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コボルトと決着つけます

これは一週間前にアデリーナと別れた後の話(続き)その3で犬+コボルトとの決着編です。



「洞窟は大丈夫だろうか?」


奥さんと子供を洞窟に残してきたクロスケは心配そうだ。


「大丈夫ですよ、ちゃんと保険もかけてきましたし。」


「ホケンとは何のことか分からんがお前を信じよう。」


「ギムさん、犬達とハチ合わないようにお願いします。」


「ワカッタ」


今晩犬達が猫を襲うのに対し俺は防御と遊撃の二手に分かれる作戦を立てた。

俺達六匹は遊撃部隊としてコボルトの本拠地に向かい犬質(人質)となっている母犬と子犬を助ける。

そうすれば犬達はコボルトに従う必要がなくなり猫と闘う必要もなくなるからだ。


夕暮れ時の空の明るさもなくなり、月が光りだすまでの間は一番暗くなる時間帯でこういった隠密に行動するには適している。

しかも猫達はその特性上隠密行動に長けているのだから匂いさえ嗅ぎつけられなければ犬達にこっちが見つかることは無いだろう。

ギムに風向きにも注意するように言って俺達は進む。





犬達の襲撃におびえているのか洞窟では猫達が不安そうにしている。

サミーはこの洞窟にいる猫達の長としてちゃんとしなければと思っているが、自分もすごく不安である。

魔獣が多い森では子育てが非常に難しいためこの洞窟は森猫が子供を産み育てるために重要な場所となっている。

森猫の祖先が魔獣が住み着いていたこの洞窟を苦労して手に入れてくれた、そして安心して子供を育てる事ができるこの場所を絶対に手放すことは出来ない。


子猫(こども)と母猫は奥の方の移動して邪魔にならないように。雄猫(おとこ)たちは洞窟の入口で待機してください。」


「サミーさん、犬どもがやってきやした」


外を見張っていた雄猫が犬がやって来たと洞窟に飛び込んできた。


「犬どものおでましかい。」


「そ、それが犬だけじゃなくて変な奴まで一緒なんで」


「なんだって!?」


サミーが外にでるとそこには約30匹ほどの犬達が来ている。

その犬達の奥に人間の様な影があった。

犬達を引き連れて広場に出てきたそいつは犬のような顔で人間の様に歩く魔獣コボルトであった。


「アレが坊やの言うコボルトかい。確かに邪悪な化け物に見えるね。」


ここに子猫(おれ)がいればほくそ笑んでいただろう。

サミーは子猫(おれ)が言った言葉を完全に信じ込んでいた。


おそらく犬どものリーダだろう大柄な狼と言っても良いぐらいの体格の犬がサミーと対峙するかのように前に出てくる。


「猫達よ大人しくその洞窟をわれらに渡してはくれないか?」


「断るね。」


あたしも犬の言ってることはよくわからない。でも言っている意味は通じる。


「残念だ、犬達(おれたち)も本当はこんなことをしたくは無いが子供たちを人質に取られてるんでね。猫達に恨みはないがここは力づくでいかせてもらう。」


ワォーンとリーダが遠吠えをするのと同時に犬達は押し寄せてきた。


「あんたたちが卑怯な手で従わされているのは知ってるけど、こっちも洞窟がなくなると困るんでね。坊やたちが戻るまで洞窟には一匹たりとも犬どもを入れるんじゃないよ。」


「「「おぅ!」」」


洞窟の前で猫vs犬の戦いが始まった。





遊撃部隊は犬の部隊を迂回してコボルトの本拠地、母犬と子犬が人質にされている場所が見えるところまでやって来た。

木に登って偵察した猫の報告だと大きな木に母犬がロープで繋がれその周りに子犬が多数いるらしい。

コボルトの姿は一匹しか見えず、他の二匹の姿が無いとの事だった。


コボルトは3匹いたはずだが他の2匹はどこに行ってしまったんだ?

