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子猫が言いました「貴方は神を信じますか~」

村でアデリーナと別れた後の話です。

いけ好かない神父を引っ掻いた後、子猫(おれ)は追いかけくる二人を振りきって村の中を歩き回っていた。

俺の目的は村の中にいる猫や犬と遭ってその状況を調べることである。


にゃーん(誰かいないかな~)


ニャオン?(見かけない顔だね)


子猫(おれ)は突然屋根の上から声をかけられびっくりした。

猫にあったことではなく、猫の鳴き声なのだが俺には言葉として理解できることに驚いたのだ。

声をかけてきたのは耳がピンと尖った白い毛がとてもつややかな白描|(♀)さんでした。

ボイスは平○文風でとってもセクシーです。


--- 以下は猫同士の会話のため人間の会話風です ---


「見かけない顔だけど、どこの子だい?」


「こんにちは。村の外からやって来ました。」


俺は礼儀正しく挨拶をした。

挨拶は社会人として大事なことなのでちゃんとします。


「村の外?あんた森猫なのかい。」


「森猫ってよく分かりませんが、僕が拾われたのは森かもしれません。」


「ふーん、誰に拾われたんだい? 木こりのサムとかかな。でもあいつは猫が嫌いだし違うか...」


「森の側にある小屋でエーリカって魔法使いの人に拾われました。」


「森の魔法使いのお婆さんかのところか。」


エーリカがお婆さん扱いって。

確かに猫の寿命は短いし10歳超えたらお婆さんと言われてしょうがないのかもしれないけどちょっと可哀想だ、少し反論しておこう。


「エーリカさんはドジっ子だけどお婆さんと言われる歳じゃないですよ。」


「ん、あんた知らないのか。まあそこはいいか、ところで使い魔のあんたが村で一人でうろついて何をしてるんだ?」


「使い魔ってよく解りましたね」


「魔女が猫を拾うってことは使い魔にするってことさ。」


「なるほど。僕は確かに使い魔です。実はこの村にいる同胞(ネコ)に会いに来ました。」


「森猫なら森にいるだろう。なんでわざわざ村に来たのさ。」


「森に猫がいるのもさっき知りました。生後一月ほどで死にそうなところを魔女に拾われて使い魔にされてからあまり外に出てないので同胞(ネコ)に合うのも初めてです。」


「なるほどね。若いのにあんたも苦労してるんだね。」


なんかすごく人間臭い会話だな。

俺はこれまでの会話でこの世界の猫はかなり賢いことに気づいている。

当初の予定では魔法で強制的に従わせるつもりだったが言葉が通じるなら交渉もありだろう。

ここで俺は猫信者獲得の方針を大きく変更することにした。

いやいきあたりばったりじゃないよ、某暴走警官も言っていたじゃないか臨機応変な対応ってやつさ。


「ところでこの村には同胞(ネコ)はどれくらいいるんでしょうか?」


「50匹ほどかね。しかしそんなこと聞いてどうするんだい。」


50匹か、思っていたよりも多くいるんだな。

中世ヨーロッパの農村では小麦などを穀物を栽培している場合、蓄えた穀物をネズミの被害から守るために猫や犬を飼っている事が多かった本か何かで読んだことがあった。

俺はジム村の人口は家の個数から予測して50戸・200名前後と考え、その半数が猫か犬を勝っているとしてして猫の総数は十数匹だと予想していたのだが倍以上の猫が飼われていたので驚いた。


