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ダンジョン攻略って楽しいよね

迷宮探索編の続きです。

短めです。

出発まで後二日、俺達は冒険者ギルドで地下迷宮(ダンジョン)絡みの依頼をこなしつつ迷宮に潜り続けていた。

依頼をこなすことで俺とクラリッサのランクも初級の上まで上がっている。

数日で初級の下から上までランクを上げた冒険者というのはかなり珍しいのかギルドでも注目されているが、アマネがサポートに付いているからじゃないかとやっかみ混じりの目で見られることも多い。

俺としては地下迷宮(ダンジョン)に関してはアマネは足手まとい以外の何物でも無いと言いたいのだが、多分信じてもらえないだろう。





今、俺たちは地下六階層で戦っていた。


「クラリッサ、もっと腰を入れて叩かないとこいつらは倒せないよ」


アマネの叱咤をうけ、クラリッサがスタッフで迷宮狼(ダンジョンウルフ)を殴りつける。

今日は子猫(おれ)が後衛でクラリッサが前衛というフォーメーションでパーティを組んで戦っていた。


これは俺が魔法で人間に変身していられる時間が不規則なので、変身が解けた時にクラリッサが前衛で子猫(おれ)が後衛になるという状況でのパーティとしての連携の確認をするためである。

後、時々子猫の状態で戦わないと俺が感覚を忘れてしまうのでそれを解消するためでもある。



今いる六階層は地下のはずなのに天井が光りとても明るく、植物が生い茂り動物系や植物系の魔獣が多数出現するという変わった階層である。


クラリッサが得意とする火属性の魔法はこういった植物の多いところで使うのは自分たちが火に囲まれてしまう危険を伴う。

子猫(おれ)眠りの粉魔法(スリープ・パウダー)など状態異常系の魔法がどちらかと言えば得意なので、今回のフォーメーション変更は当たりであった。

複数の魔獣が出てきても眠りの粉魔法(スリープ・パウダー)で眠らせてしまえば囲まれる心配が無い。

最もクラリッサもアマネも敵の攻撃を回避するスキルが高く、囲まれない位置取りができているので子猫(おれ)のサポートもいらないくらいであるのだが...。


彼女達は六匹の迷宮狼(ダンジョンウルフ)を十分とかからず倒してしまった。

迷宮狼(ダンジョンウルフ)死骸は後で毛皮を剥ぎ取るためポケット(無限のポケット)にしまう。





にゃー(休憩しようよ)


六階層に降りてきてから連戦だったためクラリッサの息が切れ始めているのに気付き、休憩するこにする。


手近な木の根本にシートを引きお茶やお弁当を出して少し早めの昼食を取ることにした。


「子猫ちゃん、はいアーンして」


アマネが俺に鳥の串焼きを差し出す。


「プルート、そっちは脂が多すぎ、こっちを食べて」


クラリッサはタコさんウインナーを俺に差し出す。


此処が迷宮ではなく、俺が人間であればリア充氏ねと周りから言われるような光景だ。

今までの経験から此処で片方を先に食べると喧嘩になるのが判っているので、子猫(おれ)は一度に両方を食べる。

子猫の口には多いすぎる量だが、意地で咀嚼し飲み込むことにする。

二人が次々に子猫(おれ)にあ~んしてくるが、そんなに食べることができるわけもなく子猫(おれ)は食い過ぎで俺はダウンしてしまった。


(食べ過ぎって状態異常だったんだな。)


などと考えながら状態回復魔法(レストア)を自分にかけて回復する。

食事も含め三十分程の休憩が終わると俺達は再び迷宮の探索に戻った。





今回はフォーメーションの確認の他にギルドで魔獣の討伐依頼を受けているため、その魔獣も探さなければならない。

魔獣の名前はデッドマンイーター。

名前の通り主に死体を食べる植物系の魔獣である。

その根の部分が今回の依頼の討伐部位だ。

この魔獣が地下六階層に出没すると聞いたので依頼を受けたのだがなかなか現れてくれない。


「他の魔獣は出るのに肝心の奴が出ないね。」


「狙った魔獣が出ないという法則だね。」


みゃーん(マーフィーの法則かよ)


「?」


「一度別な階層に行ってから戻ってくると出るって話もあるよ。」


などと話をしているうちに新たな魔獣が一匹現れる。

一匹の魔中なぞこのパーティの敵では無いはずだったが


「ゲッ、アシッド・スライムかよ」


襲ってきた魔獣を見てアマネが叫び声をあげる。


「どうしたの?」「にゃっ?(強敵?)


