御守夜子
隣から聞こえる「うーん」という声を胸のうちで微笑ましく思いながら、夜子はテキストから顔をあげた。ぐうっと伸びをして辺りを見回す。
換気のために開けられた窓のそばでたなびくカーテンや、規則的に並ぶ窓枠の影は長く伸び、図書室中の本棚に模様をつけている。一時間くらい前までは大勢いた生徒たちも帰宅したのか自習室へ移動したのか、いつの間にやらまばらになって、外からは体育館の扉が開いているのだろう、部活動に励む生徒の掛け声と靴底の鳴る音が聞こえていた。
夜子は放課後特有の香りに思わず懐かしくなる。「私にもこんな風に勉強していたことがありました」、と。
探偵資格試験対策のテキストに夢中になって、市の図書館の閉館時刻を告げる放送と兄さんの心配と怒りの混ざった声が同時に耳に飛び込んでくるあのくすぐったい記憶。帰り道、猫背の兄さんの背中をまっすぐにさせながら、その日の疑問点をぽつりぽつりと解いてもらうのが好きだった。
「ーー御守さん、なに笑ってるの?」
先程まで難しい単語の連続に苦戦していた友人が唇をとがらせ、夜子の頬を指先でつついた。思った以上に思い出に浸ってしまっていたようだ。
「ごめんなさい、自分が勉強していた頃を思い出したら、つい」
「御守さんなら楽勝だったんじゃない?」
「まさか。私もここがなかなか覚えられなくてーー」
開き癖のついたページの一文をなぞると、友人はほっと顔をほころばせた。
勉強は一旦休憩だ。ふたりとも集中力が途切れてしまった。向こうのテーブルでこそこそと話すグループを見て、お互いに目を見合わせて小さく笑った。
「ねぇ、御守さんってさ、なんで探偵になろうと思ったの?」
「探偵資格は持ってますけど、私、探偵じゃありません。先生の助手です」
「もお、揚げ足取らない」
「ふふふ、ごめんなさい。質問の答えはうちが探偵事務所だから、ですね。父、というか先生が所長ですのでお役に立ちたいと思って」
「先生って御守探偵だよね。……なるほど、お父さんが探偵だと家業の手伝いってことで子供でも捜査に関われるのか。何かで読んだぞ、なにかで」
「はい。それに兄さん姉さん、弟子の方々も探偵になる為の勉強を当たり前にしている環境で育ちましたし、先生のお手伝いをするのはここに住まう人間にとっては当然のことだと思っていました」
「いいなぁ! 小さい頃から一線で活躍する探偵や助手の仕事ぶりを近くで見てきたってことでしょ?」
両手を胸の前で重ねた友人は、おとぎ話を急かす子供のような目で夜子を見つめた。いいことばかりではなく、辛く苦しい場面も目の当たりにしてきた夜子にとっては複雑な眼差しだったが、先生のことになるとどうしても気持ちを止められない。好きなことを語るとき、人はどうして自分を抑制出来ないんだろう。
「そうですね、とても勉強になりますよ。特に先生は凄いんです、」
探偵の仕事は今や世間一般にも浸透した職業で、いつからか映画やドラマ、漫画に至るまであらゆる創作物の題材になって老若男女の目に触れるようになっていた。
人間に成り代わり、人間を補食し、人間に敵対する『異形の者』の実態が未だ明らかになっていない現代で、頼れるものがあまりに少ないことがその一因となっていることは否めない。
異形の者に対抗する力を持った者。探偵。ヒーロー。新しいかみさま。なんだっていい。人々は無意識に救いを欲しがっている。
けれどテレビや雑誌でよく見られる探偵の物語のほとんどは、異形の者の正体を暴いてからが本番だ。夜子にはそれがちょっと不満に思えた。御守夕ーー本物の探偵の才能をいつだって間近で見てきたから。
御守夕の名前を知らない者はこの業界にはいない。異形の者が何かしらのネットワークを有していたら彼らにとっても恐れるべき名前になっていることだろう。
