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58.炭窯とコークスを作る

翌日は子供達の勉強を青と黒に任せ、紅と二人で狩り兼炭窯作りに向かう。

場所は以前に椿が案内してくれた、南側の山中。岩盤が剥き出しになっている場所だ。


高さ3mほどの部分に、直径1m×奥行き3mの洞穴を作る。入口から少し入ったところから上に大きくアーチを作り、天井までの高さを2mほどにする。床は奥側が高くなるようにして、最も奥には崖上に向けて煙道えんどうを掘る。さすがに人力ではやってられないので、土の精霊を使う。だから子供達にあまり見せたくはなかった。

出来上がった炭窯は火入れが必要だ。

岩盤が熱によって割れたり崩れたりしないかを確認するためだから、入口は塞がず、内部で焚火を行う。


コークス用の窯はもっと小さく作る。作る量が少ないし、なにより試験用だ。

基本的な構造は炭窯と同じだ。ただ、内部に人が入ることを考えないから、岩盤の腰ぐらいの高さに直径60㎝ほどの穴をあけ、奥行きを1mほど掘るだけで済む。

こちらの窯も火入れのために内部で焚火を行う。


焚火をしている間に狩りをする。

予定では今週中に子供達の元の集落に差し入れをする予定だ。いつもより多く狩らなければいけない。


さほど時間的な余裕もないので、3Dスキャンと窓からの狙撃を組み合わせ、2頭のイノシシと1頭の鹿を狩る。

最近子供達はイノシシ肉よりソーセージのほうがお気に入りなのが少々心配だ。

まあ普段は食べない軟骨やレバーも混ぜて作っているから、栄養価的には良化しているはずだが。


獲った獲物を川まで運び、血抜きと内臓の処理をしてから収納する。

そろそろ中天に差し掛かる。焚火も頃合いだろう。


窯の前に戻り、焚火が燃え尽きていることを確認する。崖の上にも上ったが、特に亀裂等は見当たらない。

白の精霊で十分に内部を換気し、炭窯の内部を調べながら、残った燃え殻を取り出す。

特に崩落等はなさそうだ。


紅と二人で昼食を摂り、午後は炭焼きの準備を始める。

あらかじめ切って乾燥させておいたクヌギとカシの丸太を収納から取り出し、窯の内部に立てていく。

太い丸太は4つ割りにしてある。ついでに竹も並べる。

藁束を使って手前の竹に点火し、入口を煉瓦と粘土で塞ぐ。空気の流入を絶って蒸し焼きにすることで、木材内部の水分や揮発分を飛ばし、ほぼ純粋な炭素分のみを残す。

同じようにコークス用の窯にも石炭を並べ、藁を使って点火して入口を煉瓦と粘土で塞ぐ。

石炭内部の揮発分は主に硫黄や水素分だ。臭気の原因になるだけでなく、人体にも悪影響がある。


煙道から白い煙が上がり始めた。本当はコークス窯から出る煙は少なくとも水を潜らせるなどして除害したいが、今回は試験運用だ。白の精霊で風を送り、上空に運んでまき散らすだけで勘弁してもらう。


煙道から出る煙や臭気がなくなるまで、およそ3~4日程度はかかる。それまでは特にやることもないので、一日一回様子を見に来るようにする。


点火から3日後、煙道から上る煙も消え、煙道内部も冷えている。

炭焼き経験者の椿と一緒に慎重に入口の煉瓦を外し、内部を確認する。

万が一煙道側が塞がっているだけだったりしたら、ここで一気にバックドラフトが起きる。

どうやら大丈夫そうだ。


白の精霊で換気用の風を送り、窯の内部を十分冷却する。

出来上がった炭を一本ずつ取り出していく。窯に入るのは俺と椿、入口まで運ぶのは黒と小夜、入口で杉と松が受け取り、紅・楓・棗の三人で俵状に縛っていく。さすがに炭焼きを生業にしていた集落の子供達だ。皆慣れた手つきで作業をこなしていく。

一回の炭焼きでおよそ250Kg、25俵の木炭が得られた。


コークスも仕上がっている。もともと黒光りしていた石炭から光沢が消え、古いアスファルトのような外観になった。こちらも回収する。あとは実際に点火して、鉄が赤熱するほど温度が上がれば完成だ。


そんな感じで第一回目の炭焼きは無事に完了した。

子供達も俺達も、皆真っ黒だ。さっさと里に帰って風呂にしよう。

明日は子供達の元の集落へ差し入れに行かなくてはいけない。

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