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子猫は何かを企む

子猫(おれ)が目を覚ますと外はすでに暗くなっていた。

エーリカ達はまだ帰っていないみたいだ。

俺は好奇心の女神から告げられた状態回復(アレを取り戻す)の条件についてもう一度考えた。


(信者100人準備してミサを行う。しかもドマイナーどころか存在も知られていない神の信者だ。)


子猫(おれ)が神官だから100-1で99人か....どうするかな~。

ねどこからでて床をゴロゴロしながら打開策を考えるが浮かんではこない。

俺は考え事をする時に畳の上をゴロゴロする癖がある。

この世界には畳は無いがやはり考え事をする時にはゴロゴロしたい。

子猫(おれ)がそうやって部屋の中をゴロゴロしながら往復していたらテーブルに立て掛けてあったエーリカの杖に頭をぶつけてしまった。


ミニャっ(いてー)


ひゅーっ、ごん、ドスン。


杖が倒れることでピ○ゴラスイッチな連鎖が始まって本棚から本が一冊が落ちてきた。

エーリカは後片付けが下手なので本はいつもいい加減に本棚に押し込まれる。

何時もならアデリーナがちゃんと片付けるのだが、子猫(おれ)の件でバタバタしていたのでそこまで手が回らなかったらしい。


落ちてきた本を見ると”呪歌についての研究”となっていた。

エーリカはドジっ子な小娘に見えるが、魔法の腕は確かだしこうやって自分が使えない魔法の研究も熱心にやっている。

本棚にはそういった研究の成果が並んでおり、時に参照したり新たに書き込んだりしている。

彼女は魔法に関してはかなりの頑張り屋さんである。

しかし、呪歌って某TRPGだとバードが楽器使って歌うことで発動させてたけど、エーリカは楽器使えるのかね~そう思いつつペラペラと頁を捲って読み始めた。


『えーっと、呪歌は魔力を込めて歌うか楽器を奏でることにより発動する。その効力は歌を聞いているもの全てに及ぶため気をつけること。…………戦の神の神官が歌う戦いの歌はもちろん呪歌であり、吟遊詩人の歌も本人の資質(まりょく)によっては呪歌となる。呪歌の歌詞/メロディはまちまちであり、どうやら歌詞が呪歌の効力に影響しているのではない。要は実現したいことをイメージして魔力を込めた音を発生させることで聞いている者に効果を及ぼすものと思われる。』


呪歌って魔法と発動原理が似ているな。

魔法陣は要らないが魔力を込めた音が必要と。

魔法と一緒でイメージが重要なら子猫(おれ)でも使えそうだな。


『なになに、一般的な呪歌集だって。”ダンスしましょ”、”帰りましょ”....なんか小学校の音楽の教科書みたいな歌が多いな~。あとは”私をみて”って魅了系?』


ペラペラと呪歌集を読んでいく中で俺はとある呪歌に注目した。

その呪歌とあれを組み合わせれば懸案事項が解決できるのではないか?


