異世界ショップ日本支店長ですが、辛いです
ハイファンタジーからローファンタジーへ変更しました。
そうですよね、主人公は日本在住ですからローファンタジーですよね。。。
失礼しました。
「は? 豚肉一トン? 買えるわきゃねーだろ!!」
スキル<異世界ショップ日本支店長>が自動発動した瞬間、注文された内容が紙になって落ちてきた。
それを手に取って眺めてみると、とんでもないものが書かれていたのだ。
異世界ショップ。
よくあるだろう、異世界に転生、転移した人たちが使うスキルだ。
ただし僕が持っているのは、支店長と付いている。つまりお店側の人だ。なお店員は僕だけ。
簡単にいってしまえば、異世界ショップスキルを持っている人たちが、スキルを使って購入すると僕のところへ注文が入ってくる。
僕はその注文を受けて、ここ日本で買い出しにいかなければならない。
「どうするんだよ。近所のスーパーへ買い出しにいったところで、数キロが限度だろ」
豚バラ肉、大量パックで売ってるのでもせいぜい五百グラムくらいだ。
それをたくさんまとめ買いして……スーパー巡りをして……うん、十キロくらいが限度だな。
……トンなんて単位の肉、買えるか!
「スキル<異世界ショップ日本支店長>発動!」
僕がそういうと、目の前にタッチパネルが表示される。
そして注文一覧の中から、該当注文を探して返信ボタンをタッチ。
――そのような大量注文は……受け付けられません。十キロくらいで……がまん……してください、っと。
文字入力がフリックなんだよな。キーボードがあればもっと楽に打てるんだけど……。
注文のコメントに返信をする。
常識で考えろよ。トンなんて単位、卸業者へ直接注文するくらいしか買えないだろ。
あれ、返信がきた。早いな。
(お腹を空かせた村人が五十人くらいいるので、可能な限りたくさんの量が欲しい)
えっと、一日で一人一キロずつ食べても五十キロだ。
一トンって、千キロだよ? 二十日分くらいになる。
冷凍保存でもしなきゃ、腐るだろ。
はぁ……。
まず肉だけじゃだめだ。
パンとか、野菜もいる。そしてそんなたくさんの人に振舞うなら、カレーが安定だ。
ただコメは炊飯器がないと炊けないし、そんなものを買っても電気がないので動かない。
鍋でコメを炊けばいいけど、この注文者、絶対失敗する。こんな量を頼んでくるくらいだからな。
だから、パンだ。
――五十人なら……一トンも必要ありません。まず今日、明日の飢えを……凌げる分だけに……留めましょう。
(では店長おすすめメニューで)
返信早いよ。そして、ここはレストランじゃねぇよ。
ふぅ……五十人分のメシの買い出しかぁ。あー、面倒くさいなぁ。
でも腹を空かせた村人たちがいるって聞いてしまったからには、対応せざるを得ない。
財布を持ってアパートを出る。
僕の住んでいるところは、東京の神田川近くにあり、秋葉原にかなり近い場所だ。
周辺にはスーパーが割と揃っている。そこへ財布をもって、五十人分の買い出しだ。手で持てる量なんてたかがしれているので、何往復もした。
腕が限界だ……。
何回も買い出しにいくので、店の人に変な顔をされてしまった。
近々大人数でキャンプするから、その買い出しなんですよー、と小声で言ってごまかしたけどさ。
結局買ったのは、豚肉、ジャガイモ、人参、たまねぎを、それぞれ五キロずつとカレールーを二キロ。
そして適当にフランスパンみたいな長いものを、三十本くらい買ってきた。
二万円ほどかかった。
疲れた……。
狭い部屋に、大量の食材。寝るスペースがほぼ無くなってる。
でもこれだけあれば、明日くらいまでは持つだろ。
よし、じゃあ早速送ろうか。
えっと、手数料として五割貰うとして……三万円。儲けが一万円か。
では……。
「スキル<異世界ショップ日本支店長>発動!」
再びタッチパネルが現れる。注文から発送ボタンを押し、パネルに現れた枠内へ買ってきた食材を写してチェックを入れていく。
全部映し終えたところで、再度確認。よし、これで間違いないな。
で、発送確定っと。
ピロロン♪
軽快な音と共に、チェックした食材たちが一瞬で消えた。
その代わり、ひらひらと三万円がタッチパネルから落ちてくる。
――発送を完了しました。またのご来店をよろしくお願いいたします……っと。
そう返信した途端、また注文の紙がひらひらと落ちてきた。
「え? 今度は綺麗な宝石を五個欲しいだって? 貴族にプレゼントかな」
僕に綺麗な宝石類を選べだなんて、センスを求めてはいけない。適当に買ってくるか。
指輪は指のサイズが必要だし、ネックレスやイヤリングあたりがいいだろう。
だいたい男の僕が一人で宝石類を買いに行くと、彼女にプレゼントですか、って聞かれるんだよな。
こっちは完全に独身だよ! 相手なんて一人もいないよ!