「いえ、ちょっと村の猫さんにお願いをしたいことがあったのですが....人数が多くて個別にあって頼むのは大変そうだなと...。」


「猫に物を頼むって結構大変だよ。あと、この村じゃ力が物をいうからね~。あんたみたいな子猫だと聞いてくれるかどうか....」


「そうですか...そういえば名前も申し上げてませんでした。僕はプルートと言います。」


「あたしゃカリンだよ。ここの村長の家に住み着いているよ。」


村長さんの家の猫だって。

アデリーナは村長の娘だよなそれなら子猫(おれ)が拾われたことぐらい知ってそうなものだが。


「村長さんのところって、僕は今日アデリーナさんとこの村に来てるんですが...」


「ああ、魔女の所にいるならビリビリ娘と知り合いになるんだね。お前さんすごく苦労してるね。」


なんかアデリーナが御○美琴っぽいアダ名で呼ばれてるんですがなんでだろう。


「アデリーナさんがビリビリってどういうことなんでしょうか?」


「あんた撫でられたことは無いのかい?あの子に撫でられた猫はみんな”ビリビリ”するって言ってるよ。触られると引っ掻いたりして逃げまわっているよ。で、ついたあだ名がビリビリ娘だよ。あの娘にはここら辺り一帯の猫はみんな迷惑してるのさ。」


うーん、俺はなでられるとすごく気持ちがいいんだけどね。

他の猫さんはビリビリしてダメってどういうことだろう。

静電気体質なのか、それとも手からなんか出してるのかね。

静電気なら俺もビリビリくるからもしかして魔力が漏れているのかな。

子猫(おれ)は使い魔だから魔力は問題ないというか餌みたいなものだし、それが他の猫との差なのかな?

しかしアデリーナはかわいいモノ好きなのに猫に嫌われているのか。

道理で子猫(おれ)は他の猫みたいに引っ掻いたりしないからいつも狙われてるんだな。


「ちょっと撫で方が過激なだけで彼女(アデリーナ)は良い娘ですよ。」


「彼女に撫でられたらそんな事言えないはずだけど...あんた変わってるね~。」


「僕、使い魔ですから。」


「そういうものなのかね。あたしには分からないね。そういえばあんたのお願いがあるって言っていたけど何を(みんな)にお願いするのさ。」


「えーっと」


今日は村の状況偵察だけのつもりだったんだけど、カリンに俺の目的を伝えても良いものか悩む。


「お願い事については大勢の猫にあって話を聞いてもらいたいのですが、みんなが集まることって無いのでしょうか?」


猫って集会してる時あるよね。

こっちの猫も集会してくれてるとありがたいのだが。


「そうだね、ちょうど今日の夜に集会があるから来れるようならあたいがみんなに紹介するよ。」


今日の夜か頑張って街まで出張ってくるか。


「夜のいつ頃でしょうか?」


「お月様が一番明るくなってそれから半分ほどに明るさが落ちる頃が猫の集会の時間だよ。」


この世界の月は満ち欠けはするけど、ずっと空に動いたままなのでその位置で時刻を知ることは出来ない。

ただ明るさは変化するのでそれで時刻を計るのだ。

月が一番明るくなるのは深夜0時、それから半分ってことは3時ぐらいだろう。

その時間なら夜更かしするエーリカでも寝ている。

うまく小屋を抜け出せるだろう。


「理解りました。今日の夜お会いしましょう。」


俺はそう言ってカリンと別れた。


子猫(おれ)が二~三時間村をうろついて理解ったことは、この村に犬はほとんどいない。

いても狩りや牧場らしいところにいるのか姿が見えないということだ。

猫もいるはずなんだが全然姿を見かけない。

俺って避けられてる?

