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俺の彼女は死刑囚  作者: 氷雨 ユータ
7th AID 夏の日の誘引

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124/221

無意味に帰する

「銃で殺せるなら、怪異専門以前に普通に警察で何とかならないか?」

「殺せない。多分複数に追い回されて面倒だから撃退してるだけ」

 走っている内に丁度いい岩場を見つけたのでそこで身を隠す。銃声は花火よろしく立て続けに鳴り響いていたが十発目を終えた瞬間にぱったりと止んでしまった

「こんな所に来るか?」

「銃なんて飛び道具だし、この暗闇なら自分に向かって撃たれてるって思う人も要る筈。正反対の位置に居たら遠ざかるけど、こっちに近かったら来ると思う」

 強引な理屈だが他人とのコミュニケーションを阻害されている上に辺り一帯は漆黒に包まれている。そこから聞こえる正体不明の銃声と湧いて出てくる『鬼』と人知れず消えていくクラスメイト。この状況で冷静な判断をしろというのが難しい話で、もしもはない。学校に立てこもったテロリストを倒す話じゃあるまいし。

「もし来たら確認」

「恐怖症にかかってるかどうかの判断だよな? でもどうやってすれば―――」


「しねえええええええええ!」

「ぎゃああああああああ!」

「やめてえええええええええッ―――」



 凪いだ海に轟く断末魔の叫び声。反射的に声で助け舟を出そうとしたが、雪奈に手を引っ張られる。

「駄目」

「でも、襲われてるんだぞッ。倒せなくても囮くらいにはなれるだろ」

「声の距離から逆算して百メートルとちょっと。十三秒くらいで走れる。走れないならやめて。サキサカだって怪我人なの忘れてるよね」

「…………」

 今の俺はやる気のある無能か。行動すれば良いという訳ではないのはこれで二度目。むしろ勝手な行動が裏目を出して最悪なケースに導いている。今は大人しく雪奈に従おう。

「……ごめん」

「……今ので感染者と接触したから、どっちみち手遅れ。あれは駄目」

 俺達が現在戦っている怪異はアザリアデバラ恐怖症と少女岬。

 アザリアデバラ恐怖症は『正体』を知った者から連鎖した空想。友達の友達の友達の~から聞いた話が無限に続いていると考えれば少しは分かりやすいだろう。感染者との接触(厳密には会話)で伝播し、最初は様々な日常への不信感に始まるが、やがて人間不信、何かが自分を殺そうとする恐怖、周りがグルという錯覚に見舞われ、やがて見境なく襲い掛かる狂人を生む。治療法は噂の中には存在せず、事前対策としては本物のお守りを持っていくか、同時遭遇はしないという不変の法則を利用して曰く付きの物体を持っていくか。綾子は目が合うと死ぬ人形を持っていった。

 ただしこの対策は恐怖症そのものに対する対策で、狂った人間に対してはまた別の防衛策を用意する必要がある。過去の俺達を怖がらせたのは主にそっちだ。


 縺弱縺弱縺九&繧峨°縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ>縺?>!


 ―――今の声に聞き覚えは無い。

 そもそも声なのだろうか。音……そう、音に近い。言語的意味合いの含まれない無意味な発音。声の重厚さに反して足音は一切聞こえないが、獰猛な呼吸音だけがそよ風に混じって確かに聞こえる。運の悪い事にその音は徐々にこちらへ近づいてくるではないか。

「…………」

「…………」

 雪奈にも聞こえている様だ。特にどうという合図もなく会話が消滅した。姿を確認したいという欲求は増すばかりだが、もしも音の主に視覚があったらそれだけでおしまいだ。


 菴募?縺ォ螻?k繧薙□蟋ソ繧定。ィ縺帙♀蜑阪◆縺。繧呈黒縺セ縺医↑縺代l


 策はある。が、もしもこの接近が偶然でないなら無意味になる。何故最悪のケースを想定する。今まで何を学んできた。少女岬は初見でも俺には経験がある。鳳介が居ないから、綾子が居ないからなんだ。雪奈が傍にいる。失敗すれば俺だけでなく彼女にも被害が行く。

 失敗するかもではなく、成功させる。

 俺は近くに転がっていた石ころを優しくつまむと、海のある方向に投げた。最小限の音、視界があった時を考慮して限りなく平行に。一切の音が死に絶えた世界において小石が水面を叩く音は大きすぎた。音の主の声が段々と海の方へ遠ざかっていく。水面も動けるという事は浮いているのだろうか。

「……ここ、離れた方が良くないか」

 雪奈がこくりと頷く。いつまたあの正体不明の何かがこっちに来ないとも限らない。俺も極力音を殺して身体を起こすと、誰かが岩場を飛び越えて入ってきた。暗闇の中では全く顔が判別できないが、懐中電灯を当ててやるとどうやらそれは三人組で、全員の顔に心当たりがあった。

「お前等…………」

 マリア、そして皇木まほ。

 相対的に親しい二人が仲良く手を繋いで逃げていた。

「あ、俺とは会話して大丈夫だ。えっと……何でお前等が丁度良く固まってるんだ。偶然か?」

「偶然だよ。私、これが多分ちょっと……マズイものかなッテ思って、逃げてたらまほちゃんが」

「私もだよ。出る筈ないって思ってたのに変なのが出てきて……もーほんっとうに怖かったんだから!」

「そうか……じゃあ一つ聞くぞ。今の被害状況はどうなってる? 携帯持って来てないから既読確認出来ん」

「携帯は意味ないよ? 殆どみんな、携帯放り出しちゃっタかラ」

「あ?」

 既読が減ったのは…………何故? いや、殆どという言葉からして少数は携帯を持っているから。自発的に閉じた? まあ開きっぱなしにする意味は無いか。こういう場合の携帯は殆ど怪奇現象起こすだけの危ないアイテムだし。

「私が知ってる限り、殆ど生き残ってないと思う。みんな変な怪物に食われて……生きてても、皆おかしくなっちゃって。ここに来るまでゆー君とかさあちゃんとかいろんな人に襲われて。結局マリアちゃんとしかまともな人いなかったし!」

「因みに今の時刻を聞いて良いか?」

「十二時半」

 俺があの部屋を出た時は十時半くらいだったか。二時間。俺は安く見積もっても一時間半あの場で気絶していたらしい。猶更襲われなかった理由が見当もつかないが、


 まあいい。そろそろ終わらせよう。





   



















「少女岬、見ーつけた」

もう一話出して終わりかも。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] あえて言及してない3人目が怪異? 読み返して思ったけどマリアと輝則って不参加組だったよね? それにまほは部屋に立てこもってるはずじゃ? [一言] 館内放送や屋外スピーカーで見ーつけたっ…
[気になる点] ん?3人……? [一言] 一瞬見間違いかと思って前の話読んだけど、合ってたぜい。ふっふふふ、遂に決着ですな……!
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