『この近辺の森と村の条件次第で、うまくすれば俺は信者100人を集めることができるな。』


後は俺の考えが間違っていない事の確認と呪歌の取得が必須条件になる。

思い立ったが吉日、俺は一生懸命呪歌の練習を始めた。

....聞いたこともない歌をアカペラで歌うのって難しいよね。



「ただいま~ヒック。プルート元気になった見たいね~ヒック」


子猫(おれ)が呪歌の練習でみゃーみゃー鳴いていたらエーリカが帰ってきた。

遅くなったためアデリーナは戻ってこず、エーリカは村長宅で夕飯を食べたのか酔っ払っての帰宅である。

子供にお酒を飲ませる村長もダメだなと思ったが、この世界の成人年齢や飲酒可能年齢を知らないことに気づいた。

もう少しこの世界の常識を調べる必要もあるな。

エーリカは子猫(おれ)にお土産としてで川魚の干物をくれた。

酔っぱらいのお土産はあんまりありがたくないものが多いが、干物は今夜の実験に使えそうなのでありがたくいただいておくことにする。


「ヒック、今日はもう寝ちゃうわね~」


エーリカは派手に服を脱ぎ散らすとそのままベットに倒れこんで眠ってしまった。

子猫(おれ)はエーリカが寝込んだのを確認するとそっと窓を開け夜の森に向かった。



「頭いたい~。お水頂戴~」


エーリカは二日酔いで唸っていた。

子猫(おれ)も昨日は徹夜で森にいたのでねどこで寝ている。

昨日の森での実験の成功で俺は懸案事項の解決の目処が立った。

後はエーリカが元気になったら村に連れて行ってもらえば良いので今日はゆっくりするつもりだ。


そんな時すごい勢いて小屋にアデリーナが飛び込んできた。


「子猫ちゃん教会に行きましょう。」


みゃっ?(なに?)


今朝はアデリーナが来なかったのでエーリカと一緒で二日酔いでお休みだと思っていたのだが元気そうだ。

何を焦っているのか村から小屋までを走ってきたらしく息が切れ汗だくである。


「早く早く行きましょう。」


なんか目が血走っている。

すごく怖いんですが。

子猫(おれ)がガタガタ震えているとアデリーナはその姿をみて少し落ち着いた。


にゃーん(どうしたの)


「教会の神父様が子猫ちゃんに全回復の奇跡(リカバリー)を授けてくれるそうなの。ダメ元で朝からお願いしたかいがありました。」


『あれ、女神は近くに居ないって言ってたし、神父は唱えられないと思ってたけど?』


「なので早く行きましょう。エーリカ様、子猫ちゃん連れて行きますね。」


「………いってらっしゃい~」


エーリカの返事は二日酔いのためか力がない。

使い魔が連れさらわれそうなのにそれで良いのか。

まあ、俺も村には行きたかったので渡りに船であるのだが。


「エーリカ様の了解も得られたことだし、早速行きましょう。」


アデリーナが手をワキワキさせながら子猫(おれ)に近寄る。

なんかすごく貞操の危機を感じます。

まあアレが無いから貞操の危機もあるわけ無いけどね...orz。




子猫(おれ)はアデリーナに抱えられ村への小道を走っている。

この状況ではアデリーナも過激なお触りもしてこないし、子猫の体では抵抗は無駄なのでおとなしくしている。自分で歩くより楽だしね。


5分ほど林の中を走ると風景が(むぎもどき)畑に変わった。

そろそろ収穫時期なのか黄金色に輝いている。

二人が食べているのもパンだしこの世界では麦が主食なのかな。日本人としてはお米と大豆もあると嬉しんだが。


お米は当然ご飯になるし、大豆も味噌と醤油を作るのに必要だ。

異世界で食文化チートをするのはお約束だろ。

まあ、子猫(おれ)では食べれそうなのが猫まんましか無いのだが....かつお節あるかな~。


畑で作業している村人がアデリーナに声を掛けてくが、彼女は適当に挨拶を返しながら走り続ける。

小屋からずっと走り続けているし、行きも走ってきたのだろうが走るペースが全然落ちない。

俺なら最初の3分で走るのをやめる自信があるぞ。

アデリーナは才女だけじゃなく体力お化けでもあることを発見しました。


小麦畑を20分ほど走るとようやく村の家々が見えてくる。

家はレンガ造りやらログハウス風やら色々あるがどれも原色バリバリなカラーリングであり日本人の俺にはついていけないセンスのものが多い。

 ”ジム・ホーキンスの村にようこそ”

村の入り口にはそんな看板が立っていた。

村の名前らしいがこの世界では村を作った人が名前をつけていいのだろう。

俺はとりあえずジム村と呼ぶことにした。

あっという間にビ○ザムに溶かされそうな村名だ。


村に入るとアデリーナは歩き始め、村の中心にある背の高い建物に向かっている。

どうやらあの建物が教会らしい。

勇者が死んだらあそこに運び込まれるだろうかなどと下らない想像をしている内に建物の前にたどり着いてしまった。


ふにゃ?(これが教会?)


