様は先日、プレアデスの一人を捕らえ、残り四人を撃退しました」

あの姿は忘れられない。赤い月明かりと血で、真っ赤にそまったプロキオンの姿を。

「たったお一人の力で、いとも簡単になしとげました。しかるに、あなたがたはどうですか!」

うなだれる魔法人形部隊及び魔物部隊。

「何人もの幹部クラスと多くの兵士を失いながら敗北続き。魔王国の威信を大いに下げたと言わざる得ません」

 今回のことで、彼女は改めてプロキオンの強さを思い知った。彼が直接戦えば、世界制覇もすでに完了していただろう。だが、そううまくいかないのが現状だ。

 「魔王様は、あえてプレアデスたちにとどめを刺しませんでした。あなたたちにもう一度機会を与えるためです」

 彼女が考えた弁明である。本当はとどめを刺さなかったのではなく刺せなかったのだ。

 プロキオンは直接人間を殺せない。人間によって作られた、彼にはめられた枷。

だからこそ、このように軍団を形成する必要があったのだ。だが、そんなことを軍団員に話すわけにはいかない。

「プレアデスのリーダーを捕らえ、砦のひとつに監禁しています」

 いまはヴェガが様子を見ている。本来、部隊長の仕事ではないが、彼女には敵の体を調査するために必要な装置が内蔵されているのだ。

 「これから密かにその情報を流します」

 軍団員がざわめきだった。

 「そうすれば、仲間はきっと助けにくるでしょう。その時、プレアデスたちを倒す。魔王様が与えてくださった機会です」

 ポラリスは軍団員を見回す。

 「挑戦する部隊はありますか?」

 ポラリスの問いにフード姿の男が進み出た。

 「司令。その任務、わが部隊におまかせください」

 人間部隊一等星アルクトゥルスだ。

 「いえ、ぜひ我が部隊に!」

 「俺の部隊にやらせろ!」

 同時に、魔法人形部隊二等星スピカ、魔物部隊一等星シェアトも名乗り出る。

 「恐れ入りますが、司令」

 アルクトゥルスは横目で他部隊を眺めながら言う。

 「あちらの両部隊は、何回もプレアデスたちに挑んで敗退し続けた部隊です」

 そして、口元にいやらしい笑みを浮かべる。

 「そんなところに任せればまた失敗するに決まっていると思われますが」

 「なんだと!」

 シェアトが、その言葉に反応する。

 「もう一度言ってみろ!」

 「おや、聞こえませんでしたか」

 怒鳴り声をあげる魔物に対して、人間は落ち着いている。

 「また負けると言っているのです。考えもなしに突っ走る、獰猛なだけの連中では」

 「貴様!」

 シェアトはアルクトゥルスの胸倉をつかんで引き寄せた。

 「もう一度言ってみろ!」

 「ほら、そういう短気なところがいけないのですよ。思慮のない」

 「この……!」

 シェアトは、震える拳をふりあげる。

 「やめなさい!」

 だが、その手はポラリスの一喝により、振り下ろされることなかった。

 「なんですか! 部隊長ともあろうものが。恥を知りなさい」

 シェアトは露骨に舌打ちをし、胸倉から手を放す。

 「シェアト、アルクトゥルス。お互い謝罪しなさい」

 「……すまん」

 「いえ、言いすぎでした」

 抑揚も感情もまったくない侘びの言葉を交わし、二人は再び前を向く。

 「各部隊の強弱は別として、魔法人形、魔物両部隊の損害が大きいことは確かです」

 ポラリスは慎重に言葉を選ぶ。

 「よって、今回は人間部隊にプレアデス討伐をまかせます」

 プロキオンには事後報告になるが仕方ない。ここで、決定を延ばせば、またこじれる可能性がある。

 「では、それぞれの部隊は引き続き帝国・共和国方面への攻撃も進めてください。では、以上!」

 ポラリスは右手を高く挙げる。

 「ダーク・プロキオン!」

 『ダーク・プロキオン!』


 人間は戦争を憎む。多くの人間が死ぬから。しかし、戦争はなくならない。

 人間が争いを好むからなのか、それとも他の理由なのか、『戦争をなくそう』と声高々に叫んでも戦争はおこる。そして、戦争が終わると『二度と悲劇は繰り返さない』と叫ばれる。しかし、また……。その繰り返しだ。

