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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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夜少女

作者: 遠響
掲載日:2026/07/07

頭上に鉄橋が架かる踏切を通り抜けると、観覧車と海岸線を背景にした巨大な高層ビル群が目に飛び込んできた。


夏の、ひどく寝苦しい夜。


すぐそばに緑の木々が見える。小さな公園だった。少し近づくと、公園のベンチに短い髪で白いワンピースを着た女の子が座っていた。


彼女のそばには、中身が空になった緑とグレーのPTPシートが何枚も散らばっていた。


スマホの画像と見比べてみる。ここだ。


ーーーーーーーーー


この世界の人々は、大きく二種類に分けられるという。

――「存在(エッセ)に向かって生きる」人間と、「虚無(ニヒル)に向かって死ぬ」人間だ。


彼女は間違いなく後者だ。初めて彼女を見たその瞬間から、僕はそう確信していた。


僕たちはSNSで知り合った。彼女はよく「私を殺して」とか「そのまま飛び降りた」といった言葉を投稿していた。


僕はこういう人が好きだ。こういう、夜の匂いを纏った人が好きで、彼女を初めて見たときから深く魅了されていた。


だけど僕には、彼女に近づく理由が何一つなく、ただ黙って彼女の動向を追いかけることしかできなかった。


ほんの数時間前、画面を更新すると彼女の新しい投稿が流れてきた。



「全部飲んだらどうなるんだろう」



添えられた画像には、数え切れないほどのマイスリーのシートが写っていた。


虚無に向かって死ぬ彼女が、最後の宣言を発したかのようだった。


そこで僕は、何かにすがるような思いで彼女にDMを送った。


「大丈夫?」


彼女は、きちんと返信をする力も残っていないようだった。


「だぃじょぶ」

「わだしコこにいる」


こうして僕は、目的地へ向かう終電に飛び乗ったのだ。


ーーーーーーーーー


肩までの黒髪、華奢な体つき、それに似合う白いワンピース。ベンチに座るその人はあまりにも魅力的で、彼女に違いないと僕に確信させた。


僕は少し緊張していて、何を言えばいいのか、何をすればいいのかわからなかった。


頑張って口を開こうとした。「この辺りを少し歩かない……?」


言い終わる前に、「夜が明けなければいいのに」と、彼女が突然口を開いた。


「私と一緒に、終わらない夜へ行ってくれる?」


彼女は潤んだ大きな瞳を上げて、僕を見つめた。


少し考えた後、僕は彼女の手を取って立ち上がることにした。



「行こう」



僕たちはすでに回転を止めた観覧車の下を歩いた。なぜか、時計の針は同じ場所をぐるぐると回り続けていた。

漆黒の水面にいる金魚を眺めていると、魚が僕たちに向かってヒレを振った。

淡い灯りが瞬く神社で願い事をしたが、お賽銭はどうしても賽銭箱に入らなかった。


線路を歩いていると、彼女はレールの上に寝そべり、通り過ぎる電車に向かって声を上げて笑った。


最後に、すでに閉店した楽器屋の前を通りかかったとき、彼女はふと立ち止まった。そして壁に描かれた、八分音符の下に二人の小人がぶら下がっているグラフィティを指さしてこう言った。


「音楽が私たちを繋いでいるんだね」


僕は少し嬉しかった。でも、なんだかよく分からなかった。もし本当に死にたいのなら、どうして人に知らせようとするのだろう?きっと誰かに見つけてほしかったに違いないだろう。本来なら僕ではなかったはずなのに、どうして今日は僕でよかったのだろう?僕の頭の中は、そんな矛盾で渦巻いていた。


なんと答えようか考えていると、彼女は突然、僕には理解できない言葉を話し始めた。彼女が一言発するたびに、彼女のいる位置がフッと変わる。彼女が移動するたびに、僕の脳裏には彼女の「次の1秒後の位置」が先立って浮かび上がった。


いつしか、彼女の姿が重なり合い、気がつくと僕たちは、長い長い廊下に並んで立っていた。


スポットライトが廊下の突き当たりを照らしている。そこには二つの扉があった。彼女はゆっくりとその一つに向かって歩き出し、扉を押し開けた。その先には果てしない虚空が広がっていた。彼女は少しだけ思案したあと、そこへ身を投げた。僕もそこで意識を失った。



再び意識を取り戻すと、目の前には見知らぬ天井があった。僕はベッドに横たわっていて、枕元には何人かの医師と、たくさんの機械、そして一人の警察官がいた。


「彼女について何か知っていますか?」


警察の制服を着た人が彼女の写真を掲げてそう言った。


なんと答えていいか分からず、僕はそのまま再び目を閉じた。すると、すぐそばに彼女が現れた。不思議なことに、彼女がいる場所だけが「夜」だった。


彼女はそっと手を差し伸べ、優しく僕を誘った。


「一緒に、終わらない夜の中へ行こう」


涼しい風が吹き抜け、時間に対する焦燥感がすっかりと消え去っていった。


「うん、行こう」

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