女子寮と入学手続き
なんとか書き上げました。活動報告にも書きましたが、別メディアでこの作品を使ってくれる事になりました。
お知らせできるようになったらまた活動報告で報告します。
そのため今後少し文字数が減ったり、更新が遅れたりするかもしれません。
メグはクラリッサとリュリュを魔術学校の女子寮に連れて行く。
女子寮は学校内の敷地のど真ん中に有った。
「クラリッサちゃん、リュリュさん、あれが女子寮よ。」
「あれが女子寮ですか?」
「ふぁ~、大っきな建物だね。」
「みゃー」
子猫の目の前には高さ三メートルの城壁に囲まれた、砦か脱獄不能の刑務所かという様な建物が建っていた。クラリサもリュリュも目を丸くして驚いている。
「ふふ、そうよ。だってこの学校で女子寮に入っているのは殆ど貴族の子女なのよ。そんな女子寮に忍び込もうとする不埒な奴らから身を守るにはこれぐらいの警備が必要なのよ。」
城壁の四隅にはガーゴイルのような石像があるが、おそらく本物なのだろう。門も分厚い木の板でできており、まさに難攻不落の砦のようであった。
門番は女性の兵士だったが、夜にはそれもストーンゴーレムに入れ替わるそうだ。
門を抜けると、周りを城壁で囲っている無聊さを慰めるための広い庭園があり、噴水や花壇が多数あった。女子寮は二階建てで、部屋数は三十部屋。食事を無償提供する食堂、いやカフェテリアがあり、なんと贅沢な事に大浴場もあった。図書館や遊戯室(と言っても談話するだけでゲームなどは無い)などを案内してくれた。
そして最後に二階の奥の部屋…そこがリュリュ達の部屋になるのだが…に俺達は案内された。
「ここがあなた達のお部屋です。前に居た人の趣味で家具が揃ってますが、気に入らなければあなた達が入るまでには処分させます。」
二人部屋は八畳ほどの広さで、天蓋付きの豪華なベッドが置かれていた。机も二つあり、クローゼットや本棚など生活するための物が殆ど揃っていた。
「問題無し。このままで大丈夫。」
「わ~、ふかふかだね。」
クラリッサはメグに部屋の模様替えは必要ないと伝える。リュリュは早速ベットに寝転がって感触を楽しんでいた。
「あらそう? では、案内も終わりましたし、二人共カフェテリアでお茶でもどうかしら。」
メグが二人をお茶に誘った。
「プルートも一緒で良いのなら…。」
クラリッサは子猫が入れるならと条件を付けたが、
「大丈夫です。使い魔を持っている人も居ますから、寮もカフェテリアも使い魔は大丈夫です。…その子猫ですが、貴方の使い魔なのですか。」
「違う、プルートは私の恋人。」
「リュリュは猫さんの付き人なんだよ。」
「えっ? …変わった方々ですね。さすがトビアス校長先生が推薦入学させた方達です。」
メグは頭を傾げていたが、トビアスが入学させた生徒という事で納得していた。
◇
女子寮のカフェテリアは、まさにお嬢様の巣窟であった。授業中だというのにドレスを着込んだ学生たちが、優雅にお茶を楽しんでいた。子猫は二人に裕福な魔法使いとしての服装をさせたつもりだったが、ここではドレスが必要なのかもしれないと子猫は頭を抱えていた。
メグが注文したお茶を飲みながら二人は周りをキョロキョロと見ましていた。
「綺麗なドレスだね~。」
リュリュはお嬢様が着ているドレスをうっとりと眺めていた。
「ええ、学校内は規則でマントを着用して居なければならないのですが、寮の中ぐらいは自由にしてもらわないとね。」
メグも今は灰色のローブを着ているが、寮内ではドレスに着替えるのだろう。
(困ったな~。ドレスはさすがに準備するのが大変だぞ。どうすれば良いかな~。)
子猫はカフェテリア内を見回し、クラリッサやリュリュが入手して着れそうなお嬢様達の服装をチェックした。
(ん!)