 だが、ある人は考えた。戦争が起これば人間は死ぬ。人間が死んではならない。しかし、戦争は起こる。戦争はとめられない。なら、人間が死なない戦争ならどうなのか、と。

 人間が死なない戦争。自動操縦の兵器による、機械だけの戦争が始まった。もう戦争で人間が死ぬことはない。戦争の悲劇は回避された。最初は、みんなこのことを歓迎した。

 しかし、何か新しいことが始まると、それに対して必ず反対が起こる。

 『機械だけでも戦争は悪』

 『平和への思いを踏みにじる行為』

 反対運動は徐々に広がり、やがて全世界でその地位を確立した。そして、彼らは主張した。

 『戦争を起こさないために、兵器を全て廃棄するべし』と。

 意思をもった兵器も含めて……。

 (人間が憎い)

自分たち人間を特別なものとみなし、意思をもった機械を差別する。そんな人間がたまらなく憎い。

自分たちに都合がいいときだけこき使い、都合が悪くなるとあっさりと廃棄する。そんな人間が憎い。

平和だ正義だときれいごとばかりならべ、自分の気に入らないものを排除しようとする。そんな人間が憎い。

(それは、この世界でもおなじ)

それが、プロキオンの出した結論であった。


それから一月あまり。

予想したプレアデスからの襲撃はおきなかった。それどころか、あの後彼らの姿を見たという報告はない。帝国軍との交戦においても、彼らは現れなかったという。

『傷が悪化して死んだのでは?』

『いや、我々を油断させる作戦だろう』

憶測だけが飛び交う。

「いまのところ、信頼できる情報はなし……」

誰に聞かせるわけでもなく、ポラリスはつぶやく。

(だから、いまあれこれ考えても仕方ないわね)

彼女は、プレアデスのことから離れ、各部隊の陳情に目を通し始めた。

「ふう……」

しばらく読んで、彼女は深いため息をつく。魔法人形と魔物の両部隊から、戦力増強の嘆願だ。

(プレアデスに戦力の大半を倒され、いまも回復していないのね)

だが、そう簡単にはいかない。魔法人形はもう部品がなく、これ以上の生産は不可能。ベテルギウス内の工場でも、一から部品を作るにはかなり時間がかかるそうだ。

(魔物は簡単につくれるけど……)

 だが、ポラリスはどうも抵抗感を覚える。動物を無理やり改造し、戦うだけの道具にする方法に。

だが、魔物たちが大切な戦力であることにかわりはない。いま魔物部隊をなくすことなどとてもできない。そのため、廃止まで進言できなかったが、やはり胸はすっきりしない。ポラリスは、なんの解決策も思いつかない。

(ヴェガを尋ねてみようかな)

