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第二話 魔法使いの遭難

 まず旅に出た俺たちは魔界を目指すべくアズルーニ皇帝国を目指す。魔界へ行くにはアズルーニ皇帝国が一番近いからだ。あとジェラールからも近いしな。

 王様から軍資金は貰ったが、元々準備していた俺たちにはあまり必要なかった。けど、お金は持ってて損はない。


「そういや名前、言って無かったね」

「へ?」


 急に話しかけられたものだから腑抜けた声が出てしまった。話しかけたのは弓使い。必死に笑いを堪えてるのがわかる。


「ぷっあ、いや。ほらね名前名乗ってなかったでしょ? 僕はチャーリー。男みたいだって言われるけど」

「え? 女なのか!?」

「うぇっ!? 女だよ! こんな喋り方だけど! 酷いなっ!」

「冗談だよ」

「!!?」


 その後も突っかかって来たが、無視する。いや、最初から女だってわかってたけど…フリかなって。うん。

 ギャーギャー言うチャーリーを無視して盾使いと僧侶の所へ小走りする。なぜかって言うと名前を聞くためだ。

 ニコニコしながら近づくと僧侶にすすすっと避けられた。足音もなくだ。暗殺者(アサシン)の才能があるんじゃね…あの僧侶。と思いながらも避けられたんじゃしょうがないので僧侶は諦めて盾使いの所へ行った。


「なぁ」

「何だ?」

「名前、何て言うんだ?」

「…名を尋ねるならまず自分から名乗るのが礼儀だと思うのだがな」


 ピキッ


 ごめんちょっと、こめかみに力が入って変な音が出ちまった。

 まぁ盾使いの言う通りだけどな、礼儀がなってないのはわかる。けど、俺最初お前らに会ったとき名乗ってんだよ!? 俺じゃなくて兵士だけど!

 心の中でそう叫びながら、俺は笑ってすまないと謝る。


「確かにそうだな。俺はディアス! お前は?」

「私はアラミス。この通り盾使いだ。魔法使いディアスよ、これからよろしく頼む」


 男みたいな奴だな。一人称を“私”にしても男っぽい奴って初めて見たかも。

 アラミスと名乗った大柄の盾使いは少し男気溢れる女性だった。服装は全身鎧で固められた装備、のしたには長袖と思われるシャツに黒いズボン。何者からも守ってくれそうな感じがする。実に頼もしい。俺なんてまず戦えるかもわからないからなぁ。


「よろしくな! アラミス」


 そう俺が呼ぶとアラミスは男前な顔でニコリと笑った。ヤバイ、俺が女だったら惚れてしまいそうな笑顔だ。アラミスが男ならさぞやモテただろうな。


「ところでディアスよ、なぜセーナに避けられておるのだ?」


 突然の問いだった。セーナとはあの“ドジっ子そうに見えるけどそうでもなくて実は眼力凄い僧侶”のことだろう。俺はあぁ、と頷いてため息をついた。その瞬間びくりとセーナの肩が跳ねた気がしたが気のせいだろう。


「俺にもわからん。最初から睨まれてるし避けられてる」

「ふむ。それはディアスにとってはうんざりだろうな」

「俺にとって?」


 そう聞くとアラミスはニヤリと笑った。ヤダイケメン。


「うむ。ディアスとってはそうでも、セーナにとっては恥ずっ!?」


 何だろ、アラミスが何か言おうとするともの凄い勢いでやってきたセーナがアラミスの頭を叩いた。


「な、何するんだ!? セーナ!」


 アラミスは当然の反応である。意味もないのに叩かれたのだ。いい気分ではない。


「ちょっときてください!!」


 おっとりとした顔つきなのに凄い剣幕だ。ってかさっきから凄い凄いとしか行ってねぇよ…小学生かっ!!

