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3.術を使ってみる

そんな感じで、結局一晩いろいろ試してしまった。

赤い精霊?をイメージすると、ライターサイズから大きな火球まで、さまざまな炎を生み出せた。

黄色の精霊は石の礫を飛ばしたり、土を操ることができた。試しにインゴットをイメージすると、金色に光る非常に重い塊を作れた。見なかったことにしてリュックサックに収納した。

白い精霊を飛ばすと、テントの天幕がスパッと切れた。背中に集めると身体が浮き上がるような気がした。明るくなったら試してみよう。

緑の精霊は癒し系だろうか。身体を包んでみると、眠気が吹き飛んだ気がした。

光の精霊と黒い精霊は、まだうまく集まってくれない。きっと修行が足りないのだろう。


ちなみに、危険な獣の気配は特に感じなかった。熊や狼はいないのかもしれない。


完全に日も登ったようなので、テントから抜け出す。

小川の冷たい水で顔を洗い、テントを収納する。

いろいろ試してみたいことはあるが、とりあえず腹ごしらえ。


指先から水を作り、リュックサックから取り出した飯盒にゆっくり注ぐ。何度も溢れさせながら水流を調節する。水道の蛇口をひねるイメージだ。


なんとかコントロールできるようになったので、リュックサックから米を取り出し、飯盒の中で軽くとぎ、炊飯の準備をする。

手頃な石でかまどを作り、薪をくべる。

指先にライター程度の火をともし、薪に火を付ける。

普通に使えるじゃないか。


飯盒炊爨は慣れたものだ。こちらの世界での初の食事は、いつも以上に美味しかった。アウトドア補正だろうか。


食事も終えたので、飯盒を小川で洗い、リュックサックに収納する。今日は小川を上流側へ歩いてみる。山に登れば何か見えるかもしれない。


歩きながら周辺の植生を観察する。特に見慣れない植物はなさそうだ。強いて言えば、里芋のような葉っぱの植物が生えている。鹿児島あたりで自生しているクワズイモだろうか。だとすると、思ったより南のほうなのかもしれない。


ふと思いついて、足の裏に白い精霊を集めてみた。思った通り身体が浮き上がる。調子に乗って強くイメージすると、後ろにひっくり返った。

次は慎重にイメージする。とにかく垂直に身体を浮かせるイメージ…浮いた…そのままスルスルと垂直に浮き上がっていく。気づくと、周りの木よりも上まで浮き上がっていた。30mほどだろうか。

周辺に人の気配はない。少し前方に、昨日確認した川が見える。後方にはじいさんの裏山。だとすると右手には平野が、左手と前方の先には小高い山が見えるはずだ。

さらに上昇すると、その通りの風景が見えた。

だとすると、南のほうだと思ったのは間違いで、単純に暖かい気候だということか。冬でも雪が降らないのなら助かる。


そのままゆっくりと水平移動してみる。垂直に上昇する。水平移動する。下降する。垂直に下降する…うん、これは飛行していると言ってもいいよね。


遠くまで見通せるたので山頂まで登る理由は無くなったが、そういえば祠が山頂にあったことを思い出した。どうせならこのまま飛んで行ってみよう。


歩くと1時間程度のハイキングだったはずだが、山頂まではまさにひとっ飛びだった。山頂には祠が…なかった。そのかわり大きなクスノキが生えていた。

別にしめ縄が巻いてあるわけではなかったが、何となく神々しさを感じて、自然と木の前で膝をつく。

「どんな世界かわかりませんが、せっかく戴いた命です。精一杯生きてみます」

心なしか梢のざわつきが大きくなった気がした。


少し清々しい気分になって、立ち上がり大きく伸びをした。ふと振り返ると、遠くの平地に煙が立ち上っているのが見えた。炊事の煙だろうか。

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