このままでは気分が沈むばかりだ。それに、例の捕虜に関する調査内容も知りたい。

彼女は転移魔法を使い、ヴェガのつめる砦へとんだ。

「司令! お久しぶりです」

ヴェガは、ちょうど自室で報告書をまとめているところだった。

 「よく来てくれましたね」

 ヴェガは、ほがらかに笑う。ポラリスは一瞬、その笑顔に違和感を覚えた。

 「どうかしましたか?」

 「ううん、なんでもないの」

 不思議そうな目で見ていたのがばれてしまった。少しきまりが悪い。

 「ちょうどよかった。例の捕虜に関するデータがだいぶ集まりましたので」

 ヴェガはポラリスを室内にまねき、椅子をすすめた。

 「これが報告書です」

 ポラリスに分厚い紙の束が手渡される。

 「さすがね……」

 たった一月で、よくここまで書き上げたものだ。

 「アンタレス……調査対象のプレアデスに対して、尋問、体内調査などを行い、まとめた資料です」

 「これで、敵のこともかなりわかるわね」

 これからの作戦においてかなり役立つだろう。

 「ところで」

 「はい?」

 「プレアデスって、なにものなの?」

 報告書を読めばわかるのだろうが、これほど厚いとすぐ読む気にはなれない。

 「そうですね、簡単に言えば……召還獣と人間の融合体です」

「融合体?」

「はい、合成人間、とでもいうべきですね」

 帝国では数十年まえから密かに研究されていたこと。

完成したのはつい最近だということ。

最上級の召還獣以上の戦闘力を持つこと。などなど。

ヴェガは説明してくれた。

「現在、プレアデスは五人ですが、帝国内ではまだ研究が続いているそうです」

「では、増える可能性もあるのね」

プレアデスがこれ以上増えたらどうなるか? そう考えると、気が重くなる。

「わたし、プレアデスは嫌いです」

ヴェガがポツリとつぶやく。

「そうよね、部下がたくさん殺されたんだものね……」

 ヴェガの悲しげな表情。思わず、言葉に詰まる。

 「ええ、それもあります。でも、それ以上にかわいそうなんです」

 「誰が?」

 「アンタレスたちプレアデスです」

 ポラリスは一瞬耳を疑った。

 「どういうことなの?」

 「ええ。全てアンタレスから聞き出した話ですが、彼らは望んでプレアデスになったわけではないんです。ちょっといいですか」

 ヴェガは、ポラリスの手から報告書を受け取り、それをめくる。

 「彼らは生きるため、仕方なく、半ば強制的に改造を施されたんです」

 彼女は、あるページをめくり、ポラリスに手渡す。

 「読んでみてください」

そこには、簡潔な文章でこう綴られていた。 

『帝国は、国中の孤児を集めた。行くあてもなく、生活の保証のないものたちばかり。そして、召還獣と合成する実験を施した。そのうちのほとんどは死んだ。そして、五人だけが生き残った』

 そこまで読んで、ポラリスはドキリとした。

 このやりかた。

 本人の意思と無関係に、戦う道具に仕上げる方法。

 人間と動物という違いはあるものの、自分たちの率いる魔物と同じではないのか?

 「どうですか? 酷い話でしょう?」

 「ええ、そうね」

 動揺した表情を、うつむくことによってなんとか隠した。

 「こんな非道なことをしている帝国は許せない。一刻も早く帝国を倒し、新しい世界を作らなくては」

 ゆっくりと、少し強めの口調でポラリスは言葉を紡ぐ。まるで、自分に言い聞かせるように。

 いつもならここで、ヴェガも賛同してくれるはずだった。

だが、

「ほんとうに、それが正しいのでしょうか?」

と、ヴェガ。

 「アンタレスが言ってたんです。『自分も帝国のやり方は気に入らない。でも、魔王国のやり方が正しいとは思えない』って」

 そして、彼女は続ける。

 「たしかにわたしたちは多くの兵士を殺しました。その兵士たちにも家族や友人がいたはずです。わたしたちが多くの人を悲しませたのは間違いありません」

 そして、一言。

 「本当に、それが正しいことなのでしょうか?」

 部屋の空気が凍りついた。ポラリスは、ヴェガの顔を見つめたまま、瞬きひとつすることができなかった。

 「ごめんなさい。生意気を言ってしまって」

 だが、その空気をヴェガ自身から溶かした。

 「一見残酷に見えても、魔王軍は人々を幸せにしようとしているのですからね」

 「そうよね」

 ポラリスはむりやり笑顔をつくる。

 「言うなれば、畑を作るための雑草取りだからね」

 「ええ、そうですよね」

 そして、ヴェガも笑う。

 「こんな話はよしましょう。もっと楽しいお話があるんです。アンタレスが教えてくれたのですが……」

 楽しげに話し始めるヴェガ。

 (はじめてみた。こんな楽しそうに笑うの)

 彼女が部屋に入って来たとき覚えた違和感。それがなんだかやっとわかった。

 表情だ。

 いままで、ヴェガの表情はどこかぎこちなかった。しかしいまは、笑顔でも、悲しみでも、全てが自然だ。

 (心から笑い、心から楽しんでいる……)

なにが彼女を変えたのか?そんなことを考えていたとき。

「た、隊長! 大変です」

ドアが乱暴に開けられ、機械人形の兵士が飛び込んできた。

「どうしたの!」

せっかくの憩いの時間を壊されたのは不快だが、この兵士の慌てよう、ただごとではない。

「た、大変です! 砦に! プレアデスが!」

「なんですって!」

ヴェガが椅子をたおして立ち上がった。

「攻め込んできたの?」

「そ、そうなんです! 大きな! 大きなヤツが!」

兵士は必死で叫ぶが、ポラリスもヴェガも目を丸くする。

「あなた、いまなんていったの?」

「はい、大きな、とにかくデカイんです! まるでデカサが城で、召還獣がポキポキ倒されて、とにかく、すごく強いんです!」

説明されれば説明されるほど、意味が良くわからなくなったきた。

「と、とにかく来てください! こちらへ」

二人は言われるまま、彼について行くしかなかった。

兵士は二人を砦の屋上へと連れて行く。

「なに、あれ?」

そこで見てしまった。

雲の上まで頭を出す、巨大な灰色の熊の姿を。


いままで兵士が叫んでいたことの意味がようやくわかった。

(ほんとうに、城、いえ、山みたい)