捜査のきめ細かさ、直感、排除に際しての準備や手際、どれもがそこらの探偵とは比べ物にならないほど緻密で鮮やか。それは彼の担当した事件での戦闘時間が異様なまでに短いことからも見てとれる。相手がどういう者で、何に強く、何に弱いのか。被害を最小限に抑えての捜査や排除は何よりも難しいはずが、御守夕にかかればそれは毎回当然のことになる。
探偵、助手。どちらもが怪我ひとつせず、くたびれた様子も見せずに晴々と帰ってくる様が夜子にはいつだって眩しく、きらめいていた。
クラスでも大して口数の多い方ではない夜子が頬を紅潮させるほど一生懸命に、年相応に話し続けるのを聞き終えた友人は胸の前で小さく拍手をした。
「さっすがだなあ、御守探偵。探偵オタクにも人気だもんね」
「業界内にも先生のファンは多いですよ。私も先生の捜査方針を引き継いでいるつもりですが、……先生のレベルになるにはまだまだ勉強が必要です」
「なるほどね、御守探偵の跡を継ぐべく『夜子探偵』もがんばってるわけだ」
「んもう、私は探偵じゃありませんってば。先生の助手です! 今までも、そしてこれからもそれは変わりません!」
怒らないでよ、と友人が再び桃色の頬を指でつつくと、夜子もつられて笑ってしまう。
ふっとカウンターに座った委員の子がこちらを見ているような気がして、どちらからともなく咳払いをしてテキストに手を添えた。
「よし、それでは御守探偵の助手さん? この問題の答えはこれであってる?」
「ふふふ。これはひっかけ問題です。なので、ここはーーーー」
友人が集中しているうちに、と取りかかり始めた来週までの課題を終え、まとめていた髪をほどくとふっと張り詰めていた気持ちが緩むのを感じる。
ーー私はすぐに目の前のことでいっぱいになって、まだまだですね。
斜め下に開かれたノートは何度も書いては消したであろう跡ができ、そこから進んではいないようだ。こういうとき、兄さんや姉さん、事務所の皆は夜子が自信をなくしてしまわないよう上手く話をしてやる気を起こしてくれていた。
「……そう、いえば、うちの学校から探偵になりたいって人がいるなんて、ちょっと驚きました。周りは進学を考えている人ばかりだと思っていたので」
突然わざとらしくはなかったかと不安になったが、友人はすぐさま顔をあげてきょとんとした顔で首をかしげた。
「そう? 結構いるよ、探偵になりたいって人」
「……あ、それってあれの影響でしょうか? アイドルの男の子が探偵役をやってるドラマの……」
「あれかぁ。KEIも悪くないけどさ、幼馴染の子が可愛いよね」
二年ほど前から始まったドラマは、イケメンアイドルの豪快なアクションと最新技術を用いた映像で一躍ブームとなり、シリーズ化されたものだ。その人気は映画化だけに留まらず、放送以降子どもたちの将来の夢のランキングが変わったとさえ言われるほどだ。
「……うーん、でも、あんまり関係ないんじゃない? みんな安定して稼げる職業ってとこが魅力なんだと思うよ」
「安定……?」
夜子が眉をしかめたことに気が付かないまま彼女は話を続ける。
「だってそうじゃない? 給料は良いし、手に職系の仕事だから雇用も安定してる。それにさ、御守さんもそうだけど、学校に通いながらでも働けるのもいいよね」
「うーん……、……いいことばかりではありませんよ、探偵の仕事は」
ドラマや物語ではなかなか語られない、探偵の影の部分。
憧れだけでは成り立たない、現実。そこを理解しなければ良い探偵にはなれない。いつか先生もそう言っていた。
夜子は友人に隠れるようにテーブルの下で両足首を擦り合わせ、まだ中学生だった頃の苦い数日間を思い返した。
