表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/16

私を攫って、


花が咲いたような笑み

まさにそんな言葉が似合うその人は 憧れの人

どんなに怒った顔をしてみせたって 立てば芍薬

頬に手をあて困った顔をしながら 座れば牡丹

緑の黒髪を揺らしながら 歩く姿は百合の花


そんな貴女がどうして話しかけてくれるのでしょう

高嶺の花

そんな貴女がどうして笑いかけるのでしょう

生涯結ばれることはない

そんな事は分かっているのに跳ねる気持ちは何でしょう



揺れる川面に流れる椿を

素敵ねと呟き

風に乗って高く舞い上がる綿雪へ

どこにいくのと見上げた貴女は

どこか寂しげで羨ましそうだったけれど

ただただ思いを馳せていただけで

夢の浮橋をそこに見ていたのだと思ったのに


私を攫って なんて

何故そんな事を仰るのですか

攫うなんてできるわけがないでしょう

何度も繰り返すのに 何度も願う


連れて行って その後は

お一人でどうするというのです

遠い地で しばらく

耐え切れるのでしょうか

遷居なら旦那様に ご旅行なら奥様に

頼まれてはいかがでしょう


そういう意味じゃないの 分かっているでしょと

泣きながら怒るその姿に

ええ 分かっていますとは絶対に言わない

攫ってしまって 共に生きたいのと

泣きじゃくるその姿に

嬉しいですとは絶対に言えない


聞こえてきた呼び声に

そっと背中を押す

これくらいの触れ合いさえ 本当は許されていないのだけれど

これだけでも覚えていこう


どうして

そう訴えかけてくる瞳を

きっと生涯忘れられないだろうと予感する

こんな思いを抱えていくのは自分ひとりだけでいい


貴女はお幸せに

せめて悲しみを残さないように

酷い言葉を投げつけて 姿を消そう

だから とことんまで嫌って忘れてしまえ




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お題提供サイト:哀婉
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