しょうがないのでアデリーナを探して帰ることにする。





深夜、エーリカが寝静まるの待ってから子猫(おれ)は小屋を抜け出す。

小屋から村までの距離は子猫(おれ)には遠い。

走って一時間以上かかるだろう。

すでに月は一番明るい状態を通り越し暗くなり始めている。俺は村に向かって必死に走り始めた。



深夜の村は寝静まっている。

ランプなどは油を使う贅沢品とかで明かりを灯してまで夜遅くまで起きていることはなのだろう。

早寝早起きが農村の基本ということだろうな。

村に入り村長の家を目指す。

村長の家は村一番の大きな家だから猫でも理解る。

俺が家の間に着くと白猫(カリン)がちょうど家から出てくるところだった。


「こんばんわ」


「おや、本当に来たんだね。」


「ええ、なんとしてもお願いを聞いて欲しいので。」


「そうかい、それじゃ集会の場所に行くとするかね。」


白猫(カリン)はすたすたと歩いて行くので、子猫(おれ)もそれについていく。

カリンが向かった先はこの村唯一の馬のいる厩舎であった。

どうやらここが集会場所らしい。


二匹が厩舎に入ると奥の方に30匹程度の猫が集まってこっちを見ている。

馬は寝ているのかとても静かだ。

俺達が最後の猫らしい。

子猫(おれ)は猫達にジロジロ見られている。

近づいていくと子猫(おれ)がついてきているのに警戒心を露わにしている。

集まっている猫達は全て大人であり子猫はいない。

見た感じオスしかいないみたいだし、体もかなり大柄な猫ばかりだ。

体に古傷を持ったものや今も傷を負っている猫もいる。

子猫(おれ)はヤクザの集会に来ちゃった感じががするのですが気のせいだろうか。


集団から大柄なトラジマの猫が一匹前に出てきた。

顔に斜めの古傷がある強面のオス猫だ。


「カリンの姉御、その子猫(おこちゃま)は誰ですか。まさか姉御の隠し子ですかい。」


いきなり隠し子設定キタわ。


「トラや馬鹿お言いでないね。一日中村を見て回っているのに子供を育ててる暇なんてあたしゃにゃ無いよ。」


「じゃ、子猫(そいつ)は誰の子供なんで?」


「今から紹介するよ、こいつはプルート、森の魔女の使い魔だよ。」


「「「へ~」」」


この会話から察するにどうやらカリンはジム村の猫をまとめる姉御らしい。

今日子猫(おれ)が村に入ってきてからどうやらカリンは|俺(よその猫)と遭って村に害を成す者かどうかを調べ、もし村猫に害をなすようだったら排除するつもりだったのだろう。

子猫(おれ)が魔女の使い魔と判ったので集会(ここ)まで連れてきてくれたのだと思う。


「ご紹介にあずかりました、魔女の使い魔のプルートと言います。今日は皆さんにお願いがあってここにやってきました。」


「「「お願い!」」」


いや、みんな一斉に叫ばないで、すごく怖いんですが。


「...ええ、皆さんに神様の信者になっていただきたいのです。」


「「「はぁ?」」」


また一斉に叫ぶ。

なんかこの猫達統制がとれているな。


「おいおい、子猫(プルート)さん。姉御が言うから、あんたが魔女の使い魔ってのは俺も信じるよ。でもその使い魔の猫がなんで俺たちに神様を信じろって言うんだ?」


トラジマの猫(とら)さんが俺の無茶なお願いに突っ込んでくる。

カリンも俺のお願いにかなり呆れている感じだ。

そりゃそうだ猫に信仰心なんて不要だってことは子猫にすら理解る。

しかしここで挫けているようじゃ信者は100人も集められない。


「皆さんはこの村で人間のために戦っていると思うのですが違いますか。」


「戦っている?」


「ええ、村の倉庫や畑に出没するネズミや魔獣と戦っていると思うのですが違いますか。」


「そういうことなら俺達は戦っているな。それが昔から続く村猫と人間の関係だからな。村の人間はどう思っているか知らないが、俺達はこの村に来た時からそうやって村の人間をネズミや魔獣の被害から守って来てやったんだ。」


