猫は緊急事態に対処する
下ネタなので、嫌いな方は読み飛ばしてください
「貴方…誰?」
椅子に縛り付けられた状態のメグ嬢はエーリカをじっとにらみ付けてきた。
(メグ、かわいそうだけど、今は君は解放できないから。早くシュタインベルグ男爵家と話を付けないとな~)
「あら、起きていたの?」
エーリカは、素っ気なくそう答えて、魔法薬作りに再び取りかかった。
メグ嬢はそんなエーリカの姿をじっと見て、
「貴方、この学校の生徒ではありませよね」
とぼそりと呟いた。
「…一応学校の関係者よ」
メグ嬢が返答を期待しているのか分からないが、一応エーリカもぼそりと呟き返した。
「関係者って…貴方みたいな紫のふわふわ頭な人がいたら、絶対に話題になっているもの」
メグ嬢は、エーリカが返答したことに少し驚いたようだったが、これ幸いと会話を続けようと話を振ってきた。
(エーリカの髪型って、やっぱりこの世界の人から見ても残念なのか…)
「その通りだけど。私はこの学校のOGなのよ~」
エーリカは、魔法薬の調合を続けながらメグ嬢との会話を続けるのだった。
俺がメグ嬢との会話を続ける理由は、まあ黙々と黙ってポーションを作り続けるのに飽きてきたからということと、シュタインベルグ男爵家の情報が手に入らないかという目論みもあった。
「OGってことは魔法学校の卒業生ですか。…工房を利用しているってことは、校長先生の元教え子なのでしょうか?」
(普通に考えれば、エーリカを見てメグのような思っちゃうんだろうな。それと、エーリカは子供のよう見えるけど、実はトビアスの師匠なんだよな~)
と俺は内心苦笑いしながらメグ嬢との会話を続けた。
「ふふ、それは秘密なのよ~」
「秘密ですか」
「ええ、いい女には秘密があるものなのよ~。こんな所でトビアス君に閉じ込められている貴方にも秘密があるのでしょ?」
この問いかけにメグ嬢がどう返答するか、エーリカは期待していたのが…
「秘密ですか…」
メグ嬢はその下を俯いて黙り込んでしまった。
エーリカはチラチラとメグ嬢の様子をうかがいながら、魔法薬を作り続けていたのだが、彼女は先ほどから俯いたままであった。
(…うーん、如何したんだろう。さっきの質問が不味かったのかな? だけどメグの立場なら秘密とかあって当然だろ…)
俺はこちらから何か話しかけるべきか迷っていたのだが、
(あれ、何かメグ震えてないか?)
俺は俯いているメグ嬢の肩が小刻みに震えていることに気づいた。
「…」
そのとき、小さな、非常に小さな声でメグ嬢が何か言っているのを俺の耳が捕らえた。
「…えっ何?」
「……」
俺が問い返しても、メグ嬢は聞き取れない程の小さな声で呟く。
(メグ、何を言ってるんだ。…しかも、えらく顔が赤いぞ)
彼女は顔が赤くその額には汗がにじんでいた。
(もしかして具合が悪いのか? 昨日は冷え込んだし、風邪でもひいてしまったのか?)
メグ嬢はずっと椅子に縛り付けられていたのだ、だから体調を悪くしてしまったのかと思ってしまった。
「あ、あの~。具合悪そうだけど大丈夫かな?」
「…れ」
「もし調子悪いなら魔法薬があるけど…」
「…いれ」
「?」
「おトイレに行かせてほしいの!」
「ヒッ!」
小さな声を聞き取ろうとしてメグ嬢に近寄っていたエーリカは、突然大声で叫ばれ驚いてしまった。
「お願い…もう我慢できないの。早くおトイレに行かせて!」
メグ嬢は涙ぐんだ目でエーリカを見上げてそうお願いしてきた。
「えっ、と、トイレ~?」
メグ嬢はずっと拘束されていたが、大半は薬で眠らされていた為今まで生理的欲求を感じる間もなかったのだろう。そのため薬が切れ目覚めてしまったとたんその欲求が襲ってきたのだった。
「漏れちゃう。は、早く拘束を解いて~」
メグ嬢は拘束を解いてほしいとお願いする。
「ちょっと待って」
(ちょ、確かにピンチだ、早く拘束を解いてトイレに…って、本当にトイレに行きたいのか?)
拘束を解きかけて、もしかしてこれは彼女の演技じゃないかと俺は疑ってしまった。
「ど、どうして解いてくれないのよ~」
拘束を解きかけた手を止めたエーリカを、メグ嬢は涙目でにらむ。
「い、いや。本当にトイレに行きたいのかな~と。だって拘束を解いたら貴方逃げちゃうでしょ?」
「に、逃げる…とか、そんなこと今はどうでも良いの。もう限界…」
一瞬メグ嬢がびくっとしたが、また必死な感じで訴えてきた。
(うーん、本当にそうなのかな。ちょっと怪しいかもだな)
エーリカはちょっと冷静になって、メグ嬢の様子を観察することにした。彼女は涙目で冷や汗もかいて足をもぞもぞとしているが、疑わしい目で見てしまうと演技のように見えてしまう。
(…そういえばおとぎ話で眠っていた人とかトイレとかどうしていたんだろうな。魔法の呪いで眠っていた某お姫様とか年単位で寝てても問題無かったような…。三年寝太郎なんて三年ごとに起きていたぐらいだし…。魔法で眠っている時に生理現象は止まらなきゃ大変だよな。となると、メグ嬢のこれは演技かもしれないな。…真偽を確かめる為、ここは少しじらした方が良いかもしれないな)
「解放するのは校長先生の許可がいるのよね~」
エーリカは少し意地悪な調子でそうメグ嬢に言うと
「そ、そんな…校長先生の許可なんて…も、もう限界なのに」
メグ嬢はぼろぼろと涙を流してそうエーリカに訴えてきた。
(うーん、これは本当にそうなのか…いや、ドラマでも女優なら泣くのは自由自在と聞いたことあるな。うん、メグ嬢はそういった訓練を受けているかもしれないぞ。…じゃあ、ちょっとこれを試してみようかな~)
まだメグ嬢の生理現象が演技なのかどうか分からない俺は、手近にあったとある物を手にとってメグ嬢に差し出した。
「残念だけど、溲瓶はこの国にはないのよね~。でも、東にある国のとある人たちはこれで用を足すこともあるそうよ~」
「そんな小瓶で、私にどうしろというのよ」
エーリカの差し出した魔法薬を詰める小瓶を見て、メグ嬢は激発してしまった。
「あっ…………」
ついでに別な物も激発してしまったメグ嬢だった。
◇
(ううっ、どうして俺がこんな目に…)
メグ嬢はお漏らししてしまった恥ずかしさの余り自殺しかねない状況だったので、魔法により眠ってもらった。
しかしお漏らしの状況のままではかわいそうなので、俺は工房の洗い場で俺はメグ嬢の服を洗う羽目になっていた。
(しかし演技じゃなかったのか…。メグ嬢本当に訓練を受けた暗殺者なのかな~)
メグ嬢は訓練を受けた暗殺者であることは、戦った俺が一番分かっているのだが、お漏らしして恥ずかしがっているメグ嬢は、全く別人であった。
(とにかく、こんな状況にならないようにトビアス校長に対応を…いや、それは不味いか。ミームに何とかさせるしかないな)
俺は絹製の小さな三角の物体を洗いながらそう思うのだった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
お気に召しましたら、ご感想・お気に入りご登録・ご評価をいただけると幸いです。誤字脱字などのご指摘も随時受付中です。




