子猫は異世界チートの夢をみるか
・・・おや!? 子猫の様子が・・・子猫はチートに進化した!
今回は少し短めです。
ミサを終了してから一ヶ月が経過した。
アレが戻ってこなかったショックで女神を呪いながらしばらく呆けていた子猫だったがようやく立ち直り、初期の目標である脱使い魔の方法を探す毎日を過ごしていた。
ミサが終わった後も村の猫達や森猫・犬とは交流をもち、奇跡の使い方などを教えている。
後、洞窟にいる精霊人にはお礼としていくつかのアイテムを作ってもらう事となり今日はそれを受け取りに洞窟を訪れていた。
「こんばんわサミーさん」
「あんたよく来るね~」
子猫と子犬の軍団に取り囲まれスキンシップの嵐を受けながらサミーさんに挨拶をする。
森猫の洞窟には子猫・子犬好きの天国がそこにはある。
もしアデリーナをここに連れてきたら彼女は萌え死ぬかもしれない。
人間に転生していたらハーレムを作りたい野望があったが別な意味のハーレムを形成している俺であった。
「今日も精霊人に会いに来たのかい?」
「ええ。」
サミーには洞窟の奥に精霊人が住んでいることを伝えてあるが、猫達では精霊人を見ることが出来ないらしく本当に住んでいるか半信半疑のようだ。
子供軍団のスキンシップを乗り切って奥の部屋に一人で行くとすでにアントンさんが待ち構えていた。
「頼まれたいた物はできているのじゃ」
「無茶なお願いだったのにこんなに早く出来上がるなんてすごいです。」
「この程度当たり前と言いたいのじゃが、お前さんの要望通りのものを作るのになかなか苦労したのじゃ。しかしお前さんの発想はすごいのじゃ。儂等ではこんなことは考えつかないのじゃ。.....本当にお前さんは猫なのか疑問じゃ。」
「まあ、魔女の使い魔ですから」
さすがに元の世界からネタを引っ張ってきたとは言えないので使い魔のおかげと俺はごまかした。
「...儂にはどうでも良いのじゃがな。」
アントンはあまり納得していない様子だったが、洞窟の件で子猫に恩を感じているので深く突っ込むのは遠慮してくれるようだ。
「早く見せてもらいえませんでしょうか。」
俺としては早くアイテムを使ってみたいのでアントンを急かす。
「あまり急かすのは良くないのじゃ。ちゃんと説明するからよく聞くんじゃ。」
作製を依頼したアイテムのうち重用な3つのアイテムについて、アントンは一つ一つ機能と説明をしてくれる。
「一つ目は猫が持てる無限の鞄ということじゃが、身体に貼り付けて使えるようにしてくれとのことじゃったな。お前さんの要望通りに出来たと思うのじゃがどうじゃ?」
アントンは服に付いているポケットを切り取ったような小さなポケットを差し出す。
小さすぎてほとんど何も入らないように思えるが、これは無限の鞄と言う魔法のアイテムと同じく無限に物を格納でき格納された物の重さは感じない便利なアイテムだ。
本来なら鞄として作製されるアイテムだが、猫が鞄を持っているのはあまりにも不自然だしエーリカに持っていることがバレてしまうので、ポケット上にして身体に貼り付けて使えるようにしてもらった。
当然貼り付ける位置はお腹である。
これで俺は未来から来た猫型ロボットよろしくお腹からアイテムを取り出すことができるようになった。
しかもエーリカ達にばれないように必要時以外は付いていることさえわからなくなる偽装機能付きとかなり高機能のマジックアイテムである。
実際お腹に貼り付けて見たがほとんど違和感が無い。
「はい、問題無いと思います。」
「ポケットを軽く叩くことで偽装が解除されるのじゃ。」
ポケットを叩くと見えたり見えなくなったりする。
ビスケットは増えないだろうがすごい機能だ。
「さすが精霊人です。」
「そんな物、百歳の若造でも作れるのじゃ。」
ちなみにアントンは千数百歳で、精霊人は数千年は生きるらしい。
「次は力の腕輪じゃ。お前さんの体格じゃとあまり強くすると身体が持たんじゃろうから人間の大人程度の力しか出ないようにしてあるのじゃ。」
力の腕輪とはその名の通り装着した者の力を上昇させるもので人間が使うものであればかなりの力を得ることが出来る。
しかし子猫が付けれるサイズとこの体ではあまり力が出せないようで大人の人間ぐらいの力を出すのが精一杯らしい。
これもつけてしまうと目に見えなくなってしまう機能付きだ。
「さて、最後は魔法の手じゃが、お前さんの要望通りには作れなかったのじゃ。」
「やはり無理だったのでしょうか?」
