「私の羽根を見せてあげましょう」「どうせ作り物、なんだろう」
羽根を見せてあげる、というと彼は悲しそうに目を伏せた。
孔雀の羽根。天使の羽根。大鷲の羽根。
あなたの好みは一体どれだというのだろう。
首をかしげた私が、別に見たくないのなら構いませんが、と呟くと
彼ははっとしたように面を上げた。
そうじゃない、そうじゃないんだ。
羽根は好き。でも期待を込められない。
羽根は好き。でも信じられない。夢を託せない。
気持ちを言葉にする事ができずに、彼はまた悲しそうに俯いた。
どうせ作り物、なんだろう?
彼は笑っていた。
確かに笑っているのに、何故今にも涙が零れそうな顔に見えるのだろう。
私はどうしてか悔しくて、答えるのに間を空ける。
作り物、かもしれません。
やっぱりな。
彼は溜息をつきながら、同時にどこか安心するように頷いた。
でも。
私は飛ぶことが出来ます。
大地を蹴って、空へと飛翔できます。滑空できます。
気流をつかんで加速していく事だって容易い。
だというのに、あなたはまだ別の羽根を望むのですか?
彼の目が泳ぐ。
もう一押し。
落ちないとはいいません。
矢で討たれるかもしれません。雨で羽根が重たくなるかもしれません。
それでも、私はあなたを背中に乗せて飛んでみたい。
空でもあなたと共にいたい。
声に出さなかったその言葉が、伝わったかのように彼は泣いた。
恐々と声を出す。
本当に、信じても大丈夫だろうか?
駄目です。
不思議そうにこちらを見上げた彼に笑ってみせる。
羽根ではなく、私を。
あなたが私を信じてくれたなら、きっと私は飛び続けることが出来るでしょう。
不安の曇りは全部拭う事は出来なかったけれど、
それよりも晴れた笑顔で彼は手を取った。
さあ、参りましょう。
紛い物の羽根で。
本物の大空へ。