ここには修羅しかいないかもしれない……
裏庭着いた愛瑠とルーナは早速修行を開始しようとした。
「それでは始めるとしようかの」
「はい! ところでどのような修行をするのですか?」
裏庭にくるまでにルーナに戦闘経験や武術の心得があるか尋ねてこられたが、現代もやしっこの愛瑠にはそのような経験は一切ない。その事を聞いたルーナはただ「そうか」と呟くだけだった。そのため愛瑠はどのような修行をするのか一切聞いていなかったのである。
「うむ、言ってなかったな。お主にはわしと斬りあってもらう」
「はい?」
刀を構えるルーナに疑問の声をあげる。愛瑠としては某小説のような地味な修行をひたすらやらされたりまたは某龍の玉の世界のような修行を想像していた。愛瑠でも実戦による修行は癖がついてしまい非効率ではないかと考える。それを読んでいたのかルーナは疑問に答えを返す。
「……先にも言ったがお主には才能がない。普通に教えていたのでは何年いや何十年もかかろう。最低限戦えるようにするためなのだから実戦による修行が良いだろう。……刀の振り方を学んでも実戦経験皆無では冒険では無意味だからの」
さりげなくディスられたことにショックを受けながらも確かにと愛瑠は納得する部分もあった。自分に戦闘の才能はないため形だけなってれば十分だと判断するのは戦士としては問題だが旅人としては自衛が出来る以上、及第点であると考えられる。
ある程度納得できたのがわかったのかルーナは再び刀を構えて言う。
「刀を抜け。修行だからと言って本気で殺らねば容易く死ぬぞ」
なんか修行にしては不穏な発言が聞こえた気がしたが愛瑠もまた刀を抜いてルーナに相対する。
「ではいくぞ」
__愛瑠は空を見上げていた。
何が起きた。
気がつけば地面に仰向けに倒れ、手から刀が無くなっている。
「ほれ、いつまでそうしてるつもりだ。とっとと立ち上がれ」
ルーナが倒れ伏す愛瑠に促す。
愛瑠は立ち上がりルーナから刀を受け取る。刀を渡すときルーナは愛瑠に告げる。
「見ての通りお主から刀を取り上げ吹き飛ばしただけだ。これくらい対処できんと瞬で死ぬぞ」
この世界は修羅しかいないのだろうか?
よくよく考えるとマオもグリフォンを吹き飛ばせるだけの力を持っていた。この世界ヤバイんじゃないかと内心焦り出す。そしてルーナは愛瑠に絶望を告げる。
「今日からこれに対処できるようになるまで続けるぞ。何、怪我はしないように手加減してるから安心せい」
その日は暗くなるまで何度も仰向けになった。
「……本当に倒れた時の衝撃くらいしか怪我といえる怪我がないってどうなんだろ」
愛瑠は空が暗くなり今日はここまでとルーナに止められマオの家に戻ることになった。
ここは修羅の世界だ、と呟きつつマオの家への帰路につく。
マオの家が見えてきたと思っていたら愛瑠の歩いていた側の家から茶髪の優しそうなお婆さんが出てきた。愛瑠がお婆さんに挨拶すると向こうもこちらに気づいたらしく挨拶をかえし、そのままマオの家に行こうとするとお婆さんが愛瑠を呼び止めた。
「あら、お嬢ちゃん。もしかしてマオちゃんの所に来た子かしら?」
「はい、そうです。お世話になっております。愛瑠と申します」
「あらやっぱり! マオちゃんは元気かしら?」
お婆さんにマオは元気にしてますと告げるとお婆さんは嬉しそうにしながら愛瑠に伝える。
「それは良かったわ。マオちゃんは幼い頃に両親を失くして一人で住んでたから心配だったのよ」
「え?」
愛瑠の驚きに気づかずに話を続ける。
「マオちゃんに大丈夫?って聞いてもいつも笑顔で大丈夫だと返してくれるんだけど本当にそうなのかなって不安だったのよ。今日マオちゃんが久しぶりにうちに来て冒険者になるって言ったときは驚いてしまったわ」
「はぁ」
ルーナとのやり取りの乗り越え安堵してしまっていたのか思わず出てしまった声にしまったと思ったがどうやらお婆さんは気づかなかったようでそのまま話続ける。
「貴女には感謝してるのよ。マオちゃんのご両親も冒険者をやっていたそうなんだけど依頼の最中に魔物に襲われてお失くなりなられたそうで両親の後を継いで冒険者になるって!って言ってたのにそれも聞かなくなってたのよ」
「え?」
聞かされていない話に愛瑠が呆然とする中、お婆さんはそんな愛瑠に感謝を述べる。
「貴女が来てくれてマオちゃんも本当の意味で元気になったの。本当にありがとう。マオちゃんと一緒に冒険者になるでしょう? どうかこれからもマオちゃんと一緒にいてあげてちょうだい」
「えぇ、もちろんです」
その言葉に考えもせずに口から勝手に言葉がでた。
それじゃあね、と言ってお婆さんがいなくなるのをみて愛瑠も帰路についた。家に戻るとマオが待っていた。
「愛瑠おかえり! 村長との修行は何をしたの?」
「ルーナさんは外部に見せたくないって言ってなかった?」
マオに苦笑いを浮かべながら言うとマオは大丈夫と言うかのように言い返す。
「見るな、とは言ってたけど後から教えるなとは言ってなかったもん!」
だから教えて、と言ってくるマオにさらに笑みを強めながらルーナとの修行について話し始めた。
愛瑠「お婆さんも修羅かも知れない…」
お婆さん「戦闘力…たったの5か…ゴミめ…」
こんなことはないはずです(多分)