基本4足歩行の猫、しかも前足は肉球と爪であり物を持ったり操作したりする事はほぼできない。
前回それを痛感した俺は物を持てないということを解決してもらうための手段として魔法の手の作製を依頼したのだ。
しかし精霊人の力を持ってしても作製は困難だったらしい。
「いや、お前さんの要望は満足していると思うのじゃがデザインがじゃな...」
そう言って彼が取り出してきたものは...なんというか触手だった。
俺がイメージしていたのは肩のあたりから腕が生えているというどこのZOI○Sって感じのデザインをお願いしてたのだが、まさか触手になってくるとは予想外であった。
「お前さんが望むような人の手の形に作るのは出来なくはないが猫じゃと制御が出来ないと言う意見が多くての~」
どうやら猫には人の手の様な形態は制御出来ないと思われたみたいだ。
(元人間だから扱えると思うのだが)
「これでもお前さんの望む事はほぼ出来ると思うし、クレイゴーレムの素材を使うことで伸縮変形も思いのままじゃ。使わない時は小さくして置けるしその時は他のアイテムと一緒でわからないように偽装機能が働くからいちいちはずさなくても良くなるのじゃ」
説明を聞いていると俺が要求したものよりかなり使い勝手が良さそうだ。
「僕の要求以上の機能を持っているようですね。デザインはこの際我慢します。」
「そう言ってもらうと助かるのじゃ。」
俺はアントンに魔法の手を肩につけてもらいその動きを試してみる。
「魔法の手の力も人間の大人の手程度じゃ。細くすればかなり伸びるのじゃ。馬位ならぶら下げることも出来るがそんなことをするとお前さんの身体が持たないと思うのじゃ。」
馬って五百キロぐらいか、さすがファンタジー素材頑丈すぎる。
「これだけのアイテムを作っていただきありがとうございます。」
子猫はペコリと可愛くアントンにお礼を述べる。
「お前さんがアイテムを何に使うかは知らんが、悪用だけはしないで欲しいのじゃ。儂等は悪いことに手を貸さないのが誇りなのじゃ。」
「神に誓って悪用はしませんよ。」
女神には裏切られっぱなしだけどな~と思いつつ悪用しないことを俺は神に誓った。
◇
便利なアイテムを精霊人に作ってもらったわけだが、実は小屋でゴロゴロしているだけの子猫は有効活用しているとは言えない。
時々森で魔法の手の使い勝手を試したりはしているが、一番役に立つのはエーリカの本を読む時だろう。
居間までエーリカが読み落ちした本を読むだけだったが、魔法の手で本を自由に取れるようになり読書の範囲が一気に広がった。
その御蔭でようやくこの世界の成り立ちなどの神話や村がある国、大陸について知ることが出来た。
まず、この世界は『神の方舟』と呼ばれている。
もともとこの世界の神々と住人はもっと過ごしやすい別の世界に住んでいた。
しかしその世界は神々を持ってしても防ぐことの出来ない災害に見舞われた。
そこで神々はこの世界の住人を救うために龍達と共にこの世界を作り上げそこに世界の住人を移住させたそうだ。
災害からこの世界を守るためにこんな閉じた世界を作ったそうだが災害が何であったかはわからないらしい。
ただ、その災害を乗り切るためにこの世界を作ったことで上級の神々は力を使い尽くしあるものはこの世界を離れ、あるものは世界に溶け込み、残ったのは中級以下の神々だけになったらしい。
なお、一緒に世界を作った龍もその数を減らししてしまい、残った少数の龍も太陽と月を管理するので精一杯ということらしい。
神々と龍により移住させられた住人は安定したこの世界で反映をしているが、人間があるところに戦乱はつきものであり様々な種族を巻き込んであちこちで戦乱が耐えないらしい。
最も近い戦争は二百年前にあり、覇王と名乗る魔族がパドワナと呼ばれるこの大陸で魔獣を率いて挙兵し戦乱を引き起こした。
大陸の6つの王国のうち3つまでが征服されたがそこはお約束の勇者が現れ覇王とその軍団を破りこの大陸に平和をもたらしたそうだ。
その後残った3つの王国と勇者が建国した王国の4つの王国でこの大陸は統治されており、今のところそれらの国々は特に争うこともなく平和が維持されている。
ジム村はその4王国のうち大陸の南に位置するラフタール王国に属している。
ラフタール王国は人間・亜人共に平等に扱われており、その御蔭で魔法や工業が他の王国に比べかなり発達しており豊かな王国である。
