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色の無い夕焼け  作者: みりん*
1/2

1.来客

 ___今日も目が覚めた。

 低血圧と憂鬱が相まって、真っ白なシーツから出られない。目覚めから約10分。やっと起き上がる。ドアの向こうにガラガラとワゴンの音がした。ああ、朝食か。相変わらず薄味の朝食。一応完食し、食器を返す。大してやることもなく、ただただ、変わらない色の世界を見つめる。今日も変わらない。

 色の無い世界だ。


 私は時間感覚が狂うほどに暇をもて余していた。

 これでもしも日記を書くとなったら毎日書き記すことなど無くて白紙の日記になっていたことだろう、なんてくだらないことを考える。暇というのは思考しか広がらないものだった。ああ…変わらない日々……暇つぶしの方法すら浮かばない。


「ようちゃ~ん!!!」


「!?」


 突然ドアが開き、誰かがやってくる。私は起き上がった姿勢のまま、ドアの方を向く。左側だけ少し長い横髪。大きな瞳に二つのピン。きょとん、とこちらを見る双桙は、純粋で、私とは大違いだ。

 久しぶりの来客に、私は話しかける。


「…どちら様、ですか」


 久しぶりに発した声は、お世辞には良いと言えなかった。部活用のバッグだろうか。エナメルバッグを背負ったままの少年は驚いたように話す。


「…あれ、ここって106号室…?えっと、ようちゃんじゃない…?」


 どうも部屋を間違えているようだった。仕方ない、教えようかな。あまり、人と話すのは好きじゃないのだけど。いや、会話ってどうやるのか忘れてるだけかもしれないけれど。


「…此処は、107号室。それと、多分、106号室の人は、今いない」


 話すの下手すぎやしないか。そう思ったけど仕方ない。また少年は驚いたような顔をして言う。


「え?いない?え?何で…?」


「…ちょうど今日は定期検診で、みんな順番に検診を受けてる、から」


 そう言うと少年はああ、そうなんだーと言って安堵の表情を見せる。そしてなぜか勝手に向かいにあった折り畳みの椅子に腰かけ、私に話しかけてきた。


「つまり、ようちゃんは今検診で…次はキミなのかな?」


 なんとなく私は答える。まだたどたどしく、だけど。


「…そう、次は私。多分あなたの言っているようちゃんとやらは今いないよ」


 すると目の前の少年はニコニコと笑顔を見せて言った。


「…じゃあさ、ようちゃんが来るまで、キミの番が来るまで、お話ししようよ!」


「…え?」


 いや、なんでそうなるんだろうか。まあ、この少年暇みたいだし、ようちゃんとやらの検診はきっとまだ終わらないだろう。仕方ない。


「…まぁ、少しだけ、なら」


「…ありがとう~良かった、病院って暇つぶしできないから~!!!」


 笑顔で私にそう言って、少年は自ら名乗った。


「僕は久遠 夕也って言うんだ、君は?」


 名乗られてしまったなら返さないと。仕方なく私も口を開き、何だか皮肉みたいな私の名前を呟く。


「日色、彩っていうの」


 夕也はニコニコと笑顔を浮かべたまま話し続ける。学校のこと。物忘れがひどいこと。それもあってあんまり人と話すのが上手でないこと。というか通っている中学が同じだった時にはびっくりした。


 この病院はいわゆる大学附属病院というやつで、その大学は付属中学とかいろいろあってややこしい。まあその大学のおかげで何不自由なく中学に通っていることになっているのだ。


 まだ時間もあったので、仕方なく私も話をすることにした。というかちょっと会話下手くそすぎて悲しくなってきていたのだ。練習がてら話す。


「…私が話せること…」


 なにがあったろう。なにもない記憶をさかのぼる。何があった?思い出せる…?

昔書いていた色の無い夕焼けを、もう一度じっくり練り直したのがこちらの作品です。

ゆくゆくは挿絵も入れていきたいと思っています…。

不定期更新となりそうですが、お付き合いいただけると幸いです。

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