旅は異なもの味なもの
すいません、筆が進まずかなり短めです。
エーリカ、クラリッサ、子猫一行は果てしなく続く荒野をとぼとぼと歩き続ける。
ジム村をでて3時間ほど麦畑が続き、それが途切れたと思ったら岩だらけの荒野が広がっていた。
馬車の轍の残るかろうじて道と呼べそうな物が続くだけの荒野.....俺は半日も歩くと飽きました。
エーリカによると隣の村...ネム村という名前ですが...までは徒歩で二日あまりかかるとのことです。
この道も4ヶ月に一回の行商人の馬車以外はほぼ往来が無いとのこと。
馬とかを使えば半日ほどでネム村までたどり着けますが、貧乏な開拓村であるジム村では馬は貴重品であり買ったり借りたりすることは出来ない。
よってネム村までは行商人の馬車に乗せてもらうか俺達のように徒歩で移動することになる。
「あーっホント岩ばかりでつまんないわね~。」
荒野に入るとエーリカが歩くのに飽きたのか時々愚痴るようになった。
いや、クラリッサとお喋りしながら歩いていたんだけど喋るネタが尽きたら皆無口になって黙々と歩き続けるだけになるんだよね。
「行商人が来るのを待てばよかったかしら。」
「なぜそうしなかったんですか?」
「薬草の鮮度の問題で行商人が来る頃だと遅すぎるのよ。早く街につかないと売値が下がっちゃうからね。」
「....」
エーリカの愚痴とそれに続くクラリッサとの会話が繰り返され、黙々と歩き続ける。
会話にも参加できない俺はいつの間にかクラリッサに抱っこされて運ばれていた。
そんな子猫をエーリカにジト目で睨んだが、俺はひ弱な子猫のふりをしてとぼけることにする。
◇
どうやら抱っこで運ばれている間に俺は寝てしまったらしく、気が付くと辺りは薄暗くなっており、二人は野宿の準備をしている。
クラリッサは鞄から取り出した堅パンと壺入りのスープを温め、厚切りにしたハムを火で炙ったハムステーキで夕食を作っていた。
辺りにハムステーキのいい香りがする頃には日は暗くなっていた。
子猫は食事なしでも大丈夫なのだがクラリッサからスープとハムステーキを分けてもらい食べている。
この世界のハムは地球のハムと違い塩味がキツく猫の舌にはあまり合わない。
俺としてはご飯を食べたいのだがこの世界にお米があるのだろうか。
街に行ったら色々探してみようと心にメモっておいた。
食事の後二人は火を囲んで明日の予定などを話している。
そろそろ寝ようかということで二人は毛布に包まるのだが
(あれ?見張りって要らないの。)
俺は野宿で定番の見張りを立てないことに疑問を感じた。
少女二人と子猫のどう見てもカモネギ状態の旅人を野盗や野犬、魔獣が狙わないわけが無いと思うのだがエーリカは気にしていないみたいだ。
子猫は不安気な顔で少し鳴いてクラリッサを見上げた。
「エーリカさん、このまま野宿してもこの辺りは大丈夫なのでしょうか?」
俺の意を組んでくれたのかエーリカに尋ねてくれる。
「んーと、この辺りだと野犬が出るぐらいかな。野盗はほとんど片付けちゃったし後数年は現れないと思うよ。」
エーリカが不穏な返事を返す。
”片付けちゃったし”ってエーリカさん、貴方が某盗賊キラーの魔法少女の如く野盗を片付けちゃったのでしょうか?