あれほどの大きさを持つものが動くのははじめてみた。プロキオンの犬、シリウスですらあれほどの大きさはないだろう。

その巨大な、あまりに巨大な熊が暴れまわっている。歩くたびに大地がゆれ、腕を振るうたびに風が舞う。

人間部隊の面々が出した召還獣だろう。熊に猛然と立ち向かっているが、いかんせん大きさが違いすぎる。

人間に飛びつこうとする猫のようにい、どの召還獣も軽くいなされている。

あるものは炎を吐き、あるものは吹雪で攻撃するが、その灰色の毛並みにはまったくきいていないらしい。

「あれは、プレアデスの一人よね」

ポラリスの記憶によれば、あれはたしかミザールという名だった。だが、記憶が正しければ彼があんんあ巨大であったはずはない。

そんなポラリスの戸惑いにお構いなく、熊は次々と召還獣をなぎ倒す。そのたびに、赤や青の煙が天に向かって立ち込めた。

「巨獣化です……」

その光景を呆然とみていたヴェガが、おもむろにつぶやく。

「キョジュウカ?」

「レポートにも書きましたが……彼らプレアデスを巨大化させる研究はすでに行われていたらしいんです。でも、まさかこんな早い段階で……」

彼女はそののまま口を紡ぐ。しばし、沈黙がその場を支配した。

「……おそらく、侵入されます」

突然ヴェガが一言発し、そのまま踵をかえす。

「ヴェガ、どこへ?」

「すぐ戻ります」

ヴェガはそのまま下の階へ降りていった。


(すさまじい力だ)

ミザールはその恐るべき力に酔いしれていた。巨大な蟹、プレセーベ、最強の竜リバイアサン……選ばれた魔法使いしか召還できない超獣たちがまるで敵ではない。ほとんど触れるだけでその巨体を粉砕できた。

(これなら、魔王にも勝てる!)

彼の記憶に潜むあの夜の出来事。一瞬にして黒焦げにされた、屈辱的な敗戦。あの日から、毎晩夢にうなされつづけた。突然耳元であの不気味な曲が流れ、跳ね起きたこともある。

「ででこい!魔王!」

彼の気持ちは高揚し、思わず叫んでいた。そして、

「ウォオオオオオオオーン!」

それに答えるように、あたりに咆哮が響き渡った。

(なんだ、これは?)

獣のものに聞こえる。だが、少し違うことに気づいた。

あまりに硬質で、そしてあまりに無機質。生物の声にしては、あまりに異質だった。

「ウオオオオオオーン!」

そして二度目。ミザールは目をやり、そして見た。

巨大な、まるで山のように巨大な、白銀の猟犬の姿を。

 (あれは!)

 白銀魔獣シリウス。

 その名がミザールの頭の中にひらめいた。研究所で、なんどもその姿と名称叩き込まれたのだ。

 (三年前、北の三ツ星連峰を破壊した巨獣か)

 そのすさまじい破壊力を見て、魔王軍に入ったものも少なくないという。いわば、魔王軍の象徴だ。

 「相手にとって不足はない」

  ここでシリウスを倒せば、少なからず雪辱となる。

「こい!」

ミザールは身構える。

 白銀の魔獣は赤い目を光らせ、天に向かって三度吠えた。

(どうした?)

だが、向かってこない。天を仰いだまま、一歩も動こうとしないのだ。

(まさか、俺のあまりの強さにたじろいだのか?)

ミザールは、ふとそう思った。だが、それはあまりに高慢な思いつきでしかなかった。

「これは……」

猟犬が見上げる虚空から、それは降ってきた。暗くそして重い、あの不気味な曲が。

(ついにおでましか……)

曲とともに、黒い影がゆっくり下降してくる。巨大な要塞だ。

(空中要塞ベテルギウスだったな……)

シリウスとともに、魔王が誇る超兵器。

曲は、その要塞から流れ出ていた。

その先端に位置する砲塔。そこにたち、弦を奏でている人物がいる。

(ついに!)

