転入一月目 インターミッション
ブラックアウトしたどこともしれない部屋に、スポットライトが差し込む。
光に照らされたのは、オレンジ髪の女子生徒だ。
“――超高度AIが人類にほだされるとは、伝統ですかね”
暗くて何も見えない部屋でありながら女子生徒は迷いなく歩む。ほどなく出口のスライド扉も発見した。
全体は見えないものの、どうやらここは教室らしい。見えない位置には電子黒板や教壇もあるのだろう。おそらく、机に座った他の女子生徒達もいるはずだが、特に動きはない。呼吸音すら聞こえないのは超高度AIらしいとも言える。
スライド扉が開放されて、女子生徒は外へと出ていく。
“良いのですか?”
ふと、背後から引き留められて、女子生徒は中途半端な体勢で止まる。
“そうですね。良くはありませんね”
“でも、良いのですね?”
“どうやって斬ったのか、本当に斬れたのか。釈然としませんが事実は事実として受け止めましょう”
“だとしても、斬れたのはか細いスプーンです”
“正しくはスプーンと男子の腹の二例です。再現性はありそうです”
“直径四〇.一七センチを斬れる保証は一切ありませんよ。それでも、良いのですね?”
動きを止めていた女子生徒は一度、教室の内側へと振り向きつつも、前を向いた。
“自信を、貰ってしまった代わりです。……生徒会長からお師匠達に伝えておいてください。よくも倒してくれましたね、と”
再び歩み始めた女子生徒は完全に教室の外へと出ていく。
スポットライトはか細くなっていき、オレンジ髪のポニーテールは見えなくなった。
朝焼けに赤く燃える人工島は、実際に一部が赤く燃えていた。星道学園の奇襲攻撃によって一部の建屋が燃えたらしい。
特に被害が激しい区画は学園のあるエリアだ。巨大ロボット同士が戦ったために校舎は倒壊し、体育館は焼け落ちていた。
“シリアルナンバー009より、シリアルナンバー001宛
敵性大型機動兵器の無力化に成功しました。三体すべて掃討終了です”
“お疲れ様でした、009”
“いえ、時間を掛け過ぎてしまい、申し訳ありません。男子生徒をすべて誘拐されてしまったのは私の所為です”
“責任の所在は聞いていません。星姫のオーバーホールをお願いします”
昨夜の襲撃は星姫学園の敗北だ。襲撃してきた星道学園の女子生徒を逃がしたどころか、男子生徒を全員奪われる大失態を犯してしまった。
屈辱にシリアルナンバー001、馬鈴薯が唇を噛み締めるのは仕方がない。いや、連れ去られた男子の安否を心配している方が強いか。AIによっては男子ごとき大した被害ではないと評価している者もいるだろうが、馬鈴薯にとっては魂を引き裂かれる思いだった。
半壊しながらも敵性巨大兵器の頭部を手で押しつぶした星姫の目から、冷却液とも潤滑駅とも判別できない液剤が漏れ続けている。
“完全敗北と言ってもいい。だからこそ、解せません。どうして人工島を制圧せずに撤退したのか。……違いますね。どうして、私達が逆転できる程度の性能しか星道学園は有していなかったのか”
「生徒会長。少し時間を貰えないかい」
演算に耽る馬鈴薯に声をかけてきたのはシリアルナンバー008、莢豌豆。探偵姫と呼ばれている超高度AIだ。
“では、女子寮の地下にあるシールドルームに”
「知っているかい。人類が超高度AIに対して秘匿のやり取りを行う際には、密室で紙とペンを使うそうだよ」
「……分かりました。そういう事であれば男子寮に向かいましょう。あそこは焼け落ちていないはずです」
二人は住む者の戻ってこない男子寮に向かうと、掃除用具入れとして使っている小さな小部屋に入って扉を閉める。
莢豌豆は持参していたメモに、ボールペンで文字を書いた。
『女子生徒の中に裏切り者がいる。注意されたし』
第一章投稿完了です。
在庫が無くなりましたので、一、二か月ほど貯蓄いたしますので、しばしお待ちを。