確かにエーリカの魔法の実力があれば野盗程度は簡単に退治できそうな気がするが、いつものほほんとしている彼女が野盗を退治している姿は俺には想像できなかった。
まあエーリカの野盗退治は置いておくとして、野犬が出るなら見張りが必要じゃないだろうか。
「野犬がでるなら見張りは必要ですね。」
「うーん、いらないと思うけど念の為に見張りを立てましょうか。...じゃ、プルートお願いね。」
「みゃっ」
エーリカが子猫に見張りの役目を振ってきたのでびっくりして鳴いてしまった。
「だってあんたずっと抱っこされて寝てたでしょ。これぐらいやってちょうだいね。」
確かにずっとクラリッサに抱っこされ寝ていた俺には返す言葉もない。
しぶしぶ頷いて了解の意をエーリカに返す。
使い魔だしご主人様のの命令には従っておこう。
「一人で見張りなんてプルートが可哀想じゃ...」
「いーの、いーの。使い魔は基本寝なくても大丈夫だから。」
「そういう意味じゃないのですが。」
「みゃみゃ~ん」
クラリッサが俺の見張りを心配してくれるが、心配御無用と胸を叩く。
この中では唯一の男(?)だし、野犬程度なら魔法を使えばなんとかできるだろう。
心配気なクラリッサを説得してその夜は子猫一人で見張りをすることになった。
二人は毛布にくるまると疲れていたのかあっという間に寝てしまった。
明日も一日こんな荒野を歩き続けるのならしっかりとした休息が必要だろう。
俺は二人の眠りを妨げることが無いようにしっかり見張りをするだけた。
◇
夜も更け、そろそろ深夜と呼べる時間帯、子猫は火の番をしながら見張りをしていた。
時々遠くで野犬(狼?)の遠吠えが聞こえるがこっちには近づいては来ない。
焚き火に薪をくべる子猫ってすごく怪しい光景だと思うが人気のない荒野では誰も見ていないから気にしてもしょうがない。
二人はグッスリ寝ているし、何も異常がないので俺はアントンが用意してくれた装備を今確認することにした。
ポケットから最初に俺の装備を取り出してみる。
子猫にあう鎧ということでZ○IDSっぽい物を期待していたのだが、えらく小さい箱に入っている。
箱を振ってみたが金属じゃなく布っぽい感触だった。
開けてみると黒い厚手の記事で作られた布の服が入っていた。
何所かで見たような服であったが、とりあえずエーリカ達が眠る岩の反対側に回って試着する。
「なんじゃこりゃー。」
夜の静寂に子猫の絶叫が響き渡る。
アントンが俺に作ってくれたのは某所では最強の戦闘服と言われる学ランであった。
(子猫がこれを着たら親父達の世代に流行ったな○猫じゃないのか?)
この学ラン普通の学生服じゃなく短ランとボンタン仕様であり、ハチマキとサングラスまで同梱されていた。
俺はアントンが何所からこのネタを引っ張ってきたのか洞窟に戻って小一時間問い詰めたくなった。
「もしかしてクラリッサの装備も....」
恐る恐るクラリッサの装備を取り出してみる。
「....」
出てきたのは体操着とセーラ服のセットである。
体操着は胸の所にクラリッサと名前入りであり下はハーフパンツではなくブルマーであった。
セーラー服も襟のところに三本線が丁寧に入っている。
「アントン、お前は何考えとんのじゃー」
再度、夜の静寂に子猫の絶叫が響き渡る。
箱の下の方にはアントンからのメッセージが書かれた羊皮紙が入っていた。
『坊主へ、頼まれていた装備一式を送ったのじゃ。素材はミスリルを食べて繭を作る蟲からとった特殊な繊維なので防御力は折り紙つきじゃ。この奇抜に見えるデザインは作っている時に儂の頭にピッピッと来たイメージを形にしてみたのじゃが、なぜこんな形にしてしまったのか儂にもよく判らんのじゃ。じゃが、このデザインにすることで儂が考えていた形より数段上の防御力を付加することが出来たので我慢して欲しいのじゃ。』
これを読んで俺には誰がアントンにこのデザインを送ったかなんとなく理解った。
(好奇心の女神め~アントンに変な電波送りやがったな。)
デザインがアレだがアントン謂わく性能は良いらしいし、試さないのはもったいないので子猫は全装備を一度全て装着してみた。