「あいつを斬りつけると刀が溶けちゃうんだよ。頼むから魔法で何とかしてくれ。」


直径一メートルぐらいのぶよぶよとした緑色のグミのようなアシッド・スライムはコロコロと転がり突進してきた。


アマネが小太刀を鞘に収め棍棒のようにして殴りつけるが、スライム系は中心にある核の部分を破壊しないと倒せない。

クラリッサもスタッフで牽制してくれている。


その隙に俺は不可視の矢インビジブル・ボルトを唱えスライムに放った。


ぷよん


不可視の矢インビジブル・ボルトはスライムの表面をへこませたが貫通することが出来なかった。


(燃やした方が早いんだろうけど、木の多いここで火の魔法は使えない。貫通力なら氷の魔法か)


子猫(おれ)は最近覚えた氷の矢(アイス・アロー)を唱えた。

呪文の詠唱とともに子猫(おれ)の上に全長五十センチぐらいの氷の矢が現れ、勢い良くスライムに飛んで行く。

硬皮鎧(ハードレザーアーマー)程度なら貫く威力がある氷の矢はスライムに突き刺さりその核を刺し貫いた。

核を貫かれたアシッド・スライムは空気を失ったビーチボールの様に潰れていく。


「ナイス、子猫ちゃん」


「流石プルート」


彼女達が子猫(おれ)に称賛を浴びせてくる後ろで突然スライムが膨張し始める。


にゃぅ(危ない)


子猫(おれ)は警告の声をあげたが間に合わずアシッド・スライムは爆発して酸性の体液が飛び散りクラリッサとアマネは背中からその体液を大量に浴びてしまった。


「あちち」「あついー」


液体をかぶって悲鳴を上げて転げまわる二人に子猫(おれ)は慌てて近づく。

酸を浴びたことによる火傷はかなり危険で早急に手当しないとショック死の恐れもある。

子猫(おれ)が神聖魔法を使えるのをアマネに知られてしまうが、火傷で二人の肌に取り返しのつかない傷が残ってしまうよりましだ。


神聖魔法を唱えようとした時


「熱かったけど? 火傷してない?」


「うん、ちょっとびっくりした。」


二人は何事も無く起き上がった。

どうやらアシッド・スライムの酸は二人に火傷を負わせるほど強くはなかったみたいだ。


みゃーみゃー(大丈夫でよかった)...みゃっ(ゲッ)!」


安心して二人に声をかけた子猫(おれ)だが、起き上がった二人の革鎧が背中からお尻の辺りまで綺麗に無くなっていたのを見てしまった。


「どうしたのプルート?...キャァー」


クラリッサが子猫(おれ)の叫びに驚き、自分の姿をみて悲鳴をしゃがみこんでしまった。


「こっち見るな~」


アマネは大慌てで近くの茂みに駆け込む。


「プルートのエッチ」


クラリッサが俺を非難がましい目で見てくるが、これは不可抗力である。

普段子猫(おれ)の前で平気で着替えているくせ、にこんな時には恥ずかしがるなんておかしいだろうと思うが、半裸状態ので彼女達はかなりエッチな格好だったので俺はガン見してしまった。



クラリッサもアマネも着ていた物の背面がほとんど溶けてしまっていたので、鎧も下着も全て破棄することになってしまった。

クラリッサには換えの服として体操着とセーラー服を着てもらい、アマネには合う服がなかったためシーツを切り裂いてポンチョのような簡易の服を身に着けてもらった。


不思議なことにアシッド・スライムの体液は服だけ溶かしてアマネの小太刀やお金、髪の毛や体には一切被害が無かった。

アマネが言うには「魔獣の中には突然変異して変な性質を持つ物がいるらしく、今回のアシッド・スライムもそんな一匹だったのでは」ということだった。


後、アシッド・スライムが時限爆弾の様に破裂したのは単純に化学の問題だ。

硫酸などに水を入れると量や速度を間違えると爆発する。

アシッド・スライムに突き刺さった氷の矢も溶ければ水だ。

氷の量が十分大きいなら爆発しないのだが、スライムの体積に比べ小さかったため氷が溶けてから反応して爆発したのだ。



クラリッサはまだしもアマネは裸も同然の格好になってしまったので迷宮の探索をこれで終えて帰ることにした。

その帰り道に依頼のターゲットであるデッドマンイーターが現れるのは法則とおりであろう。

アシッド・スライム戦での鬱憤を晴らすかのようにアマネがデッドマンイーターを切り刻んでいるがポンチョしかまとっていない格好で動くので眼福...もとい目の毒である。

ポンチョの隙間から覗く白い肌も扇情的なのだが、一番問題なのは普段鎧に押さえつけられている胸が縦横無尽に動くことである。

子猫(おれ)はなるべく見ないようにしようとするが自然と目が吸い寄せられてしまうのは男としてしょうが無いことだろう。

お陰で帰り道はクラリッサの期限が悪く、子猫(おれ)は彼女に抱きかかえられるというより拘束されて街まで帰ることになってしまった。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

お気に召しましたら、ご感想・お気に入りご登録・ご評価をいただけると幸いです。誤字脱字などのご指摘も随時受付中です。


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