ちなみに亜人とはエルフやドワーフ、ホビット獣人などの種族である。
ラフタール王国が亜人を平等に扱っていのは王家に亜人の血が入ってるからしいとあるが詳細は不明らしい。
ちなみにジム村だが、先の戦争で活躍したジム・ホーキンスなる人物が荒れ地を開拓して作り上げた村で、特徴のないのが特徴というか本当に平凡な農村だ。
村の創始者ジム・ホーキンスもどんな人物であったかは記録にも伝承にも残っていないので本当に戦争で活躍したのかも眉唾ものである。
他にも神や宗教についても知りたかったのだが、エーリカはその蔵書を持っていないのか本棚には置いてなかった。
まあ、神については女神に聞けば詳しくわかるのだろうが、ミサ以来何度呼び出しても応答が無い。
もう一度ミサでも開いて呼び出してやろうかと画策する俺であった。
◇
子猫が読書三昧の間エーリカとアデリーナは薬草の採集とポーション作製をずっと続けていた。
俺も時々薬草採集に付き合っていたのだが、事件が起きたのはそんなある日の事だった。
「エーリカ様、そろそろロール草も籠にいっぱいですが。」
「そうね、今日はこれで終わりにしましょ。本当に今年は薬草が豊作で助かるわ~」
「そうですね近年まれに見る豊作だと思います。」
「これで次に行く街で販売するポーションが大量に作れるわね。」
「エーリカ様はいつ頃この村をお発ちになられるのですか?」
「そうね、貴方がポーション作製の魔法をマスターするまでという約束だったからね~。もう覚えちゃったしいつでも出発可能だわ。」
「そうですか、できればずっとこの村に居て欲しいのですが...」
「ムリムリ。私は同じ場所にずっと滞在は出来ないのよ。」
そんなエーリカとアデリーナの会話を聞きながら俺はこっそり草陰でロール草を採集してポケットに詰めていた。
アデリーナの魔法の練習を見ていた子猫は門前の小僧習わぬ経を読むじゃないが同じくポーションの作製をマスターしている。
ロール草は毒消しのポーションを作ることができるのでこっそり作って森猫に渡しておくつもりなのだ。
また洞窟の精霊人に渡せばお礼にまたアイテムの作製を依頼できる。
そういう思いもあって子猫は薬草の集中していたので急に襲ってきたそいつに全く気が付かなかった。
そいつは森の中を飛び回り普段は青銅バッタの幼生や小型の鳥を捕まえて餌としている。
そいつが子猫を捕まえたのは単なる偶然というか他に餌が見当たらなかったという理由以外何もなかった。
前足で捕まえた子猫をすぐに食べてしまうつもりだったが子猫は奇妙な触手を延ばし邪魔をしてくる。
そいつは苛立って子猫を全ての足を使ってしっかりと掴み噛み付こうとしたが、子猫が鳴き叫んだと思うと激しい衝撃を喰らいそいつの頭は胴体と切り離されてしまった。
子猫は突然身体を何かフックの付いた某のようなものに引っ掛けられ空に持ち上げられた。
急激なGにブラックアウトしそうになりながらも上を見ると、巨大な複眼と口を持つバケモノが噛み付こうとしているところであった。
俺は慌てて触手を出してその頭を殴りつけた。
この魔獣は鋼蜻蛉、名前の通り蜻蛉だ。
しかしその大きさは子猫が捕まっているのを見ればわかるように普通の蜻蛉のサイズではない。
少なく見積もっても全長二メートルもある。
子供ならさらわれる可能性もあるサイズの魔獣だ。
森の奥に生息しているが、薬草を採取する様な場所にはほとんど出てこないのだが、たまたま出てきた奴に俺は捕まってしまったらしい。
鋼蜻蛉は俺が触手で頭を押さえつけるので戦法を変え俺を残りの足全部で押さえつけた。
これでは触手も自由に動かせない。
ここでただの子猫ならそのまま食べられてしまっただろうが俺には魔法がある。
唯一動かせる尻尾で魔法陣を描きながら呪文を唱える。
”不可視の矢”は鋼蜻蛉の首の付根に命中しその頭を胴体から切り離した。
頭の無くなった胴体はしばらく滑空していたがしばらくすると俺を抱えたまま墜落していった。
「ミギャー」
子猫は悲鳴を上げながら落ちていくのであった。
所詮チートしても子猫は子猫です。
後は世界の設定を少々入れましたが基本お気楽なファンタジーなのでこの設定が生きてくることがあるかどうかは神のみぞ知るです。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
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