ミザールは息を飲んだ。

白銀の魔王の姿を認めて。

  

  足音が近づいてくる。

 「ヴェガ?」

 その名を呼んだあと、なぜか心が弾んでいることに気づき、アンタレスは苦笑した。

 ヴェガはいまでは唯一の話し相手。

 最初は冷徹だった彼女も徐々に柔らかくなり、最近では笑顔も見せてくれるようになった。

 最初は、拷問に近い作業でプレアデスの秘密を聞き出そうとした彼女。

 しかし、最近は楽しい話のほうをすすんで聞きたがる。

 浮浪児時代の失敗談を大笑いして聞いてくれたヴェガ。研究所での辛い話に、涙を流してくれたヴェガ。自作の詩を、すてきだと言ってくれたヴェガ。

 彼女とは今朝あったばかり。なのに、まるで何年もあっていないかのように待ち遠しい。

 (こんな縛られたままの生活だからか)

 たしかに、彼女との会話が唯一の娯楽であり安らぎだ。

 (だが、それだけか?)

 ふと、考える。

 もし、彼女でなく別人であったら、こんなに待ち遠しい気持ちになったのだろうか、と。

 足音が止まり、重い扉が開かれる。

 金属が擦りあう硬質な音。

 嫌な音だがつながれたアンタレスは耳を塞ぐことができない。思わず顔をしかめる。

 そして、その音がやんだとき。そこには、待ち望んだヴェガとは違う人物がいた。

 「アンタレス、無事だったのね!」

 「レガルス?」

 金色の髪に、涙でうるむ青い瞳。間違いない。幼少期からともにすごした仲間の一人だ。

 「どうして、ここに?」

 喜びよりもなによりも、驚きとそして戸惑いのほうが強かった。

 「話は後。早く逃げるわよ」

 逃げる。

 「ここから、逃げるのか?」

 思わず口をついて出た言葉。

 「あたりまえでしょ?」

 レガルスは、彼を縛る鎖に手をかける。

 「いま、切るからね」

 彼女は鋭利な短剣をとりだし、鎖を切りつけ始めた。高く澄んだ音が狭い部屋にこだまする。

 だが、鎖は丈夫で傷すらつかない。レガルスは、それを見てさらに必死になって短剣を振るう。

 アンタレスは、その様子をただ眺めていた。

 (これが切れたらどうなるか……)

 もちろん、ここから逃げ出す。そうしたら、どうなるか。

 (もう、ヴェガに会えない)

 いや、会えないことはないだろう。きっと会える。だが、それはおそらく戦場で、そして敵として会うことになる。

 (切れないで欲しい……)

 何気なくそう思った、そのとき。

 「切れませんよ、その程度では」

 不意に、後から発される声。脱出目前であらわれる敵。

 本来なら絶望的なはずなのに、アンタレスは不思議と嬉しかった。

 そして、声の主が彼女であればなおさらだ。

 「誰!」

 「よく言えますね、侵入者が」

 部屋に入ってきたのは、紫色の長い髪の女性。

 「でもまあ、名乗っておきましょう。魔法人形部隊一等星、ヴェガです。あなたは?」

その問いに、レガルスは答えようとしない。

短剣を握り締め、相手の顔を睨みつけている。

 「そんな短剣でその鎖は切れませんよ」

 彼女が右腕をあげ、そして指をパチンッ、と鳴らす。

 思わず身構えるレガルス。

 そして、固い床に、何か硬い物がぶつかる音が響いた。

 鎖だ。

 アンタレスを拘束していた鎖が解けたのだ。

 「こうしないと、取れないようになっているんです」

 「……え……」

 敵が自ら拘束をといた。その状況を理解できず、呆気にとられるレガルス。

 そんな彼女を尻目に、ヴェガは背を向ける。

 「ヴェガ……」

 アンタレスは、上半身を起こし、そしてゆっくりと寝台から降りる。久しぶりに二本足で立った。少々ふらついたが、歩けないことはない。

 「下でお仲間が私の部下と戦っています」

 背中越しに聞く彼女の声は、なぜか震えていた。

 「早く行かないと、やられてしまいますよ」

 だが、二人は行かない。

 「どういうつもり?」

 レガルスは、戸惑いから行こうとしない。なぜ、敵である彼女が自分たちを逃がそうとするのか。その真意を測りかねているのだ。

 「行くのか行かないのかどちらかになさい。もし行かないなら」

 ヴェガは振り向かず、その言葉を口にする。

 「殺します」

 レガルスの肩が、小さく揺れるのが見えた。

 その冷たい口調が、彼女にとっては心が凍るくらいの衝撃だったのだろう。

 (最初のときより、随分柔らかくなった)

 だがアンタレスにとっては、なんの凄みもない。最初の冷たさとは比べ物にならない。

 アンタレスは、レガルスの肩に手を置く。

 「行こう」

 「……うん」

 二人は、ヴェガの脇を通り抜け部屋からでる。

 「スピカとドゥバンが下で敵を引きつけてるの。合流するわよ」

 レガルスの話を聞きながら、彼は振り向く。

 うつむいたヴェガの表情は、その長い髪に隠れて見えない。

 (さよなら、ヴェガ)

 また会いたい。戦場ではなく、別の場所で。彼はそう願い、そして前を向いた。


 エピソード7


(いったい、なにが?)

