94. メンテナンス・レーティング 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
翌朝、私はひどく不名誉な緊張の中で目を覚ました。
出艙のせいではない。今日が正式な艦外整備考査だからでもない。
目を開けた瞬間、向かいのベッドの真紀がもう起き上がっていたからだ。制服を半分着た状態で、俯いて袖口のボタンを留めている。その動作は、昨夜何も起きなかったかのように平然としていた。
……この女、いったいどういう構造をしているんだ。
私は毛布を少し引き上げた。寒いからだと自分に言い聞かせながら、本当は彼女と目が合うのが怖いだけだということは、自分でも分かっていた。
真紀は顔も上げず、淡々と言った。
「シモ、狸寝入りを続けても、ヴィクトルが考査を取り消してくれるわけじゃない」
「狸寝入りじゃない。戦術的閉眼だ」
「ほう。その戦術、さっきいびきをかいていたが」
「それは心理戦だ」
「なるほど。鼻音で宇宙の真空を威嚇するわけか」
そう言ってから、彼女はようやく顔を上げて私を見た。
その一瞥はひどく平坦で、ひどく淡くて、何事もなかったとさえ言えそうだった。
だが、その「何事もなかったかのよう」に見えるからこそ、余計に胃が痛くなる。
昨夜部屋に戻った後、私は本当は話をはっきりさせるつもりだった。「私たちは結局どういう関係なのか」「あのキスは何だったのか」「私をベッドに押し倒しておいて、途中で急に手を引いたのはどういう意味か」。結局、私は一言も口にできなかった。真紀も追い詰めてはこなかった。彼女はいつも通り荷物を整理し、いつも通り洗面を済ませ、いつも通り「明日も考査だ、寝ろ」と言っただけだった。
手榴弾を私の懐にねじ込んでおいて、ひどく丁寧に安全ピンを押し戻してくれたようなものだ。
私はのろのろと身を起こし、髪を掻き上げた。
「あんた、今日……機嫌いいね」
「これから公開処刑に引きずられていく人間みたいな顔で起きてきた誰かさんよりは、少しましなだけだ」
「それは私が出艙するからでしょ」
「違う」真紀は最後のボタンを留め、残酷なほど平静な口調で言った。「その顔は、出艙よりも、私と二人きりになる方を心配している顔だ」
私は危うく自分の唾を気管に詰まらせそうになった。
「だ、誰が心配なんか――」
「ん」
「その『ん』、すごく人を見下してるでしょ」
「たかがシモのくせに、随分と生意気だな」
よくも言えたものだ。
私は彼女を睨みつけたが、耳の方が先に熱を持っていくのを止められなかった。真紀は二秒ほど私を見て、口の端が上がりそうになったが結局上がりきらず、私の上着を掴んで放り投げてよこした。
「早くしろ。今日は本当に遅刻できない。ヴィクトルが昨日はっきり言っていたぞ。遅刻した奴に溶接機を持つ資格はない、雑巾で外殻を磨いていればいいと」
「……あの人が冗談を言ってるのか本気なのか、いつになっても判断がつかない」
「あの人なら、たぶん両方だ」
それは、否定できなかった。
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朝食の時間、艦全体の空気は異様なほど微妙だった。
「今日は正式考査だから全員緊張している」という種類の微妙さではない。
「昨夜、二等室で食堂全員のおかずを一皿増やせそうな事件が起きかけ、しかも目撃者たちがまだ生きて朝食に来ている」という種類の微妙さだ。
トレイを持って食堂に入った瞬間、ジェスがすでに座っているのが見えた。
私に気づいた途端、彼女の目は軍需品庫の鍵でも拾ったかのように輝いた。
終わった。
この女は朝食を食べに来たのではない。私を食べに来たのだ。
「おはよう、シモ」
彼女は春風のように晴れやかな、隠す気もないほど意地の悪い笑みを浮かべた。
「昨夜はよく眠れた?」
「まあね」私は腹を括って腰を下ろした。「少なくとも、あんたのくだらない話で起こされることはなかった」
「そう? 残念。二等室の防音、もう少し薄いかと思ってたのに」
私はフォークを危うく折りそうになった。
向かいのDが盛大に噴き出し、机を叩いて言った。「今の発言、危険すぎるぞ、星野」
「黙れ」
「おい、無実の一般市民に八つ当たりするな」Dは一切無実ではない顔で言い、さらに大真面目に付け足した。「俺はただ、室友関係が円満かどうかを心配しているだけだ」