コボルトの数が偵察時より少ないことに俺は逆に警戒心を抱いている。


俺の予定ではコボルトたちを魔法で眠らせてからクロスケ達で袋叩きにするはずだったが、コボルトを全員眠らせないとこっちが逆にやられる可能性がある。

昨日魔法を使って犬を撃退したことを聞いて罠を張っているのかとも思ったが俺の知識ではコボルトがそんなに賢いわけがない。


「コボルトの数が足りませんね。」


「俺ハチャント昨日3匹ミタ。俺ハ3ツ以上数エレナイガ1匹ジャナカッタ。」


ギムがなにげに不安なことを言う。

3つ以上数を数えれないのか。

今まで普通に会話ができていたのでこっちの猫は人間並みの賢さがあると思っていた俺が悪かった。


「もしかすると洞窟に行ったのでは」


「「「!」」」


その言葉に俺は焦った。

確かに洞窟に向かった可能性がある。

保険は残してきたがコボルト二匹がいるとなるとかなりまずい状況かもしれない。


「あの一匹をさっさと片付けて犬達に状況を聴きましょう。」


「ドウヤル」


俺は猫達を集め作戦を伝えた。





コボルトは退屈していた。

何しろ犬達を見張っていろと言われたからだ。

本当なら猫達をいじめに行きたかったのだがリーダーにそう言われれば従わざるを得ない。

憂さ晴らしに何匹か犬を蹴ったりしたが唸り返されて怖くなってしまい今は木に寄りかかってぼーっとしている。


ガサッ


森の茂みの方で音がした。


「誰だ」


読んでみたが返事がない。

青銅バッタかネズミかいるのだろう。


ガサガサガサ


音が激しくなってきた。

無視すれば良いのだろうがなぜかコボルトはその音が非常に気になる。

コボルトは音に”好奇心”をくすぐられてしまった。

犬達はロープで木につないでいるので逃げ出す心配は無い。

あそこまで見に行っても問題はないはずだ。

コボルトは音のするところにふらふらと近づいていった。





子猫(おれ)が立てた作戦は

 コボルトを猫達が待ち受けるところまで誘導する。

 木の上にクロスケ他四匹が登って待ち伏せ、コボルトが来たら一気に襲い掛かる。

 俺が魔法でコボルトを仕留める

だった。


「あの化け物をどうやってここまで連れてくるんだ?」


「僕が女神の奇跡で引きつけます。」


「お前やっぱりすごいな」


「では作戦を開始しますので皆さん木の上で待機してください。」


クロスケ達が木に登ったのを確認して俺はコボルトに向けて呪文を小声で唱え始める。

唱えるのは”好奇心の増大”の奇跡。

この呪文を掛けられると何気ないことにすら好奇心がくすぐられそこに注意が行ってしまうというまさに”好奇心の女神”らしいオリジナルな神聖魔法だ。

ドラマとかで石を投げて相手の注意をそっちに向けるってシチュエーションがあるが、あんなもの実際にはほとんど成功しない。

だがこの奇跡を使えばそれがほぼ100%成功してしまう。

問題はこの奇跡は好奇心を抱く程度の意識のあるものにしか効かず、昆虫なんかには効果が無いことだ。


コボルトに呪文を唱え終わると俺はクロスケ達が待ち構えている木下で派手に音を立てる。


ガサガサ


呪文が効果したのかその音に釣られコボルトはふらふらとこっちにやってくる。

木下で待ち構えている子猫(おれ)を見つけたコボルトは手に持った錆びた小剣で襲いかかってきた。


「ギャッ」


俺に襲いかかろうとしたコボルトにクロスケが木の上から襲いかかる。

コボルトはクロスケを振りほどこうと暴れている。

俺はコボルトから離れると”不可視の矢インビジブル・ボルト”を唱え始めた。


「皆さん離れて。」


呪文を唱え終えると同時にみんなにはなれるように指示し子猫(おれ)は魔法を放った。

不可視の矢は狙い通りコボルトの喉に突き刺さる。

コボルトは崩れ落ちるように倒れた。


「「「「すげー」」」」


猫達が魔法の威力に簡単の声を上げる。

相変わらずハモるな。



俺達は繋がれていた母犬たちをロープから開放する。


「ありがとうございます。」


母犬達の中でも一番大柄な一匹がお礼を俺達に述べる。


「あなた達を監視してた化け物は退治しました。もう安心していいですよ。」


「えっ? 子猫(貴方)は犬の言葉が理解るの?」


子猫(おれ)が犬にも理解る言葉で話しかけたので犬達は驚いた。


「僕はプルート、森のハズレの魔女の使い魔です。急ぎますので後二匹いた化け物がどこへ行ったか教えてもらえらませんか。」


テンプレ自己紹介を返してコボルト達がどうしているかを聞き出す。


「使い魔...だから言葉が...えっと化け物達ですが旦那達を率いて猫の洞窟に向かいました。早く戻ってあげて私達が開放されたのを犬達(あの人達)に知らせてください。」