 ってのはさておき、連れてかれたアラミスは少し困りながらセーナに何か言ってる。遠くて聞こえないな…。


 【ここからは副音声もお楽しみください。アラミス達の声は主人公には聞こえておりません】


「ちょっと! いきなり何を話すつもりだったんです!?」

「え? 何とは…勿論、セーナがディアスを恋あ「もういい! わかりました!」……」


 ギャーギャーと何かを言う二人。セーナが意見を求め、アラミスが思ってたのと違う言葉を言ったのだろう。また引っ叩かれてる。


「何で言おうと思ったんですか?」

「…私は嘘は苦手でな…処でセーナ、なぜディアスを避けるのだ?」


 今にも雷が落ちそうな顔だったのに、次のアラミスの言葉で少し赤みを帯びた顔になった。何その激変ぶり!? おっとりとした顔なのに!? ってかセーナって糸目だよね! 顔の変化がわかるぐらいに感情が激しいのか!?


「…恥ずかしくて近くに居れないからです」

「ふむ。セーナに“恥じらい”があったとはな」

「あんたに言われたくないですよ!!」


 またギャーギャーと騒ぎ出した。もういいって、俺疲れた。立ち会ってないけど。

 エルアルの所へ行こう。あいつイケメンだけど、正統派だけど! こっちよりマシな気がする。そう思った俺は先頭を歩いているエルアルの所へ走って行った。


「セーナ」

「何です!? これぐらいでは飽きたりませんか!?」

「いやもう勘弁してほしいな…ではなく、ディアスが離れてエルアルの所にいるぞ」

「え!?」


 アラミスがそう言ったので慌ててセーナはディアスの方を見た。

 セーナが見た時にはもうディアスとエルアルの話が盛り上がっているときで、ディアスとエルアルは笑い合いながら話し合っていた。

 それを見たセーナは固まった。石のように。そう、漫画でよくあるキャラがピシィイという音を立てながら固まるやつだ。よほどショックだったのだろう。

 アラミスが慌ててセーナの意識を戻したときにはもう既に廃人の如く何かブツブツをつぶやいていた。


「うそ…ディアスは私よりエルアルの方がいいんですか…あれはイケメンですけど男ですよ? 恋愛対象外です。いやでもまさかっ!」


 ホと言いかけたとき、アラミスが止めの一撃を放った。


「そういや、ディアス。セーナに睨まれてうんざりしてたぞ?」


 うんざりしていると言ったのはアラミスだが、セーナに睨まれていい気分じゃなかったのは本当のところだ。ディアスは少し怖がっていた。

 セーナは効果音に“ガーン”が付きそうな顔になった。糸目なのにコロコロ表情の変わる奴だ。


「あー、セーナ?」

「うわぁああん!! アラミスぅ! 私振られたですよ!!」

「いやまだ決まっていないだろう!?」


 泣きながら抱きつくセーナにわたわたと慌ててフォローするアラミスであった。



 何やら向こうの方が騒がしいけど、何かあったのかな…。セーナ泣いてるし。


「どうした?」

「ん、いや何も」

「そうか…」


 アラミス達の方を見ているとそう、エルアルが声をかけてきた。

 最初の挨拶のときみたく、敬語ではなく素に口調が戻っている。一人称は“俺”二人称は“貴方”だった。“お前”じゃないのかよ!? と思ったりしたが、エルアルはそういう“俺口調”が似合う性格ではない。けど、何で“俺”?


「しかし、エルアルって北の国の出身なんだな」

「あぁ、俺はそこの部族長の息子でな。村では一番強い者に与えられる強者の称号を得ていた」

「へぇー」


 それで、勇者に選ばれたんだな。なるほど、それぐらい強ければ勇者に選ばれるのも無理ないだろう。

 北の国ってのは、ここジェラール王国の上の方にある出っ張った大陸の国のところだ。正式な名前がないので他の国からは“北の国”と呼ばれている。住んでいるのは異民族で、同じ人間でも生まれつき体が強く丈夫だ。村の周りにには常に魔物が徘徊しているため、戦闘センスに関しては人間の中でトップだという。