「それを世間では野次馬根性って呼ぶの」
「じゃあ、ハーヴィーはどうなんだ?」彼は即座に火の粉を隣へ飛ばした。
ハーヴィーはスープの匙を置き、ひどく冷静に私を一瞥した。
「俺が気にしているのは、今日出艙した時にお前の手が震えないかどうかだけだ」
「ありがとう。あんたはあの連中よりずっと文明的だ」
「どういたしまして」彼は頷いた。「もし震えるようなら、遺言のフォーマットを先に用意しておいてやる」
……前言撤回。この班に、ろくな男は一人もいない。
隣のロイは、どうにか常識人の体面を保とうとしていたが、口元がもう崩れかけていた。
「少なくとも、今日の相棒は信頼できるだろ」
私は反射的に真紀を見た。
彼女は俯いて目玉焼きを切っていた。何も聞こえていないという顔だ。私の視線に気づいてようやく顔を上げ、朝の気象情報でも読み上げるような平坦さで言った。
「安心しろ。お前が流されそうになったら、引き戻してやる」
ジェスがすかさず乗ってきた。
「わあ、優しい」
本当にパンをその口に詰め込みたかった。
幸い、朝食はすぐに端末の通知音に中断された。全員の個人パッドに同時に表示が出る。見出しは容赦がなかった。
――第三段階正式考査:艦外無重力整備作業。
テーブルが一秒、静まり返った。
それからDが口笛を鳴らした。
「よし、来たな。今日は誰が最初に宇宙の漂流物になるか見物だ」
「残念だが」真紀が水を一口飲み、冷たく言った。「最初はお前であってほしい」
「お前も口が悪いな」
「お互いにな」
私は黙って朝食に向き合った。
いい。皆、普通に見える。
私だけが、昨日ベッドに押し倒された記憶が違法放送みたいに頭の中でループしている。
本当に、普通すぎる。
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小教室でヴィクトルが再び講台に立った時、手には相変わらず、あの水筒とも酒壺ともつかない金属容器があった。
もうあれが容器ではなく、彼の身体器官の一部なのではないかと、本気で疑い始めている。
「全員揃ったな?」彼は濁っているが鋭い目で教室を見回した。「よし。今日は新しいことは教えない。昨日、お前たちは出せる醜態をだいたい出し尽くしたからだ」
教室が沈黙した。
Dが小声で呟いた。「今の台詞、特定の何組かに向けてる気がする」
「聞こえてるぞ、小僧」ヴィクトルは彼を見もせずに言った。「とくにお前にな」
教室が笑い声に包まれ、Dは無実の顔で両手を広げた。
ヴィクトルはチョークを取り、ボードに今日の作業内容を書き出した。
一、外部亀裂の検出。 二、固定フレームの取り外しと交換。 三、無酸素溶接機による補溶接と封口。 四、配管の再固定と通電確認。
どれも短い。だが、どれ一つとして人を整備報告書の事故欄に送り込まない保証はない。
「ルールは簡単だ」ヴィクトルはチョークの先でボードを叩いた。「二人一組で出艙し、指定区画の作業を完了させろ。時間制限は四十五分。超過すれば減点。溶接点がずれれば減点。検査漏れ、締め忘れ、報告漏れは全部減点。自分を吹っ飛ばしたら、即不合格だ」
「教官」ロイが手を挙げ、真面目な顔で聞いた。「相棒を吹っ飛ばした場合は?」
ヴィクトルは彼を一瞥した。
「その時は法学部への転科を検討しろ。後で弁護の言葉が山ほど必要になるからな」
教室が一瞬静まり、それから爆笑した。
ヴィクトルは鼻を鳴らし、続けた。
「班分けは変わらない。昨日の模擬実習と同じ組み合わせだ。Dとロイ、ハーヴィーとアイダ、アカリとエヴリン、ジェスと蘭、シモ――」
ペン先が一瞬止まり、こちらを見た。
「真紀と」
気のせいかもしれないが、その組分けを聞いた瞬間、後頸がふいに熱くなった。
ジェスが即座に顔をこちらへ向け、標準的な悪意満点の笑みを寄越した。
終わった。
この女が通信チャンネルに入ってきたら、今日の私は艦外整備に行くのではなく、公開見せしめに行くことになる。
案の定、次の瞬間ヴィクトルが追い打ちをかけた。
「なお、艦内監視と作業記録は、未出艙組が交代で担当する。第一ラウンドの監視は、ジェスが二号、三号区画の通信記録を受け持て」
目の前が暗くなった。
ジェス本人は逆に張り切って、ほとんど喜色満面と言っていい顔になった。
「了解しました、教官。非常に真剣に監視させていただきます」