やっぱり犬と一緒に洞窟に向かったのか。

まずい状況だな急いで戻らないと。


「僕たちは今から洞窟に引き返します。あなた達は子犬を連れてどこかに退避してください。」


「理解りました化け物は強いのでお気をつけ下さい。」


後から合流するために二匹の猫を犬達と一緒に行くようにお願いして俺達は洞窟に急いで向かった。





洞窟では一進一退の戦いが続いていた。

最初洞窟の前で戦っていた猫だが、犬の力には勝てず洞窟の入口付近で犬の侵入を防いでいる。

猫達だけであったらそのまま押し切られているが子猫(おれ)の保険がなんとかそれを食い止めている状況だ。

俺が置いておいた保険とはゴーレムである。

ゴーレムと行っても錬金術で作成される本格的なゴーレムではなく、魔法陣を刻んだオークの木切れから魔法で作られるインスタントゴーレムである。

俺は犬との戦いで必要になるかもと薬と一緒に持って来ていたのだ。

インスタントゴーレムは簡単な命令しか実行出来ないので俺は洞窟の入口で猫以外が入ってくるのを撃退しろと命じておいたのだ。

木で出来たインスタントゴーレムとはいえその力は猫や犬の比ではなく、侵入しようとする犬を捕まえては投げ飛ばすぐらいはできる。

木で出来ている体に噛み付いてもあまり効果が無く、弱点の火も動物に使えるわけもないのでまさに無敵の壁状態である。


「あんな人形ごときさっさと突破しろコボ」


コボルトは犬達の後ろで小剣を振り回しながら命令しているが前には出てこない。

犬達も必死にゴーレムを攻撃するが噛み付きがほとんど効かない状態では結構手詰まりである。


「坊やの持ってきたホケンってやつはすごいね。」


サミーはゴーレムの名前をホケンと勘違いしてる。

力強いゴーレムの姿に猫達は勇気づけられこのまま洞窟を守り続けられそうだ。


「後は坊やたちが犬達を開放してくれれば....早く戻ってきてくれないかね~。そういえば坊やに信者になってってお願いされていたけど、こういう時人間は神様に祈るんだっけ。だけどなんの神様に祈りゃいいんだい。」