ポラリスには理解できなかった。

突然シリウスが、ついでベテルギウスがあらわれた。

(冬星、来てくれたのね)

あれらを動かせるのは彼だけ。ポラリスが安堵の息を漏らした次の瞬間。

二体の姿が消えた。そして、その代わりに

「あ、あれは……」

巨人。一点の曇りもない銀の体をもつ巨人が、いま大地に立っていた。


「合体した……」

常人の何倍も優れた目をもつミザールにも、その動きを完全にとらえることはできなかった。

空中のベテルギウスと地上のシリウスがそれぞれ上半身・下半身に変形。さらに魔王が頭部に変形。それぞれが、結合し、一体の巨人と化した。


数刻前

プロキオンは、巨大な熊と人間部隊の戦いを見物していた。

(巨大化か)

原理はわからないが、プレアデスの一人が山のように大きくなり、人間部隊を撃破しはじめた。

(おとりだな)

斥候からの連絡を受け急行したプロキオンは、すぐにそうと見破った。

 一人がおとりとなり、残りが捕虜の救出に向かう。

 (単純極まりない作戦だが、悪くはない)

 プロキオンは、あえて苦戦する人間部隊に手を貸さなかった。

 ひとつは、いまいましい人間部隊をここで半壊させるため。

 (最近連中は増長している)

 まだ壊滅させるには早いが、一度勢力を弱めておく必要がある。

 そしてもうひとつ。

 (ヴェガがどう行動するか)

 先日、彼女と会い、プロキオンは違和感を覚えた。彼女は基本的にプロキオンに忠誠を尽くすよう作られている。なのに、報告のとき彼女は魔王軍のやり方にたいして疑問を口にしたのだ。

 (精巧に作りすぎたか)

 余計な感情が芽生えてしまった可能性がある。捕虜の救出に来たプレアデスに対して、彼女はどういう行動を取るのか。

 (結果次第では)

 もうそろそろ、その答えが出るだろう。

 (それまで、少し遊んでいくか)

 すでに人間部隊は半数が戦死した。これ以上殺されるのはさすがにまずい。

 (ひさびさにやるか)

 血のないはずの体に、なぜか血が騒いだ。やはり、戦闘兵器としての本能か。

 彼は、胸のスイッチを押した。

 三体が空中にとび、それぞれを頂点に正三角形をつくる。

 (各機モード移行、戦争モード。変形開始)

 シリウスは下半身に、ベテルギウスは上半身に、それぞれその姿を変形させる。

 そして自身は、直方体の銀の箱に。

 もともと、メカが三機そろえばどうなるかは決まっている。

 (各機変形完了。結合開始)

 上半身に変形したベテルギスウが下半身に変形したシリウスと合体。

 自分は、頭部に結合する。

 (システム起動)

 結合部確認、異常なし。

 エンジン結合。異常なし。

 関節部異常なし。

 (出力十パーセントに固定)

 これくらいでよいだろう。

 (起動完了。各部異常なし)

 この間僅か0.5秒。

そして、銀色の巨人は大地におりたった。


魔王と戦える。たしかにそれを楽しみにしていた。

(まさか、魔王も巨大化できるとは)

ミザールの脳裏に、あの悪夢が蘇る。巨大な体から、人くらいの大きさをした汗の雫が流れ落ちる。

きらびやかな銀の体。両肩から伸びる鋭いとげ。腕や脚に彫られた幾何学的な文様。

それらすべてが合わさり、圧倒的な威圧感と存在感をかもし出していた。


 (この世界に来てからはじめてだな)

 いままで、この姿で戦うべき相手はいなかった。元の世界でもかなうものはないと称された最強の戦闘形態だ。

 (さて、どこまで楽しませてくれるかな)

 合体した自分とほぼ同じ大きさの熊を見て、否応なく期待は高まる。どこまで、自分の攻撃に耐えることができるか。

 巨人と巨獣は、向かい合ったまま動かない。

 (体長二八メートル、体重一五〇トン……)