つかさ警備ーー警備会社と銘打ってはいるものの、探偵と助手から構成された対異形種専門警備チームを有することで近年名を知られるようになったーーより御守探偵事務所に協力の要請があったと事務を担当している山本さんからの相談が始まりだった。
依頼内容はいたって普通の案件だが、依頼者が異形の者の正体を暴く際に自分も同席したいと希望しているのが珍しい。つかさ警備は一般的な社員を使うのではなく、異形の者を経験したことのある探偵や助手を増やすことで不測の事態にも対応しようと計画しているのだろう。
しかし事務所もいくつかの案件を同時に進行している最中で、手が空いている者は夜子しかいない。先方が了承しているとはいえ、当時ひとりで現場に出向くことは少なく、まだ中学生の夜子が断りやすいようにと「それでも平気かしら?」と気遣ってくれた山本さんに夜子が首を横に振れるわけがなく「心配にはおよびません!」とひとつ胸を叩いた。
つかさ警備の調査は業界内で新進気鋭と言われるだけあってか、予想を遥かに上回るスピードで進んでいった。
その間に依頼者である少女との顔合わせの機会をもらい、自己紹介と軽い雑談を済ませた。同世代のふたりはあっという間に打ち解け、その日の終わりには再会を約束する別れの挨拶と共に花が綻ぶような笑顔を交わした。
排除当日。
依頼者は朝から落ち着かない様子で自分の体を抱くように何度も腕をさする姿を、夜子はすぐそばで見つめていた。
「今は私たちがそばにいます。だから、安心してください」
安心させようと冷えた手を両手で包み込み、ゆっくりと諭してやるも、依頼者が答えた声はあまりに力なく、隠しようもなく震えていた。
ーー羽田、配置に付きました。
ーーはあい、ご苦労様。僕たちもいいかな、八重ちゃん?
ーーええ、いつでも。
耳元で鳴るトランシーバーからは絶えずつかさ警備の誰かの声と途切れとぎれのノイズが入る。
簡単に人払いされた寂れた公園は静かで、余計にそれが耳につくが、慣れない装備に集中を切らしている場合ではない。夜子は依頼者に、自分を信頼して送り出してくれた事務所のみんなに、そして御守探偵事務所という看板を背負わせてくれた先生に、少しでも報いようと唇をきゅっと結んだ。
羽田高瀬、と名乗る青年が大型の盾を構え、その後ろに夜子と依頼者は立っている。透明なライオットシールド越しに、前方に立つ善知鳥束と葵八重、そしてまだ人の形をした異形の者の姿が見える。
ーー社長、お時間です。
ーーりょーかい。高瀬くんか夜子ちゃん、依頼人に説明してくれるかな? これからこいつの正体を暴く、ってさ!
冗談めかした善知鳥の声に、夜子が先に反応した。すぐさま依頼者の体に震えが戻ってきたことがダイレクトに伝わってくる。
上半身だけ振り返った善知鳥に羽田が頷いた途端、骨張った手の中の警棒から異質な音が鳴り響いた。探偵用の警棒には対異形種用のスタンガンが内蔵されているのだそうだ。先に聞かされていたとはいえ、電気が這う瞬間を目の当たりにすると思わず身を固くしてしまう。
それは依頼者も同じようだ。繋いだ手にこもる力が、痛い。
「……お父さん」
善知鳥が振り上げた警棒がひときわ大きな音を立てる。依頼者の言葉に答える者はなく、お父さん、と呼ばれた姿は非日常へと変化する。
鬼に似た異形の者は人の言葉を失い、威嚇のための唸り声が、今しがた見た電撃の飛沫の残像を伴ってその場にいる全員の鼓膜に突き刺さる。
ーーあぁ、あー……。脳みそがしびれる。さ、依頼人からの要望もクリアしたことだし、こちらが倒れないうちに本題といこう。
ーー了解。排除、開始します。
ーー了解しました。依頼人および夜子さんの警護を続行します。おふたりとも、気を付けて!
