第零話 トランス
初の小説。まだまだ至らぬ点も有りますが、どうか最後までお付き合いいただけると有り難いです。
「ここで最後なら―――月の綺麗な夜が良かったな...。」
胸を締め付けるような、鋭利な物で刺されたような痛みで意識が薄れる中。
一人、ベランダで朧月に文句を言う。
刺すような痛みは止むこともなく、指先が痺れてしまった。
持っていたカップがゆっくり落下。
水の中の月が形を変えてしまうと共に意識は無くなっていた。
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昔から胸に痛みを覚えている。
いつからだろう?
思い出そうとすると何かが拒んで来る。
身体の中にまた別な人格が俺の首を締め付けるような―――
「寝てんのか〜?」
ハッとして顔を上げると茶屋が額に指を弾こうとしてきた。
俺はその指を片手でサッと防いだ。
「流石にこの手はもう駄目か〜ハハッ。」
乾いた笑い。
いつもより無機質な感じがした。
でも、どこか安心感がある。
こいつは茶屋 浩一。
昔からの友人で、よく俺の周りの世話をしてくれている。
もとから世話好きなところもあるのか、家にいつも泊まって掃除して深夜に帰る。
それもほぼ毎日。
そもそも俺の家が広いこともあり、使っていない部屋などが多くあった。
掃除なんてほとんどしない。
だって、部屋多すぎるんだもん。
使わないならいいでしょ?
で、ノリで家に誘ったら、埃だらけの部屋を発見され、その時から通い続けている。
「もう放課後だぜ〜?さって、今日は夕飯何作ろっかな〜。」
「今日は俺の嫌いな豌豆々抜いてくれよ。」
「何を子供みたいなこと言ってんだ!しっかり入れてやるよ!」
「うっ。」
悟った。流石に無理か。
てか、何で友人でしかないこんなのが親みたいなこと言ってんだ。
いや、もう俺にとっては「親」みたいなもんだが。
もともと俺には親がいない。
親がいた記憶ですらない。
顔も知らない。
代わりに周りには執事がいた。
いつもそばにいた。
学校でも。
外出先でも。
家でも。
トイレでも。
嫌だった正直。
でも、言えなかった。
一人じゃ生きてけないから。
でも、そんな生活は11歳の誕生日で終わった。
誰もいなくなって、代わりに一切れのケーキと置き手紙を一つ。
「契約期間が過ぎましたので、退去させて頂きます。」
意味は分からなかったが、家が寂しくなった。
話掛ける相手もいなければ、世話をしてくれる相手もいない。
そんな中で出会ったのが「茶屋」だった。
だから、言葉では貶しているつもりだが、心の中では感謝している......つもりだ。
毎日少しずつ更新。暇時間縫って書きますので、文章にまとまりが無くなるかも知れないですがどうk((略