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優しい歌だ、きっと。
目を閉じれば 草原が見える
太陽に輝く水面
水しぶきをあげながら泳ぐ大魚
雨に打たれる花々
薄く開いた窓から漏れるのびやかな音
花畑の中戯れる子どもたち
堂々とそびえ立つ大樹
浮かんでくるんだ
優しい風景
思い出すんだ
どうしようもない懐かしさ
あふれ出すんだ
あの時感じた情熱を
手を広げながら 熱に浮かされたようにうっとりと微笑んだ
感じたものはもう二度と同じように生み出されることはなくて
手から滑り落ちてしまうものだけれど
それでも君は歌うだけで 容易にやってのけるんだ
素晴らしいね
だから 聞くよ
たとえ誰が君を疎んじようとも
僕は君と語り合おう
たとえ誰が君の手を払いのけようとも
僕はその手をとろう
たとえ誰が君の歌を拒み続けようとも
僕は聞こう
死神と呼ばれる君の歌を
そう言ってやったら
呆れたように
馬鹿な人間もいたものだと
易々と僕をさらっていった