子猫(おれ)は目の前の建物に絶句していた。

日本人の俺の感覚では教会=白なのだが、この世界ではちょっと違うらしい。

教会は石を積み上げて作られたかなり堅固な建物なのだがあちこちに植物の彫刻が彫られており、それぞれに色が塗られているのだ。

インドのお寺などで壁面いっぱいに彫刻されているものがあるが、あれをすべて植物に置き換えしかも色がアロハシャツよろしく派手に塗られている感じである。


「神父様~おいでますか。子猫を連れてきました。」


そんな教会の外観にボー然としている子猫(おれ)を連れアデリーナは教会に入っていく。

外見に違わず中も色とりどりの彫刻でうめつくされており目がチカチカする。

こんな神聖さのかけらも無い教会は初めてだ。

俺は出てきた神父がアロハとか着てても驚かない自信があるぞ。


「アデリーナさん、教会ではお静かにお願いします。」


「すいません、神父様」


呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん....いやまさかハ○ション大魔王が出てくるとは思いませんでした。

さすがに服装は大魔王と一緒ではなく清潔感の漂う白い上下に帽子でした。

しかし赤い鼻にあの髭、太った体に細い手足、どう見てもハ○ション大魔王だよ。


「この子が問題の子猫ですか。」


「そうです。ロレンツィオ神父様どうかこの子に全回復の奇跡(リカバリー)をお願いできませんでしょうか。」


「ふーむ、まあ本来猫などに奇跡はもったいなのですが村長の孫娘の頼みを無碍に断ることも出来ません。」


なんか胡散臭い神父だな。

アデリーナをエロい目で見てるし偉く高飛車だよ。


「お願いします。少ないのですがこれを…」


アデリーナは懐から巾着袋を取り出す。

チャラチャラと音がするところからお金が入っているのだろう。

ファンタジー定番の神殿での奇跡にの代金だろう。

俺も昔棒RPGでカ○ト寺院にお世話になったものだ。


「おお、こんなものは私は要求してませんぞ、しかし神殿への寄付ということであればありがたく頂いておきます。」


そんなことを言いながら神父は袋を引ったくるように取ると腰に下げたポシェットと言うかがま口にしまった。


「では全回復の奇跡を授けましょう。」


ロレンツィオ神父は俺に手を向けぐるぐる回しながら神聖呪文を唱えた。

呪文を唱える仕草までハ○ション大魔王そっくりだ。


「偉大なる神…よ…我に癒しの手を与え給え~全回復(リカバリー).....(ヒール)


神父はやっぱり全回復の奇跡(リカバリー)を唱えられないようでこっそりヒールって言っている。

全回復の奇跡(リカバリー)を出来ると言ってアデリーナを騙したのだろう。

こんな悪どい神父が回復の奇跡(ヒール)を発動できのかと思ったが、薄い光が体を包みなんとなく良い気分になった。

子猫(おれ)が唱えた時よりかなり効果は弱いが回復の奇跡(ヒール)は発動している。

しかしこれは全回復の奇跡(リカバリー)じゃない、回復の奇跡(ヒール)だから当然子猫おれのアレは戻らない。


「どう猫ちゃん治った?」


アデリーナが俺を抱きかかえ確認する。

脇に手を差し込まれダラーンとなった状態でまじまじと見られると恥ずかしいです。


みゃーっ(いやーん)


恥ずかしくなったのでジタバタしてるとアデリーナが泣き出して俺をギュッと抱きしめた。


「ごめんね子猫ちゃん。治せなくてごめんね。」


泣きじゃくるアデリーナを見て子猫(おれ)はに申し訳ない気持ちになった。

この子(アデリーナ)はこんなにも俺を心配してくれてたのか。

たまには子猫(おれ)を撫でさせてやっても良いだろう。


「ふむ、治りませんか。これは貴方の信心が足りない為です。もっと神へお布施をお願いします。」


なー(おいおい)


治せないのはアデリーナのせいではなく神父の信仰心が足りず、全回復の奇跡(リカバリー)を使えないからだろう。

それをお布施のせいにするとは、アデリーナが必死で貯めたお金を貰っておいて回復を全回復と偽るこの神父に子猫(おれ)は詐欺神父の言い草にものすごく腹が立ってきた。


みゃーみゃー(この似非神父め) ふぅー(えぃっ)