でも宝石類は単価が高く、且つ軽い。つまり儲けも高く、運搬も楽ということだ。
実にありがたい注文なんだよね。
一番厄介なのが、さっきも処理したような大量注文だ。
キロ単位で注文されても、持ち運びが非常に辛い上に、店員から変な目で見られる。
もう既に何回か買ってるからね。大量買いの常連だよ。
あ、あの人また来たよ。
ものすごい量を買っていくよね。
そんなにしょっちゅうパーティとかやってるのかしら。
こんな感じで、絶対店員に噂されているだろう。
まあ愚痴だけどね。
じゃあ宝石買いにいってくるか。
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さて、僕がどうしてこんなスキルを持つようになったのか、簡単にさらっと流そう。
夢で神様に、頼まれたから。
以上!
確か、不労所得で稼げると言われたので、その時はあっさりOKを出してしまったんだよね。
別に神様が美人だったから、デレデレして内容にそこまで気が付かず、気軽に返事をしてしまったという理由ではない。断じてない。
そして夢から目が覚め、朝起きると何枚か紙が落ちてた。
注文内容とか色々と書いてあって、最初は誰かのいたずらじゃないかと疑った。
でもさ、試しにスキル名を口に出すと、突然目の前にタッチパネルが現れてしまったのだ。
そりゃもうびっくりしましたわ。
ただ残念なことに操作マニュアルは一切なかったのだ。
ただ、タッチパネルに表示されてるメニューで、何となく分かったから良かったけどさ。
UIって重要だよね。
それで注文にあったものの中で、一番安かったもの……ココニ番のカレー大盛りがあったので、お持ち帰りして発送してみたのだ。
本当にスキルが使えなくとも、カレーならお昼代わりになるから、いいかな、と思ったからだ。
そして結果は……本当に発送されてしまった。
代わりに購入した代金の五割増しの値段で、日本円がタッチパネルから落ちてきたのだ。
これは……確かに不労所得で稼げる。
五割増しは大きい。
問題は注文がそんなにぽんぽん来るのか、ってところだ。
しかしそれは杞憂だった。毎日最低一件は来る。いったい顧客は何人いるのだろうか。
そして割と簡単に買えるものもあれば、とんでもないものを注文してくるのもあった。
これ、どうやって向こうは注文しているんだろうか?
しかもちゃんと日本円で、お金が降ってくるのだ。誰が換金しているんだろうか?
まあ神様以外いないよね。
それと、だいたい注文は日本の食料関係が一番多い。
牛丼やらハンバーガーといったファーストフード系の食事もよく注文が入るし、カップ麺も結構ある。
中にはケーキやアイスクリームなどもある。
気分はデリバリー宅配だ。
それだけ食に飢えてるのだろう。
また胡椒や塩も、キロ単位で注文が入ってくる。たぶん向こうで売買しているんだろうなぁ。
とまあ、注文内容を見るだけで、向こう側の生活が垣間見えるのは楽しい。
それに、たまに向こう側で貧困層相手に食事などを支給しているような注文もある。
正直、顔も名前も知らない相手で、且つこの世界ではなく異世界だ。
知らんふりしてても問題はない。
でも手助けの一環を担っている、僕の買い物が最終的に人の命を救っている、と思うと結構やる気も出るんだよね。
まあさすがにトン単位の無茶な注文は止めてほしいけどさ。
でも、辛いけど割と楽しんでます。
コメディ内容のファンタジーです。
男主人公って書いたことがなかったので、お試しに書いてみました。




