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26.今度こそ博多に向かう

予想外の事態で足止めを喰った俺達は、乙金の集落で一泊してから博多に向かうことにした。明日以降行われるであろう荘園主への報告に同席するわけにもいかず、かと言ってツテもない博多の街に夜間に到着する訳にもいかない。

村長との口裏合わせには青と紅の年長組が同席してくれた。小夜と白黒の年少組は、村人達による金隈の連中への治療に付き添っている。特に小夜と黒は興味津々らしい。

その夜は何事もなく過ぎていった。


明くる朝俺たちは乙金の集落を後にし、本来の太宰府街道に戻った。一路博多を目指す。

博多まではおよそ2時間ほどらしい。ちなみに、時間と長さ、重さの概念については青達にも説明し共有している。


博多の街が近づくにつれ、街道を行き交う人々が増えてくる。中には牛車に乗った貴族と思われる者もいるが、別に大名行列のように平民が土下座して通過を待つような習慣はないらしい。青が言うには『車列の邪魔をしなければよい』とのことだった。


道すがら、バードビューで博多の街の光景を投影しながら予習する。乙金の集落に駆けつけた時と同じように、黒の力を使わせてもらった。

記憶に残る元の世界の福岡の地図と重ね合わせると、この世界の博多は次のようになっているらしい。


まず、今進んでいる太宰府街道は、元の世界の県道112号線(俺の世代では旧国道3号線)に該当するようだ。御笠川の東を進み、堅粕(カタカス)辺りで大きく西に向かう。御笠川を越えると、右手に寺が2軒立ち並ぶ。東長寺と聖福寺だろう。更に街道を進むと、神社に行き当たる。位置的には櫛田(クシダ)神社。

櫛田神社と聖福寺の間、元の世界では冷泉町のあたりが碁盤目状の街並みになっている。

櫛田神社から西はもう湾だ。そして櫛田神社の北側、元の世界の中洲川端(ナカスカワバタ)駅より北あたりに、綺麗に区画割された台形の島がある。恐らく人工島だろう。


櫛田神社の西の湾には、盲腸のような形をした半島が突き出している。盲腸の先端は人工島の先端付近まで伸びており、狭い海峡で隔てられている。

半島には集落が幾つかあるようだ。半島の西側にはまた湾があり、その向こう側には小高い丘を持つ地形が続く。恐らく西公園あたりだろう。

櫛田神社の南、内陸側には、河口部の川を一本挟んで大きな神社のようなものが見える。住吉(スミヨシ)神社だろうか。


どことなく見覚えはあるが、記憶の中の博多の街とは随分異なる。

しかし海には多くの船が行き交っている。元の世界の貨物船や客船よりはだいぶ小さいが、交易港としての博多の街は機能している様子だ。


小夜と白は目の前に広がるバードビューにしきりに興奮している。元の世界ではドローンによる空撮映像など珍しくもなかったが、そもそも動画や映像といった概念のない小夜達には刺激が強すぎたかもしれない。

「手を振ったら見えるかなあ!」

いや向こうからこちらは見えないと思うぞ。


そんなこんなで博多の街に近づいてきた。

衛士の姿は見えるが、特に咎められることはない。陰陽師風の褐衣姿が効いているのか、異国風の袍を纏った者達と一緒だからか、いずれにせよ良いことだ。


「街に着いたらどこか大きな神社を訪ねましょう」とは青の意見。

「神社?見る限り櫛田神社と住吉神社らしきものは見えるが…何故だ?」そう青に尋ねる。

「大きな寺社のそれなりの神職であれば、恐らく式神や精霊の存在を理解しています。三善様のような陰陽師にも伝手があるやもしれません。旦那様の力は陰陽師のそれとは多少異なりますが、伝手を作るにはちょうどいいと思います」

「まあタケルの存在に気づいたら、勘のいい陰陽師なら飛び出してくるだろうけどな!」と紅も賛成する。

「それなら櫛田神社に向かおう。博多といえば祇園山笠。山笠といえば櫛田神社だからな」

そういった俺に、小夜が聞いてくる。

「ヤマカサってなに?」

「山笠ってのはなあ!」と紅が答える。

盂蘭盆会(ウラボンエ)に行われる施餓鬼(セガキ)の儀式だよ。施餓鬼棚に乗った寺の住職が、疫病退散を祈祷しながら街中に水を撒いて回る祭りだ!」

「お祭り!いつあるの??」

「盂蘭盆会だから、夏だな。もっと暑くなってからだ」

俺の持っている山笠のイメージとはだいぶ異なるが…まあ水を撒くとか街中を練り歩くという所は合っているな。そうか…そんな起源があったのか。

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