この世界を旅しよう
愛瑠たちは旅に出るために村を離れる旨を村人に伝えてまわった。数ヶ月しか過ごしていないのにマオだけでなく愛瑠もまた出ていくことを惜しまれ随分と時間が掛かったがようやく最後の一人が終わった。愛瑠たちはクタクタになりながら家にもどり、今後について話し合った。
「別れの挨拶は済んだけど明日から出るんだよね?」
旅に出るために片付けてほとんど何もない部屋を見る。
「うん。明日から一週間ほどかけて桃地の町に向かうことになるよ。何かやり残したことはある?」
マオの質問に愛瑠は以前お婆さんから聞いたことを尋ねる。
「マオの両親も冒険者だったの?」
「……うん。父親のほうは知らないけどお母さんは冒険者をして生活費を稼いでたらしい。だけどぼくが5つの時に依頼の最中に魔物に襲われて亡くなったらしい。遺体は帰って来なくて髪の毛の束を一房渡されてね。それを埋葬したんだ」
「……そう」
愛瑠は何も言えなかった。部屋が静かになるとポツリとマオが話し始める。
「愛瑠には感謝してるんだ。どちらにしろ冒険者になろうとは思ってたけど踏ん切りがつかなくてね。愛瑠のおかげで決心が着いたよ」
ありがとう、とマオが言ってくる。それを愛瑠は黙って受け入れた。
次の日二人は村の入り口に立っていた。そこには二人以外にルーナの姿があった。
「二人とも楽しんでおいで」
「うん! 世界をめぐってくるよ!」
「そうか、ならそのうちわしとも会うことになろうな」
「師匠もどこかに行くんですか?」
ルーナの発言に愛瑠が反応する。
「うむ、少しやることが出来てな。しばらく弥生の村を留守にすることになった。行き先は言えんがお主らと会うかも知れないというだけじゃ」
「そっか、村長は村長じゃなくなっちゃうんだね……」
「いや、別にしばらくいないだけで村長でなくなる訳ではー
「じゃぁこれからはルーナおばあちゃんって呼ぼう」
「ル、ルーナおばあちゃん!? 待て!? わしは確かにそれなりの年月を生きているが種族的にはまだまだ現役だしそもそもまだ村長のまま__
「また会おうね、おばあちゃん!」
「もう定着しとる!?」
マオにおばあちゃんと呼ばれるルーナ(外見年齢20半ば)が涙目になっている。
「おb……師匠。一緒には来ないんですか?」
おばあちゃん呼びしようとしてルーナに睨まれた愛瑠は尋ねる。
「場所が違うからの。北部に行くつもりだかりの」
「そっか、残念だな。元気でね、村長」
「お主らもな。また会おう」
そう言ってルーナは愛瑠たちを入り口で見送り、愛瑠たちは旅立ったのだった。
二人で歩きながら愛瑠がマオに語りかける。
「楽しみだね」
「うん」
「どんなことが待ち受けているのかな」
「わからない。けどとても良いものな気がする」
マオの根拠のない考えに何故か愛瑠も同じことを思う。
「良いものにしよう」
「うん!」
「私とマオならきっと良い旅になるはずだもの!!」
二人の旅は始まったばかりである。