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4.現世での初めての狩り

とりあえず煙が見えたほうへ行ってみよう。

川の下流の方角だった。飛んでいくのも味気ないので、川に沿って下ることにする。


熊や狼はいなさそうだが、何が起きるかわからないので、手頃な武器は欲しいところだ。

流石に猟銃はオーバースペックすぎるだろう。飛び道具としては弓矢がいいだろうか。幸い弓道はじいさんに手ほどき程度は受けていたけど、長弓は緑が多いこの場所では取り回しが大変そうだ。短弓に適した材料があればいいが。


川沿いに歩いていると、ヤナギの木を見つけた。弥生時代の遺跡からは、ヤナギの弓が出土したと言うし、きっと良い材料なのだろう。

2m程度の木を選んで切り倒す。風の精霊を使うと、呆気なく切り倒すことができた。

樹皮はなるべく長く剥ぎ取り、数ミリの紐状にしてから三つ編みして弦にする。弓は握りやすい太さで削り出した。矢は近くに生えていた竹を割って作る。

竹を長さ30cm程度に切りそろえ、先端を尖らせ、火の精霊で焦がしていく。1時間ぐらいで弓矢が揃った。もちろん精霊の力があってのことだ。


10mぐらい離れた木に向かって試射してみる。鏃も矢羽もないから、軌道が安定しない。少しだけ風の精霊の力を借りると、軌道が安定し、木に突き刺さるようになった。大型の獣には力不足かもしれないが、実用性は十分だろう。

ついでに竹筒と樹皮の紐で矢筒を作り背負う。なかなか悪くない。

近接用の剣鉈と、遠距離用の弓矢で、ある程度の打撃力は得たと思うことにしよう。


こうなると狩をしたくなるのは性のようなものだろう。弓矢で狩るとなると、ウサギかキジかカモか…流石にシカやイノシシは難しいだろう。

しばらく歩いていると、獣道にウサギの糞を見つけた。よく見るとイノシシのヌタ場やタヌキの溜糞はある。獲物には困らなそうだ。


ウサギの糞はそんなに乾燥していない。1つ手に取ってみる。このウサギはどこにいるのだろう…


すると1mほど前方に黒い精霊が集まり、一辺が30cmほどの窓のようなものを作った。窓の中に茶色のノウサギが草を食べている姿が見える。ついでに方角と距離がなんとなく頭にうかぶ。ここから200mほど離れた場所のようだ。


遠見の術?黒い精霊は空間を操ることができるのか。


昨夜いろいろ試した時には、黒い精霊にこんな反応はなかった。形代に仕込む髪の毛のように、何か媒体を必要とするのだろう。


しかし目の前にノウサギがいるようだ。ダメ元で矢を放ってみる。

矢筒から矢を抜き、弓につがえ引き絞る。目測距離は5mほど。放った矢は風の精霊の助けも借りて、まっすぐウサギを仕留めた。物理的に空間が繋がっているようだ。


試しに窓を広げて、俺が通れるぐらいの大きさにする。恐る恐る右手を入れてみるが、特に違和感はない。生身はギロチンのように切断されるとかはないようだ。


1つ深呼吸して、思い切って窓をくぐってみる。

普通に通り抜けられた。これ、媒体さえあればめちゃくちゃ便利なんじゃないか?


回収したノウサギを解体し、朝食にすることにする。

皮はウサギ革にできるかもしれない。夜にでも鞣してみよう。

骨と内臓は土の精霊で穴を掘って埋めた。

余った肉は大きな笹の葉で包み、アケビの蔓で縛ってリュックサックに入れる。台所のラップやビニール袋を使えばいいのだろうが、なんだか雰囲気に合わない。


雰囲気に合わないといえば、今の服装だろう。

ミリタリージャケットにカーゴパンツ、ジャングルブーツでは、誰か人に会った時に危険人物認定されかねない。時代はわからないが日本のようだし。作務衣に草履なら浮かないだろうか。


リュックサックから自宅のタンスにあった紺色作務衣と草履を取り出し、着替える、下着はそのままでいいだろう。頭には白い手ぬぐいを巻く。

着替える時に気づいたのだが、身体が引き締まってる。年相応の中年体型になりつつあったのが、大学生当時ぐらいの引き締まった体型に戻っている。

どうりでベルトが緩かったわけだ。そういえば身体が軽い。地味に嬉しい。

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