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88.領地を視察する

この回も延々と地名が出てきます。

現在筑前地方にお住いの方、縁のある方がおられましたら、その神社の由来はおかしいとか、フリガナが変などのご指摘お願いします。

翌日から本格的な視察に入る。

といっても、午前中は里に帰って里の日常を送ってからになるから、午後から合流することになる。


案内者は現佐伯家当主の佐伯太郎。

近々名乗りを変えるとのことだが、まずは領内の有力者に当主交代の挨拶回りを行うという(てい)だ。


宗像から反時計回りに海沿いに進むと、神湊こうのみなと勝浦かつうら梅津うめづ津屋崎つやざきといった漁村がある。これらの漁村の住民達は有事の際には水軍としても働く。


この辺りではまだ塩田による塩の生産は行われていない。

博多の西には塩原と呼ばれる塩田があるらしいので、この辺りでも塩田開発は可能のはずだ。


ちょうど対馬見山つしまみやまを超えた反対側、津屋崎の内陸部に宮地みやじという集落があり、宮地嶽みやじだけ神社がある。

神功皇后じんぐうこうごう三韓征伐さんかんせいばつの際に、戦勝祈願をしたとされる地だ。


更に海沿いに進むと、西郷川さいごうがわ沿いに福間ふくまという集落があり、西郷川を遡ると、下西郷しもさいごう上西郷かみさいごう内殿うちどのといった農村がある。


内殿の集落より更に内陸部の山間やまあいには、舎利山勝宝寺しゃりさんかつほうじを中心とした舎利蔵しゃりくらという集落がある。釈迦しゃかの遺骨である仏舎利ぶっしゃりを安置したと伝えられる寺だ。


福間から更に海沿いに進むと、神宮(元の世界での新宮しんぐう)を経て、志賀島しかのしまの付け根である和白わじろ奈多なたといった漁村に出る。

志賀島は全国的にも珍しい陸繋島りくけいとうだ。砂州によって沖合の島と陸地とが地続きになっている。


島には集落が3つある。志賀しかひろ勝馬かつまだ。

元の世界でも蒙古襲来時には反攻作戦の主戦場となった場所だ。この世界でも蒙古襲来が不可避なのならば、早いうちに軍事拠点化が必要だろう。


領地の海沿いの終点は、多々良川沿いに拡がる香椎かしいだ。

仲哀ちゅうあい天皇・神功じんぐう皇后をまつ香椎廟かしいびょうがある。

仲哀天皇はこの地で崩御され、神功皇后が香椎の内陸部にある遠見岳とおみだけ山頂付近に斎場を建て、天照皇大神宮てんしょうこうたいじんぐうとして天照大神あまてあすおおみかみを祀ったと言い伝えられている。

また、この辺り一帯は首羅山しゅらさんとも呼ばれ、山伏の修行の場であるぼうがおよそ350ほどもあるらしい。


この香椎から犬鳴山いぬなきやまを越える犬鳴峠を抜けると鞍手郡くらてぐん八木山やきやまを越える八木山峠を抜けると、穂波郡ほなみぐんに至る。

鞍手郡・穂波郡とも豊かな農村地域だが、まだまだ開拓の余地はある。

農地改良による二期作の導入や、水路の整備による灌漑かんがい、農機具の改良、河川の改修による水害防止などにより、収量は飛躍的に増加できるはずだ。


こうして、およそ一か月掛けて領地の視察は終わった。

どの地域の有力者も、概ね歓迎してくれた。ただ各集落の村長達は半信半疑といったところだ。

それも当然だろう。見ず知らずの若者が突然現れて、農業指導を行うなどと言っているのだ。俺だったら絶対に信用しない。

まずは里と周囲の集落の収量を上げ、実績を一つずつ積み重ねていくしかない。


それと並行して軍備強化も必要だが、難題も多い。


元の世界と同じ歴史を辿たどるのであれば、元軍の侵攻ルートは対馬つしま壱岐いき平戸ひらど、そして博多。

侵攻ルート上にある対馬や壱岐、そして平戸はそもそも少弐家の支配地域ではないため、俺達の出る幕はない。せいぜい俺や式神達による妨害ぐらいが関の山だ。

また、少弐家の支配地域である筑前国ちくぜんのくにに限っても、例えば元の世界で築かれた立派な防塁ぼうるいを予め築いておこうにも、その資金も人手も足りない。

現時点で出来ることと言えば、博多に上陸する敵を迎え撃つための兵器の開発と生産ぐらいだろう。


いずれにせよ、獲得した地位と権利に対する責務を果たさなければならない。

まずは近隣集落の農業指導と兵器開発にいそしむことにしよう。






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