 まぁ、魔族が相手だと苦戦するそうだが。


「そう言えば、勇者に選ばれる条件って冒険者で最低Bランクだったよな?エルアル、Bランクなのか?」

「いや、Aだ」


 マジかよ…Aとか。冒険者の四分の一しかいなかったはずだけど…。


「ディアスも冒険者なのか?」

「え? あ、うん。俺はCランク」

「C!? 最低Bじゃないと選ばれないはずだが?」

「あー予想だけど、王様魔法使いと弓使いは抽選とか言ってたし…何かの手違いでCランクの俺が当たったんじゃないかと…」

「そうか…じゃ、チャーリーもCなのか?」

「僕はBだよ!」


 えっ! じゃぁ、俺だけ弱い感じかっ!? マジかっ! 魔法使いなのに?後方支援の要なのに!?

 俺の心の叫びは皆に届かず、俺の中で止まった。

 今回、王様が勇者を決めるために応募制で冒険者ランクB以上と決めつけた。大体冒険者はDかCで、Bとなるとそれなりのベテランか天性の戦闘センスを持った者しか持っていない。

 ランクを上げるには規定以上の1ランク上の依頼をこなすか、同ランクの依頼をこなすことをすればランクを上げる試験を受けられる。それ以外の方法ならば、最初登録するとき受ける試験でどれぐらいの力があるかを試させられる。その時の実力で最初のランクを決められるので、一気にランクを上げるとしたらそれを狙うか、2ランク上の依頼をこなせばそのランクまで上がれるということもある。

 まぁ、2ランク上の依頼を受けるというのはあまりお勧めしない。なぜなら死ぬ可能性があるからだ。その為のランクわけだからなー。

 話変わるけど、何で俺チートじゃないんだよ…。ほら、前世で読んだ異世界転生物って主人公チートじゃん…俺異世界転生したのにさ、チートでもなんでもないんだよ?剣技だめ、スキルだめ、魔法まぁまぁ。何でだよっ!! おかしいよ! チートでもいいじゃん!! あ! わかった! 俺主人公じゃないんだ!! なるほど! だからチートじゃないんだね!! ね!!!

 ……自分で言ってて悲しくなった…。

 まぁ、そういうわけで…俺は平均的なCランク冒険者…ですっ☆


「無理やりテンション上げたら気持ち悪いことに…」

「何か言ったか?」

「いや、何も。それにしてもチャーリーってBだったのか…以外」

「む? 以外とはなんだ! これでも周りには結構頼られてたんだよ?」


 くっ! 俺なんかずっとボッチでしたけど!? 嫌味ですか!? あー嫌味ですね! 人間の友達なんて前世ぐらいしかいなかったよ!!


「え、エルアルはAだぞ?」

「君はCじゃないか!? セーナとアラミスはBとAって言ってたぞ!?」

「ぐっ! あー俺はどうせCです!! 一般平凡凡脳中級魔法使いですー!!」

「そ、そこまで言ってないじゃないかっ!!」


 そんなチャーリーとやり取りをしていると、クスクスとエルアルが笑い出した。その笑い声が聞こえたので俺とチャーリーは一時中断し、エルアルを見る。


「くくっ…本当、貴方達は面白いなっ」


 口に手を当てクスクスと笑う。その姿は凛々しく皆の憧れである勇者ではなく、一人の少年のようだった。

 俺はそんなエルアルを見て笑う。彼も勇者の前に一人の少年だ…勇者という大役を荷が重くかんじていたのだろう。そう言えば、俺より若い。


「エルアルは何言ってんだ? 俺たちは元から面白いだろ?」


 フンとキザっぽくボケてみれば、チャーリーがそれに乗ってきた。


「なっ! エルアルの賛同を得て仲良くなるつもりだな! ディアス!」


 いや、なんでだよっ!と突っ込む前にセーナも会話に加わりチャーリーと敵対する。


「抜け駆けは許さないです!」

「え? こっちじゃなくて普通ディアスに言うものだろう?!」


 本来俺に向けてのものだろう言葉をチャーリーに言ったしまったのをチャーリーが驚いて突っ込む。アラミスも加わってきてセーナをなだめた。


「セーナ、落ち着くんだ。チャーリーはそんなつもりは無さそうだぞ?」


 うう〜とセーナな唸る。その姿を見て皆が笑い出す。まぁ一番笑ってたのはエルアルだった。皆、アラミスの言ったことの意味が分かってるみたいだけど、俺には全くわからないので苦笑いになってしまったが。