そこにはクラリッサぐらいの年頃の少女が、機能的かつ簡素な小学校の制服のような服を着て椅子に座っていた。
「みゃ~」
子猫はクラリッサの注意をその少女に向けた。
「彼女は学生?」
「ああ、あの娘は魔術学校に勉強を習いに来ている子ですね。ここでは魔法以外の学問も習えますから、裕福な平民の子供たちもいるのですよ。このカフェテリアには向かいの席の方が連れてきたんでしょうね。ほらとても愛らしい女の子でしょ。」
メグはなぜかうっとりと二人を眺めていた。
(駄目だ、こいつらもう手遅れだ。)
子猫は頭を抱えてメグの、いや女子学生の嗜好にダメ出ししたくなった。
「あの制服は魔術学校の物なの?」
「ええ、そうだったと思います。」
(制服なら良いかな。後で買える所をトビアスに聞いておこう。)
クラリッサは普段服として制服を購入することにして、リュリュのほうはメイド服を着せることに決めた。カフェテリアではお嬢様に付き従う質素なメイド服の女性たちが居たので、付き人扱いのリュリュにも質素なメイド服を着せておけば良いと思ったのだ。
一時間ほどお茶をした後、メグと俺達はトビアスの書斎に戻った。
何故かケイロがぐったりと疲れた感じソファーに座っていたが。
「どうしたのケイロお兄ちゃん?」
「リュリュ、早く戻ってきれくれよ。ここは僕には居心地が悪すぎる。」
魔法使いでも貴族でも無い単なる付き添いのケイロは、周りが貴族のお嬢様だらけのトビアスの部屋に放置されて精神的に消耗していた。
「おお、寮はどうじゃった?」
「問題ない。何時から入れるの?」
「入学金を払ってくれるなら直ぐに手続きするが…ふむ、今日からと言いたいが、明日からにしてくれんかの。」
「判った。」
クラリッサが金貨二千枚の割符をトビアスに手渡すと、それで入学の了解をもらうことができた。既に準備してあったのか入学の証明書を手渡してくれた。
「これでお前さんとその使い魔は魔術学校の生徒じゃ。それにその娘にはこれを渡しておこう。」
リュリュには学校内で生徒を補助する侍女としての証明書が渡された。
「タグはないの?」
羊皮紙の証明書を常に持つのは面倒である。メグは寮に入るときに冒険者の持つタグのようなものを見せていたのをクラリッサは覚えていた。
「タグは明日まで待ってくれ。そうじゃの、明日の朝には出来ておるはずだ。授業の説明もあるし、明日の午前中には準備しておくから適当な時間にこっちに来てくれ。そうじゃな、儂がいない時はドロシーか先ほどのメグに言えば貰えるようにしておく。」
ようやく俺達は明日から学校に入ることが決まり、今日はそれで学校をお暇する事になった。
「明日から学校だね。楽しみ~。」
「そうだね。リュリュも頑張って勉強しよう。」
「うん。」
本当は子猫が学生なのだが、侍女も授業の間邪魔さえしなければ教室にいても良いらしい。その制度を逆に利用して子猫は、リュリュに授業を受けさせるつもりであった。
「今からさっきの制服とリュリュのメイド服を買いに行こう。」
子猫はクラリッサの耳元でささやいて、寮で着る服を買いに行くことを提案した。
クラリッサは頷くと、
「今から服を買いに行く。リュリュの分も必要。」
とリュリュとケイロの二人に告げた。
「えーっ、まだ服が必要なのかい?」
予想通りケイロが文句を言ってきたが、リュリュを寮で浮かないようにするためにメイド服を着せておきたい。いや子猫が着せたいわけじゃなく、彼女のためなのだ。
嫌がるケイロを引っ張って俺達は服を買いに向かうのであった。
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