口からでまかせで言ってみたんだが思いの外猫達の事情を当てていたみたいだな。

村人からみかじめ料(食事)を得る代わりにネズミや魔獣から村を守る、まるで大昔の任侠だよな。

まあ、ネズミはともかく魔獣の方は青銅バッタや鉄鋼蟷螂の幼生体だろう。


「しかし、みなさんがいくらお強くてもやはり魔獣を退治するとなると被害が大きいと思います。元にあちこちに傷を負われている方も大勢見受けられます。」


「確かに時には死ぬこともあるが、それがどうした。俺たちゃそんなことで戦いを恐れないぜ。」


トラジマの猫(とら)さんは男前に返してくる。


「しかし、そんなあなた方に対し村の人は何かしてくれますか?せいぜい食事を多くしてくれるとか撫でてくれるだけでしょう。」


おれたちはそれで十分だよ。」


「しかし人間であれば怪我を負ったとしても教会で回復の奇跡を唱えて貰ったり回復薬で直してもらえますが猫そんな事をしてくれる人はいません。」


「そりゃそうだろ。アレは金ピカ(おかね)がなきゃダメだろ。猫は金ピカ(おかね)なんか持ってないし、興味もないからな。」


「教会の神父のゴニョゴニョ(回復の奇跡)なんていっぱい金ピカ(おかね)が必要なのに過擦り傷すら治らないって子猫でも知ってるぜ。」


猫に小判のことわざ通り、猫はお金になんか興味が無いよな。

しかしロレンツィオ神父、猫にすら回復の奇跡がまっとうに使えないこと知られてるのか。


「それはあの神父が偽物だからです。本当に神を信じればたとえ猫でもちゃんとした回復の奇跡を使えるのです。」


「「「嘘くせ~」」」


あんた達声をハモらせるのが上手ですね。


「そんなこと言っても俺たちゃ猫だぜ、何の神を信じれば良いんだ?人間たちが信じている神を俺たちが信じても神は俺達を助けてくれるのか?」


「いろんな神様がおられると思いますが、僕が信仰をおすすめするのは”好奇心の女神”です。」


「「「「何じゃそりゃ」」」」


「俺は人間の信じる神様を色々知ってるがそんな神様聞いたこともないぜ。姉御はどうだい?」


「あたしも豊穣の女神や太陽神、月の神様は聞いたことあるけど、”好奇心の女神”なんて聞いたことも無いよ。坊や私達を引っ掛けようと言うのかい?」


ああ、やっぱりそうきたか。

そりゃ人間ですら聞いたことのない神様だしうそ臭いよな~しかし俺には(みんな)を信じさせる奥の手がある。

子猫(おれ)は今日戦ってきたのだろう傷を負って毛皮がに血が付いているいる猫に近づき


「今から彼の傷を回復の奇跡で直します。そうすれば猫達(あなたたち)も僕の言うことを信じてくれるでしょう。」


そう言って回復の呪文を唱え始めた。

新興宗教に信者を勧誘する一番の手は奇跡を見せること。

インチキな奇跡でも信じる奴は信じるが、俺が見せるのは本当の奇跡だ。


「聖なる女神よ我に癒しの手を差し伸べたまえ~」


子猫(おれ)の力ある言葉で傷だらけの猫は光に包まれ彼の傷は治っていった。


「お、おぃ本当に俺の傷が治っているぞ」


「「「ええー」」」


TVの通販番組のバックグラウンドの音声並みにハモってるよ。


「おい、ハチ本当に治ったのか見せてみろ。」

「あたいにも見せておくれ」


猫達は俺が回復の奇跡をかけた猫..ハチって名前だな..を取り囲み傷が治っていることを確認する。


「どうでしょうか。これで僕の言うことを信じてくれますか。」


ドヤ顔|(猫にあるのか?)をしている子猫(おれ)に猫達は一斉に頷いた。


「確かに治っているね。あんたの言うことは本当なんだね~。しかし猫で回復の奇跡を使えるなんてあんた見かけによらずすごいんだね~」


カリンがそう言いながら俺に近寄ってスリスリしてくる。

いや、俺生後二ヶ月未満の子猫だし本当は人間なんで惚れないでください。


「もし皆さんが”好奇心の女神”の信者なればこうやって回復の奇跡を唱えることができるようになります。」

本当の唱えれるかはちょっと疑問だがとりあえず嘘も方便ということで~。


「あたいにも使えるのかい?」


カリンの言葉に子猫(おれ)は頷いておく。


「理解ったよ、あたしゃ女神の信者になるよ。」


「「「俺も」」」


ふふふ・・・・どうやらこの村の猫を信者にすることに成功したようだ。

これで50猫の信者ゲットだぜ。

不敵に笑っているつもりだが、子猫の外見では可愛らしく笑っている俺がいた。


思っていたプロットと大分変わってしまいました。猫を信者にする方法変えちゃったけど大丈夫かな~。

しかし猫が人間のために戦っているなんてなんてガ○パレードマーチな状態w


12/6 誤字修正

お読みいただきありがとうございます。

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