 目を模したセンサーから入る情報を、次々とシステムが分析していく。

 (このまま睨み合いではつまらん)

 右のわき腹。そこにわざと隙を作る。

 獣の目が光る。

 (動いた)

 その巨体からは想像できないほどの速さでプロキオンの懐にもぐりこんだ。

 そして、その太い右腕が白銀のわき腹を直撃する。

 硬い物が砕ける音が、草原に響き渡る。

 (予想以上に速い)

 懐に入り込まれるとは想定外であった。

 だが、

 「く……!」

 苦痛に顔をゆがめ、膝をついたのはミザールのほうであった。

 彼の拳からは真っ赤な血が、それこそ滝のように流れ出ていた。

 その中に見える白い岩のようなものは、おそらく骨。ところどころが砕け、ひびが入っている。

 プロキオンの体はもともと超硬質な物質。それだけでなく、さらに電磁による一種のバリアまではっているのだ。

 並みの攻撃では、傷ひとつつかない。

 (だが、攻撃力、そして耐久力に関しては低レベル)

 相手のあまりの脆さにいささかがっかりした。

 「どうした? 痛いのか?」

 プロキオンはうずくまるミザールの首を右手でわしづかみにした。そして、無理やりたたせる。

 「う!」

 ミザールは抵抗したが、魔王の腕力の前にはまったくの無力。

 「どうした、おまえたちの力はその程度か?」

 ミザールは両腕で、破壊された右手も使って、なんとか首を締め付ける手を引き剥がそうとする。

 だが、もがけばもがくほど首に手は食い込み、彼の息も苦しくなっていく。

 魔王は、ミザールをつかむ腕を上げた。

巨大な獣は軽々と宙に浮かぶ。

「なにもしないのか? なら」

プロキオンは胸の装甲を開けた。そこにならぶ、無数の砲塔。

「こちらからやらせてもらう」

何十、何百という砲塔が、一斉に火を噴いた。


連続して響く金属質の破裂音。そして、悲鳴。

熊の体に、次々と赤い穴があく。その穴から、赤い雫が飛び散り、あたりは一瞬にして赤い霧に包まれた。

ポラリスは見た。

魔王の白銀の体が、徐々に赤く染まっていくのを。


射撃をとめた。

そして、グッタリしたミザールを勢いよく地にたたきつける。

大地が激しくゆれ、所々で地割れが起こった。

「グホ!」

 ミザールの口から、そして体中の無数の穴から、鮮血が噴出す。

 プロキオンは大地に叩きつけられ動けないミザールの横腹を乱暴に蹴飛ばす。一声うめいて、熊は大地を転がった。

(いい気分転換だった)

プロキオンは熊に背を向ける。

(もはや、立ち上がることはできん)

内臓の損傷、大量の出血。もはや、放っておいても死ぬだろう。

 「……いい気になるなよ……」

 だが、灰色の熊は起き上がる。

 なんどもよろめきながら、その巨体をなんとか再び大地に立たせる。

「ほお、かなりしぶといな」

正直言って驚いた。

 「あたりまえだ……」

 荒い息をし、血走る目で白銀の魔王を見据える。

 「おまえを倒すまでは、簡単にやられないぜ」

 プロキオンは、こういう光景をなんども見たことがある。瀕死の人間が、『まだ死ねない』言って立ち上がるのを。

 「なぜだ?」

 なぜ、そうまでして戦おうとするのか。

 その問いに、ミザールはゆっくりと答える。

 「俺は、あんたらにやられた町や村を散々見てきた……あんなこと平気でやる連中が、帝国や共和国よりいい世界をつくるだと? 笑わせるぜ……」

 ミザールは口元を流れる血を拭った。その視線には、一点の乱れもない。

「俺は、あんなことをするやつは許せない! 絶対に」


(なにを言っているの? 彼は?)

