第3話 そこは学校行ってから考えるか
お久しぶりの投稿です。
目が覚めてすぐに司は退院した。本当は検査をしてから退院するように医者に言われていたのだが、そうなると色々とマズイことがでるので無理矢理退院させてもらったのだった。もちろん遼太郎が病院に手を回して。
「あー、帰ったら宿題終わらせないとなぁ。天使になって、難しかった宿題が簡単な作業に成り果てるとは...。喜んでいいのやら、呆れればいいのやら」
司はもう隠す必要は無いからと遼太郎の専属運転手だという荒垣さんに病院から家に送ってもらっていた。
「お嬢様、到着いたしました」
「荒垣さんありがとうございました。これからも父をよろしくお願いします」
「いえいえ、とんでもございません。遼太郎様に仕えさせていただいていることは私の誇りにございますので」
「...そうですか」
司は荒垣さんの遼太郎に対する忠誠心に少し引いてしまった。
(あぁ、私の部下にも居たな...。忠誠心が天元突破してる奴が)
司は神の記憶が少し戻ったが、思い出したくない記憶に目を背けたくなった。
家に帰った司は取り敢えず入院中に入れなかったお風呂に入ることにした。
(ママも、雄貴も居ないんだけどどうしたんだろ?買い物かな?)
服を脱いで、バスルームに入って頭を洗い、コンディショナーで整えて、体を洗おうとして司は気付いた。
(何気にこの体になってから初風呂なのに、何も感じない、だと?私は完全に女の子になりつつあるのか。でも、まだ違和感が少しあるなぁ。いっそのこと早く体と魂の調整が終わればいいのに)
司はまだ体と神の魂が完全には馴染んでいなかった。まだこれでは現実ではスキルを満足に使えないであろうと本人は考えている。
お風呂から上がり、司は用意していた服に着替えた。
(あ、この服可愛い。ママが買ってくれたのかな?)
着替えた司は2階にある自分の部屋で宿題|《作業》を終わらせることにした。サクサク、サラサラと進めていく司の隣には、終わった宿題が積み上げられていく。
3時間後
「あ、終わった。後は課題図書だけかな?今までの苦労は何だったのか...。ま、苦行があっさり終わったんだしいっか」
「司ちゃ〜ん、ご飯できたよ〜」
「はーい!」
下から希が司を呼ぶ声がして司は我に返った。
「うわ、もうこんな時間になってたの?全然気が付かなかった...。集中力も異常に上がってるのかな?ママが帰ってきたことにも気が付かないなんて」
司が反省反省と呟きながらダイニングに向かうと、いつもより豪華な品々がテーブルに並んでいた。
「え、どうしたの?」
「え〜?どうしたのって司ちゃんの退院祝いと娘になったお祝いに決まってるじゃない!」
「そうそう、兄貴が姉貴になった祝いに決まってるじゃん!ぐわっ!」
「ママありがとう!すごい美味しそうだね!早く食べよう?」
司は右手で雄貴の頭を鷲掴みにしてギリギリと握りながら希に笑顔でお礼を言う。それに対して希もそうね〜と笑いながら席に着く。司はグッタリとしている雄貴をペイッと捨てて椅子に座る。
「あら、そういえば。遼太郎さんがもうそろそろ帰ってくるって電話してきたんだったわ。よかったわね司ちゃん」
「そうなの?パパ仕事早く終わったんだね」
「司ちゃんの為にーー!って言ってたわよ。あの人」
「ふふ、パパったら。あ、帰ってきたみたい」
「あら?そうなの?よく分かるわね〜」
「まぁね〜」
(危ない危ない、ママと雄貴にはまだ内緒にしてるんだった。いつ話すのがいいかな〜?)