「サミーさん、子猫(こども)が言っていましたが、”好奇心の女神”様ですよ。」


ミコがサミーに神の名前を教える。

ここに子猫(おれ)がいたら俺は全然そんな神を信じちゃいないんだけどねと苦い顔をするだろう。

サミーはゴーレム越しに森の奥を眺め、早く戻ってきてくれるように神に祈った。



「このままでは拉致があかないコボ」


「あんな人形ごときに手こずるとは情けない犬達だコボ」


「顔が少し似てるからといって手下にしたがやっぱり役立たずだコボ」


「こうなったら俺達で行くコボ」


「そうだ俺達ならあんな人形ごときに負けないコボ」


「じゃ、突っ込むぞコボ」


「おお、お前が先に行くコボ」


「イヤお前が先に行くコボ」


「怖気づいたのかコボ」


「お前こそ怖気づいたのかコボ」


その頃コボルト達はどちらが先にゴーレムに向かっていくかでもめていた。





子猫(おれ)が洞窟に戻ってきたらコボルトは二匹で言い争っていた。

二人がかりで襲いかかればインスタントゴーレムもかなりやばい状況であったが所詮コボルトそこまでの度胸はなかったみたいだ。

しかも言い争いに夢中で俺達が近づくいたことすら気づいていない。


「このまま襲いかかるか?」


クロスケならコボルトの一匹ぐらいなら倒せそうだが二匹では荷が重いだろう。


「まず僕が魔法を使って二匹を眠らせますのでその後でお願いします。」


俺は眠りの雲(スリープ・クラウド)の呪文を唱える。

某TRPGリプレイじゃ遺失呪文だとか成功しない呪文とか言われていたがそんなお約束な展開は起きずコボルト達はそのまま眠ってしまった。

コボルトはそのまま俺の魔法で処理されたのであった。





コボルトを倒し母犬たちを開放したのを犬達に伝えると猫達と闘う必要もなくなった為戦闘は終わった。


「化け物から俺達を開放してくれて感謝する。」


犬のリーダ...名前はカール...がお礼を言ってくる。


「いえ、振りかかる火の粉を払っただけです。それに僕は犬達(あなたがた)にお願いがあるので助けるのは当然です。」


「お願いとは何だ、子猫(お前)は魔女の使い魔と聞いたが、俺達も使い魔にする気なのか?」


カールは自分たちが使い魔にされるのかと恐れている。


「いえいえ僕がお願いするのは僕が信仰する神様の信者になってほしいのです。」


「信者?」


「ええ、森猫さんも信者になってくれましたし貴方達も信者になっていただきたいのですよ。」


戦いのが収束した後サミーは森猫は”好奇心の女神”の信者になることを了承してくれた。


「猫が神を信じるって冗談にしか思えないが、それだけの理由があるということか。」


「同じ神の信者に成れば争うこともなくなります。」


地球では同じ神を信じていても争っていることを知っているが、この世界ではそういった事が無いことを俺は信じたいね。


「あの化け物を倒したお前は俺達のリーダーだ。その言葉に従おう。」


「えっ?子猫()がリーダーってそんなので良いのですか?」


「犬の世界は強いものがリーダーだ。俺はあの化け物に勝てなかったが子猫(お前)は勝った。よってお前がリーダだ。」


どうやらコボルトを倒してしまったことで子猫は犬達のボスに認定されてしまったらしい。


「リーダーになるかどうかのお話は後でするとして、とりあえず僕のお願いである”好奇心の女神”の信者になるということは了解してもらえるのでしょうか?」


「お前らもそれで良いな」


「「「リーダに任せます」」」


この世界の犬猫はなぜハモるんだろう....まあ信者はこれで確保できたわけだし、後はミサをやるだけだな。




「プルート、あんたのおかげで本当に森猫は助かったよ。」


洞窟に入るとサミーが俺に何度目の感謝の言葉を掛けてくる。


「いえいえ、当然のことをしただけですから。」


「プルート、俺は村を出て森猫たちと暮らすことにした。」


クロスケはミコと子供たちがいる森猫に残るらしい。


「お前にはすごく世話になった。俺で力になれることがあれば必ず助けに行くぞ。」


「ありがとうございます。森猫や犬さんといろいろ打ち合わせしたいこともあるのでできればその時に力を貸してください。」


俺が単独で森を歩くのはかなりキツイので悪いがクロスケさんをタクシー代わりに使わせてもらうことにする。


更に洞窟の奥に行くとそこは子猫と子犬の楽園になっている。

森猫は俺が提案した”犬達がここで子育てをする”ことを了承してくれた。

森の奥に退避していた子犬と母犬達もこの洞窟で安全に子育てできることを非常に喜んでくれた。


「あ、神官様だ~」


俺が近づくと子猫と子犬が俺を取り囲んくれる。

俺は子猫と子犬に信者になるための布石を打ちつつ彼らとのスキンシップを楽しむのだ。

まさにもふもふの楽園。

いつか萌え死ぬかもしれないな俺。




その日の夕方になってようやく俺はエーリカの小屋に帰ってきた。

エーリカがすごく怒っていて、薬の持ち出しとインスタントゴーレムの持ち出しがバレてお説教されました....orz


ここまでお読みいただきありがとうございます。


急いで書いてしまったので最後のほうがちょっと端折り過ぎかもしれませんがご了承くださいm(_ _)m


サミーがサリーになっていたので修正しましたorz

お気に召しましたら、ご感想・お気に入りご登録・ご評価をいただけると幸いです。誤字脱字などのご指摘も随時受付中です。


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