夜子にしがみつくように立っていた依頼者の耳にも通信の内容が届いたのだろう。異形の者と夜子の間で視線が行き来する。
「ここからはすぐに済むと思います。もう終わりますから」
しっかりと目を合わせ、子どもに言うような穏やかな口調でそう伝えると、依頼者の目に張った水の膜が大粒の涙に変わって落ちた。夜子はポケットから取り出したハンカチの角でそれを拭ってやとうと手を伸ばすが、彼女はぶんぶんと首を横に振って差し出された指先を拒絶した。
「……ね、が……、やめて、」
「え?」
「やめて!! お願い! お父さんを殺さないで!!」
何の前触れもなく突き飛ばされて体勢を崩した夜子が慌てて手を伸ばしても届かない。羽田の制止の声が響いてもそれは変わらないままだった。異形の者へ駆け寄ろうと躓きながら走る体は止まろうともせず転がるように進み続ける。
「待ってください!!」
駆け出す一歩が砂利で滑りそうになっても、夜子は全力で地面を蹴った。依頼者の背中が近づく。善知鳥や葵、異形の者とも同じだけ近くなる。何かが焼ける臭い、陽が眩しくて、どこで響いているのだろう、鼓動が全身に痛い。異形の者の息遣い、鋭い爪が空を切る音、風、
「逃げて!!」
半ば悲鳴のような自分の声を聞いたのと、体への衝撃に呼吸が出来なくなったのはほぼ同時だった。
夜子が依頼完了の報告を聞いたのはそれから三日後となった。
両足の骨折、全身の打撲、脳震盪。「五十年前の医療ならどうなっていたことか」と病室を訪れた兄さんは頬の無精髭をカリカリと撫でながらため息をついた。そのだらしない風貌に夜子は説教のひとつもしたかったが、ろくに眠りもせずそばを離れないでいてくれたことが容易に想像出来たためぐっと黙って頭を下げた。
次第に体調が落ち着いた頃、つかさ警備から報告にやって来たのは同性の葵だった。夜子が目覚めるよりも先に、早々に事務所への謝罪を済ませたあの社長が気を効かせてくれたのだろう。まだ中学生とはいえ、両足を固められた姿なんて異性に見られたくなかった。
兄さんから「後日チームの方々にご挨拶を」と言われていたから、退院後すぐにまた彼らと顔を合わせなくてはならないけれど。
葵はベッド脇の椅子に腰掛け淡々と報告書の内容を読み終えると、すっと立ち上がり深く頭を下げて怪我をさせたことを謝った。そして依頼者を守ったことに対する感謝も。
「依頼者が無傷の状態で任務を遂行出来たのは夜子さんのお力添えのおかげです」
「あの、本当に無傷だったんですか? 私、装備を付けたまま彼女を突き飛ばしてしまいましたし……」
「ご心配なく。夜子さんが異形の者からの攻撃を受けたあと私が依頼者を受け止め、社長が排除を」
のんびりとしたまばたきのような笑顔を数秒だけ見せた葵は「次の調査がありますので」と病室を後にした。
サイドテーブルに残された報告書のファイルをペラペラとめくりながら、ふっと枕に頭を沈めた。最後のページには手書きのメッセージだ。善知鳥束のサインがあったが、今はなんとなく読む気にならずに指を離した。
重みに広がった髪が耳をくすぐる。ここ数年で著しく進化した医療のおかげで痛みはほとんど感じないが、自分の力不足と向き合うのはどうしたって胸が痛む。
大部屋の他の患者のもとへ見舞いに来た誰かの声を聞きながら、大きく深く呼吸をした。きっと人目にはため息に見えたろうが、今の自分にため息をつく権利なんてない。
夜子はそんなことを考えながら、退院後のトレーニングに思いを馳せて目を閉じた。
「両足骨折……、うう、想像するだけで痛いんだけど」
「恥ずかしながら正直に言うと、痛いのは傷よりも懐です。あのときだって装備の修繕と医療費で報酬の全額が消えましたから……。
