プロローグ
俺は死んだ。そして転生した。
神様とか冥王とかに出会うわけもなく、ただ単に気づいたら赤ん坊だっただけだ。
そこがファンタジー世界だと分かるのにはそう時間がかからなかった。なぜなら日常茶判事に魔法を使っているからだ。
俺を産んだ今世の母は指先に火を灯し、蝋燭に火を付ける。
俺を育てた今世の父は俺に摩訶不思議な現象を見せてくれた。
これを魔法だと思わず何だと言うんだ。
兎に角、俺は歓喜した。魔法が使える!と。だって魔法だなんて憧れじゃないか。何処からもなく自然現象を出現させ生活から戦闘まで多種多様。喜ばずにはいられなかった。
ハイハイが出来る様になると部屋中を歩き回った。親にばれない様に、書庫も探して。
しかし結局、書庫は見つからずそれらしい場所も地下にある。まだハイハイでは階段は上り下りできないので諦め仕方なく部屋にある本を漁った。部屋にある本でこの世界の事を学んだ。
三歳になり立ち歩きも喋れるようになった時、俺専用の部屋が出来た。
俺付きの侍女が出入りする以外、母と父は俺と会わなくなった。原因はわかっていた。先日誕生日に魔力検査をした、よくある球状の検査機だ。手を当てたら数値が出る。
そこで俺は代々優秀な魔法使いを輩出する家系に生まれたのに、魔力が少なかった。あ、いや、一般魔法使いぐらいはあるんだよ、ただこの家ではとてつもなく少ない。
それでいても、見捨てられたわけではなく屋敷の徘徊は自由。書庫と思われる地下にも人目を盗んで行っていた。魔法の初級を学んだ。
五歳になり呂律もちゃんと回る頃になった。初級の全属性の魔法も使えるようになった。次は中級だ。少しウキウキしてきた。
八歳になり二歳年下の妹が大半の貴族や平民が学問を習う下級学校へと通うことになった。
あれ?俺は?とは思ったが、前世の記憶もあるので習う必要はないかと思い毎日万能魔法書などの書物を漁る日々になった。
九歳。侍女達が話していたことを聞いてしまった。来年の誕生日、俺は捨てられるらしい。その貴族の息子という肩書きもなくなり、外に放り出される。この家が優秀な者しか出さない理由がそれだったのだろう。
この時俺は中級魔法までマスターしていたが、上級は使えなくて悩んでいた時。
十歳。突然侍女に出かける準備をしてくださいと言われ、肩下げ鞄を渡される。
侍女が外で待っていてくれる間、俺は中級の空間魔法を鞄に付与してありとあらゆる物を入れた。服や魔法書などの本、今まで貯めていたお金。
それを詰め込んで、侍女に案内され馬車に乗らされた。そして揺らされること数十時間すると降りてくださいと言われ、降りると侍女にさよならと言われた。
今までありがとう。俺は感謝した。
そしてその土地で生活を始めた。
十七歳。王様から手紙が来た。
そして、アイツと出会った。
これは俺の二度目の人生の話。