綺麗な夜空に微笑んで
捨ててきたの と彼女は清々しく語った
何よりも強い瞳
誰よりも美しい瞳
何もかもを見通す瞳
氷のように硬く 脆い壁を周りに張り巡らしていた彼女のその一言を聞いて
何故か すとんと納得できたような気がした
ああ それで彼女はこんなに美しいのだ
でも それで彼女はこんなにも寂しい
ありとあらゆる荷を
重荷と判断して
捨ててきたからこそ
余分な悩みがない分 とても美しく 人が憧れ
ありとあらゆる思いを
するりと脱ぎ捨て
振り返らなかったからこそ
他方からの支えがない分 とても脆く 人は見つめ
惹きつけられる
僕ではそんな潔くて悲しい生き方はできないだろう
けれど 僅かな支えにはなれるだろうか
問えば
お互い 捨てなければいけない日が来ると思うわ
話し始めた途端 冷たい無表情に変わる
その変化こそが何より雄弁に語る
僕が気づかないとでも思うの
僕が未来に淡い甘い期待を抱かないように
強すぎる夢の中で生きて
それが弾けた将来 悲嘆に暮れる事のないように
遠ざけたって無駄だよ
既に囚われている
大丈夫 君の許しは要らない
答えがどうであろうとも僕は勝手についていくよ
月が隠れて表情は分からなかったけれど
彼女は言葉を発することなく
ただ吐息に似た笑みだけで答えた