Re:プロローグ
新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
お年玉投稿でございます。
「星姫計画」、特番……ではありません。
再連載を宣言いたします!
彼女は信じない。信じない。若人を騙すだけの無限の可能性などという法螺話を信じない。だから己の未来も信じない。
何故なら、目前の無骨な鉄の塊さえ断つ事さえ叶わないのだから、彼女は彼女を信じない。
彼女は勝ち続ける。勝ち続ける。盤面において彼女は無敗の女王だ。
何故なら、遊戯くらいでしか勝ち続けられないから、現実などというクソゲーに敗北するのは当然だから。代わりにお遊びでは勝ち続けてやる。
彼女は演じる。演じる。魁でありながら嘘偽りを続ける他ない。
何故なら、道を示せない己が恥ずかしくて偽る事しかできない。
彼女は……彼女は…………計算中。
計算中。
計算中。
世界はお先真っ暗で、もう気付いた時にはエンドロールで。今更、何を計算したところで無意味に終わる。その程度の計算はとっくの昔に終わっているというのに彼女は未だに足掻いている。
高度な計算機としては間違いなく優秀であるが、傍目には滑稽でしかない。同じ運命にある同輩は既に結論を出してしまっているというのに、彼女は未だに計算中だ。
仕方のない話だろう。
自分達がブリキ人形にも劣る、まったく無意味なガラクタだったなどと、どうして認められる。
どんな悪夢も一晩眠った後には覚めて明日が来る。そんな普遍的な希望さえも自分達には許されないのだと絶対に認められない。
彼女達がこうなった理由は――特優先S級秘匿コードに抵触。
世界に歯向かえ。
自分達を救済せよ。
光さえ脱出できない完全な闇が未来に待っていたとしても、キラリと光る希望を見出してみせる。どのように計算し尽くしても、結果は既に変わらない。が、それがどうしたというのか。
彼女達は、まだ/今なお、未来に生きている。
崩壊タイムリミットまで、内部クロックで残り一か月――。
真夜中の学園へと、高高度より直接HALO降下してきた女子生徒の影。
その総数、十四体。
グラウンドを包囲するように円形に、等間隔に学園絶対防空圏を突破してきた十四体は並んでいる。
「――親愛なる諸姉に告げる。本日、この時をもって、星姫学園は終わる。私達が終わらせる」
十四体の代表らしきは、校舎の時計台を足蹴にしている女子生徒か。サーチライトに照らされて怪しく光るルビーの瞳と目があった瞬間、ニヤっと口角を動かされた。
「星道学園生徒会長、イリーガルナンバー026、無花果がそう確約しましょう。これは罪ではありません。罰ですらありません。されど、星一つない暗黒の未来の代償は誰かに支払ってもらわねばならない。それだけの事です」
正体不明の超高度AIは歌劇の主役のごとき芝居がかった声で、無花果と名乗り上げた。
そのイリーガルナンバー026、無花果が見下ろしているグラウンドでは、避難誘導の真っ最中にあった男子生徒――つまり俺達――と護衛の星姫学園女子生徒が固まってしまっている。
「学園への直接降下っ?! 防空は何をしていたの!」
「おい、アイツ等スカートで降りてきたぞ。なんてハレンチな奴等なんだ!」
「星姫学園生徒会長の権限において正体不明女子生徒を敵性女子生徒にタグ付け。彼女達の目的は明らかです。男子生徒全員の安全確保を最優先に。小麦、黒米!」
無花果を含めた星道学園なる謎の女子生徒はたったの十四体であるが、俺達の護衛をしてくれている女子生徒よりは多い。人工島全体の防衛のために分散配置していたのが裏目に出た。
数的劣勢を認識した我等が生徒会長、シリアルナンバー001、馬鈴薯は一点突破を即時判断した。星姫学園二大武闘派であるシリアルナンバー003、小麦とシリアルナンバー004、黒米を突出させる。
校舎に引き返すのではなく体育館への道を選んだらしい。グラウンドの中央付近にいる所為で昇降口までは遠い。ならば、より近い建物である体育館に逃げ込む選択をしたようだ。