その「非常に」という二文字に、犯罪予告めいた匂いがした。
真紀はひどく平静なまま、私に小声で一言だけ言った。
「安心しろ」
「その一言、一ミリの説得力もないんだけど」
「少なくとも、宇宙空間でお前があいつに笑い殺されるような真似はさせない」
「ありがとう。でも、できれば通信の中で先に社会的に死ぬのを防いでほしい」
「なら、作業に集中しろ」
彼女の言葉は軽かったが、直接的だった。
私は息を吸い、頭の中の雑音を無理やり押し込んだ。
そうだ。まず仕事だ。
まず、生きて帰る。
羞恥心は、後で死ねばいい。
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艦外整備区の匂いは、いつも奇妙だ。
単純な金属の匂いでも、潤滑油の匂いでもない。「ここにあるものは全部、お前の命を奪える。だから少しは敬意を払え」と告げてくるような、工業的な空気だ。
私たちは艦外整備服に着替え、準備艙で順に装備を確認した。
磁気吸着靴、姿勢制御用マイクロスラスター、命綱、工具バックル、ヘルメット内通信、胸部生命維持モニター、背部予備酸素ボンベ、そして今日最も重要な無酸素溶接機。想像していたより重く、グリップには低温絶縁層が施され、機体側面には圧力計と出力調整ノブがついていた。まるで一切の情けを持たない大型拳銃のようだった。
ヴィクトルは整備台の脇に立ち、名簿を確認しながら、遺書でも配るような手つきで工具を渡していく。
「いいか、これは教室の玩具じゃない」溶接機をDに渡す時、彼は特別に一度多く目を向けた。「もう一度、銃口を相棒に向けたら、俺が直接お前を外殻に溶接してやる」
「教官、それは脅しですか」
「教育的助言だ」
Dは即座に口を閉じた。
私と真紀の番になると、ヴィクトルは工具箱を押し出し、私たち二人の間で視線を一往復させた。
「お前たちはB-7外壁点検区を担当する。目標はセンサー導流フレームの交換、表面亀裂二センチの封溶接、それから散熱配管の一部再固定だ。手順はもう暗唱しなくていいな?」
「不要です」真紀があっさり答えた。
私も頷いた。
ヴィクトルは私を見て、一言付け足した。
「星野」
「はい」
「相棒が綺麗だからって、気を散らすなよ」
整備区が、その場で半秒静まり返った。
次の瞬間、隣でジェスが盛大に笑い出した。
「教官、それは正確です」
「……今すぐ通信を切断する申請はできますか」私は無表情で聞いた。
「駄目だ」ヴィクトルは言った。「俺も、あいつがどうやってお前を煩わせるか聞きたいからな」
この艦に、まだ規律というものは存在するのだろうか。
真紀はそれには構わず、私の右手を取って、俯いて手袋のリングバックルを締め直しただけだった。
彼女の指先が素材越しに手首をなぞった瞬間、肩が反射的にこわばった。
「気にするな」彼女は顔を上げず、ひどく淡々と言った。「先に確認を済ませろ」
「……分かった」
「命綱の確認、もう一度」
「主索ロック済み、副索ロック済み、腰部予備環固定完了」
「スラスター」
「左右四基、圧力正常」
「溶接機」
「出力待機、安全装置未解除、固定バックル正常」
「よし」
彼女が顔を上げ、透明なフェイスシールド越しに私を見た。
その一瞬、宇宙の真空より危険なのは、この人間が私の目の前でこんな平静な声で「よし」と言うことなのではないかと思った。
通信に、ちょうどいいタイミングでジェスの声が入った。
「お二人さん、こちらは偉大なる監視官よ。仲間意識を育てるのは大いに結構だけど、艦外は逢引の場所じゃないから、念のため」
こめかみに青筋が立った。
「ジェス、あと一言でも余計なことを言ったら、戻ってからあんたを溶接練習用の板にする」
「あら、怖い。私はただ、昨日の――」
「黙れ!」
「了解了解」彼女はひどく愉快そうに言った。「B-7組、精神状態きわめて活発。記録完了」
真紀が、とうとう堪えきれなくなったように、低く一度笑い声を漏らした。
通信にほんのわずかな息だけ漏れる程度で、大きな笑いではない。それでも、どんな冷やかしよりも始末が悪かった。
なぜなら、それは彼女が今、機嫌がいいことを意味するからだ。
そして、彼女の機嫌がいい時のツケは、たいてい私が払うことになる。
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