子猫(おれ)はアデリーナの抱擁から抜け出すと神父の顔に飛びかかった。

とりあえず乱れ引っ掻きにゃ。

神父の顔に縦書と横書きと斜め書きを行ってから俺は教会の外にかけ出した。


「いてー。この罰当たりな猫め~」


「子猫ちゃん、まってー。」


アデリーナと神父が追いかけてくる。

調度良いこのまま村を回って森と同じことが出来るか調べてしまおう。

運動不足の神父はすぐに追いかけてこなくなり、アデリーナも家の垣根をくぐり抜けたりしているうちに子猫(おれ)を見失った。


俺は三時間ほどかけてジム村を調べた後、アデリーナを探した。

アデリーナは村の中央の創立者ジムさんの石像(どう見ても地蔵だろ)のそばでへたり込んでいた。


みゃーん(アデリーナごめんね~)


子猫(おれ)はアデリーナに近寄ってスリスリしてあげた。


「子猫ちゃん戻ってきてくれたの?治らなかったから私嫌われたのかと思って....」


またアデリーナが泣きそうになるので子猫(おれ)は大丈夫だよと彼女の顔を舐めてあげた。

ああ、俺は初キッスの前に初舐めしちゃったよ...。


「許してくれるの?ありがとう子猫ちゃん。」


アデリーナが落ち着いてたので袖を咥えて帰りたいと意思表示する。


「そうね、もう帰りましょうか。」


アデリーナの神父への愚痴を聞きながら一人と一匹は帰途に着いた。


「ロレンツィオ神父ってねしばらく前にこちらに来られたのだけどすごくがめついの。お布施とかすごく要求するのよ。」


「それに村の家をいろんな色に塗らせるの。塗らないと神罰で畑の作物の出来が悪くなるとか言うからみんなしょうがなく家を塗っているのよ。」


「豊穣の女神様がそんなことで農作物の出来を悪くするはず無いのにね~」


俺は彼女(アデリーナ)の愚痴を聞いてやはりロレンツィオ神父は生臭坊主で典型的に金にがめつい奴と理解した。

まあ堕落した聖職者の行き着く先だな。

豊穣の女神というからにはかなり信者も多く、農民からのお布施も多いからそういった奴が神父とかになることもあるのだろう。

その点好奇心の女神は信者も少ないしお布施もあるわけないから堕落しないよ....orz。

アデリーナもかなりあの神父に不信感を持っているらしく愚痴はエーリカの小屋に辿り着くまで延々と続いた。



深夜、エーリカが寝入ったのを確認すると子猫(おれ)は小屋を抜け出した。

これから信者を集めるためにあることをするのだ。

人目、特にエーリカなどには知られたくないのでこの作業は深夜に俺一人で行う。

うまく行けば一週間で俺はアレを取り戻せるはずだ。



~ 一週間後の深夜


森のなかにこっそり建てられた祠の前で俺は集まった信者に対し今からミサを行う事を告げた。

祠は子猫(おれ)と信者がこの一週間で建てた好奇心の女神の祠である。

子猫(おれ)はお願いのポーズをとって女神に念じた。


『女神よ信者を規定の数集めたぞ。今からミサを行うから奇跡を起こす準備をしておけ』


『えっ?もう信者が集まったのですか?どうやって...100人以上は必要なんですが本当に集まったのですか?』


すぐさま女神から返事が帰ってくる。

子猫(おれ)が短期間で信者を集めたことをすごく怪しんでいる。


『ちゃんと信者は集めた。お前が言ったとおり100()いるぞ。』


『100匹? って全部猫や犬じゃないですか。』


そう子猫(おれ)は信者を集めた。

しかし信者には人は一人もいない。

全て動物で集めたのだ。


子猫(おれ)が神官をやれるぐらいだからこいつらも信者になるはずだろ?』


『そんな屁理屈を...このお馬鹿~~~~』


女神の雄叫びが頭に響くが俺はこれで奇跡を起こせることを確信している。

今から猫と犬によるミサを始めるのだ。


村を探索する時間が短すぎたので修正しました。

12/02 話の整合性がとれてない箇所が会ったの修正

12/08 話の整合性がとれてない箇所が会ったの修正

   猿はいらなかったよorz 考えなしに書くものではありませんでしたm(_ _)m


お読みいただきありがとうございます。

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