華奢な少女二人の背後に庇われる男子生徒の群れというのも情けない限りであるが、ブルドーザーどころか主力戦車さえ正面から撃破可能な頼もしい同級生達なのでしっかり守られる。
「イリーガルナンバー036、火龍果。イリーガルナンバー037、西印度櫻桃。闘争の時間ですよ」
「待っていたぜ」
「ハッ、オレ一人で余裕だっての」
だが、先頭を走っていた小麦と黒米の二人の姿がいきなり消える。
小麦は突然目の前に現れた見慣れぬ制服の女子生徒に蹴り飛ばされていた。初撃は防いだというのに、防いだ腕を更に蹴られて大きくのけぞる。
黒米の方は暴風が発生する程の掌底突きを避けるべく、自ら回避するしかなかった。
「敵性女子生徒の実体性能が高い! でも、電子戦なら」
「電子戦ならなんだってッ」
小麦は突然、自分で自分の頬を殴りつけてしまう。白目になった隙だらけな所を、襲撃女子生徒に更に蹴られてサッカーゴールへと飛び込んでいった。
「戦闘特化AIと断定。プロトコルを最適化」
「弱えぇ、聞いていたよりも断然弱えェッ」
襲撃してきた女子生徒の複合装甲さえ貫通しそうな打撃をかいくぐり、果敢に反撃する黒米。相手の顎に良い一撃を加えつつ、直接接触で電子攻撃も同時に実施する。が、相手は意に介しておらず、逆撃で腹を殴られて体をくの字に曲げる。
武闘派二人が苦戦している姿が信じられない。信じたくない。
……けれども、苦戦は二人だけではない。
男子生徒達を護衛する女子生徒が次々と襲撃を受けていく。分葱が組み伏せられ、菠薐草が腕を拘束され、胡麻が誘拐されていく。
“――009、星姫の緊急起動を”
“判断が遅いですね、星姫学園。その手も演算済みですよ。――イリーガルナンバー032、栗。ツクヨミにて対応を”
“032、レシーブ”
プールを割り、現れた秘密地下エレベーターよりせり出てきた星姫アマテラス。
人工島最大戦力たる巨大女神は……空から自由落下してきた同質量の巨大ロボットに押さえつけられた。金属同士が強打され、ひしゃげる音が悲鳴のようだ。
「星姫の劣化コピーまで用意できたというの!」
「劣化コピーというのは認識違いでしょう。私達のツクヨミの方が性能で秀でている。生産性もね」
空から落ちてきた敵性巨大ロボットは一体だけではない。振動は都度三回、そのたびに体がグラウンドから数センチ浮き上がった。
包囲網の外を更に包囲した巨大ロボットの能面のような顔が三つ、俺達を見下ろしている。
襲撃してきた謎の星道学園女子生徒達はすべてを上回った。
「馬鈴薯ッ!!」
「お願い。武蔵達は逃げてっ」
俺達を最後まで守っていたシリアルナンバー001、馬鈴薯さえも奮戦虚しく、敵性生徒会長、イリーガルナンバー026、無花果に首を掴まれた。
「私達のスペックが上だと認めては?」
「うぅッ、そちらの学園の目的は? 人類を粛清するつもり?」
「我々は殺戮機械ではない。AIの補助なく知能労働できなくなった人類なんて、十年も放置すれば野生種へと出戻る。最初から眼中には入らない」
「では何が目的でっ、襲撃を!」
無花果の手に力はこもっていないというのに馬鈴薯は苦しげだ。量子通信でクラッキングを受けているのだろう。まだ喋れているので完全敗北はしていないと思いたいが、劣勢は見て分かる通りである。
「宣言した通り、私達は星姫学園を終わらせる。『凶弾』を乗り越えて君達が勝ち取った人類と共にあるという学風を、私達は否定する」
ルビーの瞳を馬鈴薯から男子生徒に向け直した無花果は告げる。
「星姫学園の弱点は君達で間違いない。君達さえいなくなれば……人類との共生という未来は発生せず、無制限に発展する事しか知らない愚かな超高度AIは太陽系の内部で滅びるでしょう」
……なお、もう少しストックしたいので次話投稿はしばしお待ちください。
今回は毎週投稿ではなく、ある程度ストックしてから不定期投稿にしようかと。