サングラスは光量を自動的に調整できるのか夜なのに暗視ゴーグルよろしく暗闇を明るく見渡せる。
人間が使うサングラスそのものの構造なのに猫の顔にちゃんと装着できるすぐれものだ。
サングラスは顔をかなり隠すので何かあった時に正体がばれないように変装に使えそうだと心に止めておく。
学ランの方は背中には穴が開いており魔法の手を問題なく使える様になっていた。
学ランのポケットはお腹のポケットと連動しているらしく同じように物を取り出せる。
あと、この学ランを着ていると後ろ足で立って二足歩行でバランスが取りやすいことにも気がついた。
(二足で立って歩いてしまうと本当に”○め猫”だな。)
結論としてデザイン以外はすごく考えられて作らており、俺としては文句のつけようが無い装備だ。
こんなものが必要となる状況にはそうそうならないと思うが、早着替えの練習はして置くかなと見張りの間着替える練習をした。
おかげで明け方頃には30秒ほどでに着替える事ができるようになってしまった。
◇
翌朝、子猫は太陽が明るくなり始める頃に二人を起こした。
クラリッサは俺がほっぺをフニフニするとすぐに目を覚ましてくれたが、エーリカはなかなか起きてくれなかったので鼻の辺りを爪でツンツンしたら悲鳴と共に飛び起きた。
いや、その後すごく怒られました。
昨日の焚き火の残り火でクラリッサがスープを温め、堅パンとスープの簡単な朝食を取る。
子猫はクラリッサにハムを少し切ってもらいスープに浮かべて食事はおしまいだ。
こんな食事内容だと猫としては塩分摂り過ぎな気がするので次の村ではクラリッサに減塩メニューの食事を準備してもう事にしよう。
食事を終え野宿の後始末をして俺達は再び荒野を歩き始めた。
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「あーっホント荒野ばかりでつまんないわね~。」
しばらくすると昨日と同じくエーリカが愚痴るのであった。
旅の二日目、午前中は野犬が何回か襲ってきた。
近づいた途端エーリカが火炎弾を目の前で炸裂させるので野犬はキャンキャン鳴きながら逃げていく。
野犬を火炎弾で追い払うのは魔力がもったいない気がするが、野犬も殺さずに追い払っているだけであり、エーリカもストレス発散できるらしく愚痴の回数が減っていく。
(攻撃魔法でストレス発散ってホント某盗賊キラーとかぶるよな。)
お昼ごろには岩だらけの荒野を抜け俺達はネム村の側の岩山に差し掛かった。
道も山道となり結構急な上り坂となっている。
さすがにクラリッサもへばったのか息が荒いので、俺も降りて自分で歩くことにする。
エーリカはまだまだ元気いっぱいと言った感じで山道を登っていく。
「エーリカさんてすごく旅慣れてますよね。」
「そーだね。村や街を渡り歩いてるからかな。」
俺にはそれだけでもないような気がするがクラリッサはそれで納得したようだ。
「あの峠を越えたら村が見えてくると思うわ~。後は下りになるから楽だよ~」
先に進むエーリカがそう言って二百メートルほど先の峠を指さす。
あの峠を超えれば下りらしい、俺は残り二百メートルを全速力走ることにした。
「あっプルート待って~」
急に走りだした俺に驚き、クラリッサとエーリカも走り始める。
俺は単に一番乗りで峠を越えたかっただけなのだが、皆駈け出してしまった。
山道を駆け上り最後の瞬間に俺は大ジャンプして峠の向こう側に着地した。
ムギュ
「みゃん」
子猫は道に突っ伏すように倒れている少女の上に着地していた。
困って鳴き叫んでいるとクラリッサとエーリカが追いついて来て倒れている少女を助け起こす。
「「アデリーナ?」」
倒れていたのは昨日別れたばかりのアデリーナ...に似た少女だった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
猫に着せる衣装は学ランしか思いつかなかったです。
この後のストーリーをシリアスで行くかコメディタッチで行くか悩んでます。
ホントどうしよう。
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