「ただいま〜、もう始めてるかい?」
「あ、パパおかえり〜、ちょうど今から食べようとしてたとこだよ」
「そうか、よかった。間に合ったか。...雄貴はこれどうしたの?」
「何が〜?」
ピクピクしている雄貴を見て遼太郎が冷や汗をかきながら司に尋ねるが、司がいい笑顔で封殺した為、遼太郎は大人しく椅子に座った。
「じゃあ、司ちゃん退院おめでとう〜」
「司退院おめでとう」
「ありがとう!ママ、パパ!」
その後復帰した雄貴を交えて宇都宮家は楽しい晩餐を過ごした。
♦︎
部屋に戻った司は遼太郎が持って来てくれた制服に着替えていた。司の学校は男子校だ。なので新しくデザインさせて急ピッチで作らせたのだとか。
「ありがとうございます職人の方々。うちのバカ親が無理をさせたようで...」
司は手を合わせて合掌しながら相当無理をさせたであろう人達に謝った。というのも明らかに今まで着ていた制服と出来が違うのだ。
「なにこの着心地、そしてこの可愛いデザイン...。有難いし嬉しいけど、申し訳なさが先に来て微妙な気持ちになるよ...」
後で遼太郎に一言言っておこうと考え、取り敢えずこの話は置いておき、司は家族に制服を見せに行くことにした。今から着てくれと頼んでいた3人が下で待っている筈なので。
「どう、かな?」
制服を着た司がリビングに向かうと待ってましたと3人が司に目を遣る。そして司を見て希は嬉しそうに笑い。男2人は固まったまま動かなかった。2人の様子に苦笑しながら司は希の前に行く。
「ママ、どうかな?」
「ふふ、司ちゃんとぉっても可愛いわ。天使みたい」
「ありがとうママ」
(流石はママ、鋭いのか天然なのか...。ちょっとびっくりしちゃった)
「ところでそこの固まってる男2人はなにも言ってくれないの?」
「姉貴ーー!抱き締めさせっブファ、ぐぇ」
ルパンダイブをきめた雄貴の頭を司は難なく鷲掴み、ペイッと投げ捨てる。
「分かった分かった雄貴は本当にもう」
「司、びっくりしたよ。前に制服を着た時もウルッときたが、なんというか今回は本気で泣きそうだ」
「もう、パパもなに言ってるの?ウェディングドレスを着たわけじゃあるまいし」
「そうだね。でもね、親っていうのは子供の成長に毎回嬉しくて泣きそうになるものさ、ねぇ希さん」
「ふふふ、そうね。でも遼太郎さんはいつも大袈裟すぎるわ」
「そうかい?そうかもね」
遼太郎は苦笑しながら司をもう一度見る。うんうん、とこちらを見て頷く遼太郎を見て司はあることを思い出した。
「あ、そうだった。ねぇ、パパ?この制服作るのにどれだけの人に迷惑かけたのかな?」
ニコッと浮かべる司の笑みに遼太郎はビクッとする。
「あぁ、いや。その、自分の子供には良いものを着てもらいたくてだね」
「良いものを着させてもらえるのは私も嬉しいよ。パパありがとう。でもね?まだ夏休みは暫くあるのにこんなに急がなくてもよかったよね?」
「それは、その、早めに出来たんだ。いやぁ、あまりに早いからパパも驚いたよ」
「こんなに出来のいいものが?驚くほど早く出来るわけないでしょうが!」
司は遼太郎に部下の人にあんまり無茶させないよう言い聞かせて、遼太郎がしゅんとしたところで遼太郎に抱き付いた。
「でも、素敵な制服ありがとねパパ」
▶司の天使のほほえみ 遼太郎は復活した。
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一段落して司は自分の部屋に帰ってきた。
「ん?LINEが来てる、富満からか、宿題やってるかって、あとは本読むだけだよっと。ふふっ、びっくりしてる。頑張って終わらせろよっと。でもどうしようかなぁ、女になったの見たらみんなびっくりするだろうな...。まぁ、あいつらだし変なことにはならんだろうし、そこは学校行ってから考えるかな。スキルとかもあいつらならすぐに発現しそう...。実は元部下の生まれ変わりがいたりしてね...。あれ、もしかして変なフラグ立てちゃったかな」
少し不安になったが、どうにかなるさ精神の司は歯を磨いてとっとと寝ることにするのであった。