「ハハハっやっぱり貴方達とは仲良くなれそうだ」

「え? 俺とはもう仲良くなってるとは思ってた…」

「勿論、ディアスとはもう仲が良いがそれ以外の皆だよ」


 にこりと微笑む。人形のように整えられた顔は少しはにかんでいるように見えた。


「む? ディアスだけではないぞ、私たちもだ」

「うん、僕もそう思ってた」

「もう仲良く…もう友達だと思ってたです…恋敵ですけど」


 セーナの最後の方は声が小さくて聞こえ取れなかったけど、皆がみな…エルアルと友達になりたいらしい。

 エルアルは皆のその態度を見て、めいいっぱい微笑んだ。


「ありがとう! 私もそう思っている!!」


 と言い切ったと同時に手に神剣を出現させ、俺たちに向かって横切りする。急な事で少し避けるのが遅くなったが、ギリギリで避けた。


「え、エルアル! 危ないじゃないかっ!!」


 チャーリーが怒鳴る。まぁ急に攻撃を仕掛けてきたんだ。怒るのも無理はないが、エルアルの表情を見ると俺たちを怪我させたく攻撃したのではないらしい。

俺は斬撃が当たった後ろを見ると、狼が倒れていた。しかしそれは動物の狼ではなく…異形のモノ…魔物だった。


風狼(エアーウルフ)…!」

「魔物に囲まれてる…」


 俺が驚いていると、エルアルがそう呟いた。その顔は先程までの笑顔を見せていた少年ではなく、勇者の顔だった。


「いつの間にっ!」

「これだけの数、気づかなかったとは!」

「お、多過ぎです!」


 皆口々にそう叫び、戦闘体系に移る。ガサゴソと茂みから出てきたのは先程の風狼や土狼(アースウルフ)。ゴブリンやオークなどだ。合わせて約五十体ほど。

 ゴブリンやオークはランクで言うとDやE。だが、風狼や土狼はC以上だ。正直俺だけじゃ死ぬ場面だし、Aランクが二人、Bが二人のこのパーティでも少し苦戦する程度。勝てるはずの戦いだった…。

 エルアルは勇者としてこのパーティのリーダーとして叫ぶ。


「王都を出て初めての戦闘だが、決して勝てない相手ではない! けど、気を緩めないこと!」


 その言葉に一斉に頷き、攻撃を開始する。

 この時俺は気を緩めるな、と言う言葉を聞きながらも、勝てると確信し油断していたのがいけなかった。まぁそのお陰で俺の人生が180度変わったわけだが…。


「ディアス!!」


 そう叫ばれて、気づいた。俺の体が光っていたのだ。淡い青色のエフェクトは転移の魔法。俺はくそっ! と心の中で叫ぶ。


「エルアル! チャーリー! アラミス! セーナ! 心配するな! そんなに遠くには飛ばされないだろう! それより戦闘に集中してくれ! すぐ! 戻…か…な…」


 俺の視界は青くなり少しの浮遊感に襲われる。大丈夫、彼奴らは強い。俺よりも。しかし、あの魔物の中にメイジがいたとは…それも転移魔法を使える。さてどうやって戻ろう。

 転移の間そう楽観的思考で考えていたが、やはり俺。というかなんと言うか…ツメが甘い。


「あれ? ここどこ…」


 何も近くに飛ばされるなんて限らないんだから。

 気がつけば、360度自然に囲まれた森の中にいた。


 皆がいる所から十キロは離れた未開の地。俺はそんな場所に飛ばされたらしい…。


文がおかしいのは、主人公の語学力がないせいだと思いたい…。

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