探偵になれば就職先には困らないでしょうが、その先がどんな暮らしになるのかはその人次第です。優秀であればドラマみたいに華麗な生活が送れるでしょうし、実力不足のうちは自分の面倒を見るのもやっとかあるいは。
それにいくらお金を稼いでも、有名になったとしても、死と隣り合わせの仕事である以上は一瞬ですべて失ってしまうことだってあります、だから、」
覚悟のない人は探偵になんてならない方がいいんです。夜子はそう言いかけて慌てて口をつぐんだ。これから探偵を目指そうとしている友人にかけるべき言葉の範疇を越えているような気がしたのだ。その証拠にうっすらと顔を青ざめさせている彼女の表情が目に入った。
誰もがすぐに先生のように、兄さんのようになれるわけではない。自分だってそうだ。あの一件がなければ、御守探偵事務所という看板に、御守夕という名前に守られていただけの自分に気付くことは出来なかった。
今だってそうだ。資格を持っているとは言え、探偵としても助手としてもまだまだ実力不足を自分自身が一番に感じてる。
「だから、……そう! 頑張らないといけませんね」
「そうだよね! 私はまず資格取得でしょ。で、御守さんは目指せ御守探偵! かな?」
「ふふ、私は尊敬する先生をサポートすることにやりがいを感じています。最近先生のお体の調子が良くなくて、代わりに探偵資格を行使することもありますが、やっぱり先生を支えている方が私は幸せなんです。だから『御守助手』として精進していきたいですね。
あなたも探偵を目指すなら、助手からそんな風に思ってもらえるような探偵になってくださると助手冥利につきるというものです」
夜子が柔らかく微笑むのを見て、友人もいっそう笑みを深くした。
「ねえね、よかったらこのあと甘いものでも食べに行かない?」
「そうですね、たまには、……あっ」
ふたりの頭のなかに温かなカスタードクリームを包んだクレープや、イチゴの果肉が練り込まれたアイスクリーム、夢の世界からとってきたようなカラフルなわたあめがふわふわと浮かんでは豪華なテーブルいっぱいに並べられていく。
が、それを夜子のスマートホンへ届いたメッセージが跡形もなく掻き消した。
ーーこの名前……。今度も一筋縄ではいかない依頼でしょう、きっと。
「御守さん、大丈夫? 一瞬すごい顔してたけど……」
「い、いえ。仕事の打ち合わせが入ってしまっただけです」
渋々、けれど迅速に帰り支度を始めた夜子の顔を覗きこんだ友人は心から心配しているといった風に声をかけた。そんなにひどい顔をしたつもりはなかったけれど、と思うも、やはり苦い思い出に紐付けされた名前というのはなかなか受け入れがたいものだ。
(先生は「珍しい案件にふれることも勉強」と仰いますが、やはりつかさ警備の名前はあまり聞きたくありませんね)
ふう、と深く吸った息を吐き出して友人の誘いを断ると、夜子はもう既にどっと疲れた心地がした。
「お腹空いてない? 平気? 私、結構付き合わせちゃったからおごろうと思ってたんだけど」
「また次の機会にぜひ。お腹は空いてますが、打ち合わせ相手がなにか用意してくれていると思うので平気ですよ。…………そういうところ抜け目なく気が回る人なんですよね、まったく」
丁寧に椅子を引いて立ち上がった夜子は、学校指定のかばんを肩にかけた。空いている方の手に、自分のかばんからなにかを探していた友人がぱっとそれを握らせる。
「御守さん、頑張ってきてね。探偵でも助手でも、御守さんのこと応援してるから!」
「はい! ありがとうございます」
夜子は「それじゃあ、また明日」とスマートホンを片手に小走りで図書室を出た。
手のなかには大好きな花束が描かれたチョコレートがみっつ、握られている。