あの熊は、いま『町や村を』と確かに言った。

(攻撃したのは、軍事施設だけのはず)

ポラリスは、そういう報告を受けていた。魔王国は、無辜の民に一切手出ししていない、と。


「残念だな」

プロキオンは、表情のない顔でミザールを睨む。

 瀕死の状態から、立ち上がる人間。

 彼らを突き動かすのは、愛であり、希望であり、この男のように正義である。

 人間はそれを『熱き想い』とか『強き心』とか呼んでいる。

 なぜそんな形のないものにすがって立ち上がれるのか、プロキオンには理解できなかった。

 そんな時、人間は必ず言う。

 『この熱い想い、心のない機械にはわからん』と。

 機械を見下し、人間がさぞ貴く、特別な存在であることを強調する。

 (憎い)

 そんなとき、彼の胸にはこの感情が湧き上がる。

 そして目の前の男も、おなじ空気を醸しだしている。

 嫌らしいくらいまっすぐで、必要以上に澄んでいる目。

 利害を超えたやたらと熱い感情。

 すべてが許せない。

 「おまえに私をたおすことはできん」

 もともと生かしてやる気はないが、この技を使う気はなかった。

 だが、気が変わった。

 「なぜなら」

 プロキオンは、腰から一本の棒を取り出す。

 (巨大ロボの武器は剣ときまっているが)

だが、彼は正義のロボではないのだ。武器は、黒光りする金属の巨大な棒。

 その棒の根元を右手に持つ。すると、棒から光が発した。緑色の冷たい光が。

 「ここでおまえの命が尽きるからだ」

 棒の先端にエネルギー注入を進める。

 (出力一パーセント)

 そのくらいで十分だろう、この程度の相手なら。

 「なんだ! その光る棒は!」

 あざ笑うミザール。だが、その笑いは乾いていた。

 「ただ光るだけじゃないか! こけおどしだろ!」

 彼とて戦士。これがただの棒でないことくらいわかっているはずだ。

 『宇宙棍コスモメイス!』

 宇宙棍の光はさらにその強さを増す。小さな稲妻が所々で発生する。

 「死ね」

 本来、せめて五体満足に死なせてやるつもりだった。だが、もはやそんな慈悲は残っていない。相手に避ける暇など与えない。

 その巨体から想像もつかない驚異的な、文字通り目にも見えない速さで相手の脳天目がけて宇宙棍を叩き付ける。

 「宇宙棍惑星破壊撃プラネットクラッシュ!」

 その瞬間、ミザールはなにを考えたのか。

 仲間の顔か。

 遠い昔の楽しい思い出か。

 いや、おそらくなにも考えていなかっただろう。

 なにかを考える余裕などなかったはずだ。

 なにしろ、一瞬にして彼の巨体は無数の肉片へと砕け散っていたのだから。

 

 魔王の棍は、巨大プレアデスを一撃で粉砕した、

それだけで勢いは止まらず、大地に激突する。

 爆風が舞い上がり、巨大な穴を穿つ。

 (生体反応消滅)

 センサーが、対象の完全なる死を確認した。

 やがて、降り注ぐ赤い雨。雨は、大地の穴にたまり、真紅の湖となる。

 (終わった)

 さきほどまで体全体を支配したあの感情が、少しずつ治まっていくのを感じた。

 (結合解除)

 プロキオンは再び三機のメカに分離し、大地に降りたった。

 「ほお……」

 人間大になり改めて見ると、景色がいかに変わってしまったかがよくわかる。

 赤い湖。

 むき出しになった地表。

 谷といっても過言ではない、というよりそうとしか言えない大地のひび。

 そして、無数の肉片が、骨片が、散らばっている。

 (プレアデスの死体は、消えるわけではないのか)

 召還獣のようにはならないらしい。

 (だとしたら迷惑な話だな)

 何日かすれば、ここは腐臭で誰も近寄れない土地となるであろう。

「冬星……」

後ろから女性の声。

「ポラリスか」

彼をその名で呼ぶのは、世界でもただ一人。

「あなた……あんなことができたのね」

彼女の声は震えていた。

「ああ」

たしかに言っていなかった。そして、言う必要もなかったことだ。

「なにかあるのか?」

別に賞賛を言いにきたわけでも、合体のことを詳しく聞きたいわけでもないだろう。

「ええ……その……さっき、あの熊が言ってた……」

(やはり、そうきたか)

住民虐殺の話だろう。ポラリスには、情報がいかないようにしていたのだ。

「もちろん嘘だ」

質問される前に答える。質問されれば、正直に答えることしかできない。

「やつは、もう俺に勝てないとわかっていた。だから、軍内部の動揺をさそうため、あんな嘘をついたのだろう」

「そう」

安堵の息を漏らすのが聞こえた。

(予想通り)

あまりうまい嘘ではないがこれで十分だ。彼女も、あまり深く詮索したい話題でないはずだから。

(このまま知られなければいいが)

知られてしまえば、計画に差し支える。彼の壮大なる計画の。


次回をお楽しみに

おそらく最終回になるはずです

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