prologue
よくある物語だ。
ごく平凡な高校生という謳い文句でありながら絶対にありえないモテ生活を送っている主人公。
平凡でもモテるなら世の中ほとんどリア充だらけだろうが、なめんな。
……話を戻そうか。
超世話焼きの隣に住む美少女幼馴染。
無口だけどいつも隣にいる幼馴染。
親の再婚によってできた実は義理だった姉か妹もしくはその両方。
非常に仲のいい世話を焼いてくれる実姉、生意気だけれどもそれが甘えの裏返しであることが可愛い実妹、もしくはその両方。
女の子みたいに、いやむしろ女の子より可愛い男の娘の友人。
少し天然な明るい美少女転校生の近くの席になりよく話すようになったり、学校を案内することになったことから仲良くなったり、街角でばったり会ったのが実は転校生でしたとか。そのせいで男子連中から嫉妬されたりされなかったり。
他者からの評価も高く人当りもよい委員長や厳格な雰囲気はあるが誰からも信頼され文武両道、モテるのは基本的に同性の美人生徒会長。
いたずらっ子だがなぜだか憎めない後輩。
小さい頃は男友達だと思っていた子が、久しぶりに再会したら実は女の子で非常にモテる可愛い子なっていて気付かない。
少し古典的だが眼鏡をはずす、もしくは前髪を切るととてもかわいらしいとか。
眼鏡をはずすことで雰囲気が変わることもあるが、はずして初めて目元が分かり美少女であることが分かるとかお前の眼鏡は光を透過しないのか、と言いたくなる。まだ後者のほうに信憑性がある。
こういったよくある物語のキャラクターが存在するわけがない
☆
「あなたのことが好きです」
そう思っていた。
学校の屋上夕焼け色に染まる空の中。
俺の目の前にはこちらに背を向けて立つ一人の女の子。
幼いころに仲が良く小学校の時に転校とともにかかわりがなくなっていた。そして高校二年になり、彼女は春の訪れとともにやってきた。突然の女の子の転校生に男子どもは沸き立ち、女子は鬱陶しそうに男子連中を見る。
最初は変わりすぎていてあの時の子だとは全く気が付かなかった。
学校の案内をさせられることになり、それがきっかけでたいてい一緒にいてよく話すようになった。
話をしていくと楽しくだんだんと小さいころにはなかった恋心が芽生えてくる。
そして今回告白することにしたわけだ。
こちらを振り返った顔には影が差し顔の形や今どんな表情をしているのかわからない。
「私も、君のことが……」
そこまで言って言葉を区切る。
そして口元が微笑みを形作る。
続きの言葉を聞き逃さないように相手の言葉を待つ。
続きの言葉を紡ぐために口が静かに開いていく。その光景はとてもゆっくりで一秒が永遠にも感じるほど長い。
心臓が早鐘を打ち、鼓動の音がうるさい。
だが今の俺には待つことしかできない。
ふいに体を浮遊感が襲い、見ていた景色が流れる。
足元がガラガラと音を立てて崩れていく。
待て、待ってくれ!
手を伸ばす。
何をつかむわけでもなくただただ必死に無我夢中で手を伸ばして
握りしめた手は何もつかまなかった。
ドンッ!!
「————————いってぇ!」
少しかすむ視界がとらえるのは良く見慣れた自室の床とカーペット。
鈍く痛みのはしる鼻からは折れているわけではないが血が出ていた。
近くにあったティッシュを適当に引っ張り取り、鼻を拭う。
血はすぐに止まり、寝ぐせでぐちゃぐちゃになった髪を掻いているとアラームが鳴り次第に意識がはっきりしてくる。
けたたましくなるアラームを雑に止めると一言…。
「夢……か」
はっきりとした意識の中ですぐに忘れるだろうが、だんだんと先ほどの夢の内容がよみがえってくる、いやよみがえってきてしまった。
恥ずかしくなり次第に顔が熱をもつ。
ベッドにダイブし身もだえする。
うわー、うわー!、なんだ今の、なんだ今の!
『あなたのことが好きでした』
なんて、恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。
俺に仲の良かった幼馴染などはいない。
悶え続けていると、「うるさい」と親に怒られた。
はっきり言っておこう。
よくある物語のキャラクターやストーリーなんてものが実際に存在するわけがない。
絶対にありえない。
はじめましての方は初めましてほかの作品を見てくださっている方はありがとうございます。
どうも聖士狼です。
ファンタジーっぽくないものを突然書いてみたくなり投稿しました。
この作品も更新は不定期です。
作品構想は色々出るのですが内容を詰めることが苦手なので続かないんですよね。
この作品を面白いかな?と思ってくれた方はブックマークなどしてくれるとありがたいです。
他作品の合間にでも読んでいただければ幸いです。
それでは「ありえない青春ラブコメを見る」よろしくお願いします。