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ハジマリノオワリ②

路地裏で倒れていた青年こと、主人公Sideのプロローグです。

 木々が揺れ、川の水のせせらぎは止まることを知らない。花々は大地を盛大に彩り、光は万物を照らし、その眩さを気にすることはない。そんな自然の恵みを借りながら生きている辺鄙な村があった。住んでいる人こそ多くはないが、仲睦まじく、互いに協力し合って生活している。

 そんな村人たちの中でとても愛されている子どもがいた。その子どもは村の中に実の両親や 血のつながった親族がいなくて捨て子だったが、純粋無垢で明るく皆を照らす太陽のような笑顔でいる様は、皆を元気づけ釣られて笑顔にさせるほどだった。

 ここは村の中の外れにある小さな家がある場所。皆から大人気な子供、『シルヴァ』はここで今日も今日とて毎日のように斧を持ち、仕事である薪割りをしていた。

「よっこいせーのー!どっこいしょー!!」

…変な掛け声をしながら。

「ふぅ〜!今日の仕事も終わりっ!」

額や頬に伝う汗を拭い、真っ直ぐ目の前に見える木々の先を見つめる。

「うーん、今日はいい天気だなぁ!光もいい感じに差し込んでいるし、散歩日和だな……よし後で森を散歩しようっと!」

 本日の目標を立てたシルヴァは先程まで割っていた薪たちを籠に入れ、一気に背負い村の中心地まで運んでいく。

「おっ、シルヴァ!今日も精が出るな!」

いつも明るい気さくなおっちゃんのような人物が話しかけてくる。それが合図のように皆がシルヴァの元まで駆け寄ってくる。

「シルヴァ、いつもご苦労さま。どう?今からお茶でも」

「シルヴァ、シルヴァ!探検に行こうよ!森の奥までさ!」

「ようシルヴァ!今日もいい野菜や果物が揃ってるぞ!子供なんだから好きなの選べ!」

「あらあら、シルヴァちゃん。今日も汗だくね。家でゆっくりしていくかい?」

他にもたくさんの人が一斉にシルヴァに声をかけてくる。流石のシルヴァでも聖徳太子ではないのでこんなにたくさんの言葉を聞き分けることは出来ない。

「みんな、話す時は順番!そんなに一斉に聞き取れないって!」

一人一人の話を聞いて、遊んでいき、気がついた頃には夕陽が差し込んできた。

そのときのシルヴァは幼馴染みの家に来ていた。

「ああ、こんな時間だ。そろそろ帰らないと」

「そう?家で食べていってもいいのよ?シルヴァ」

「そうだぞ。シルヴァは俺たちにとっても家族なんだから!」

「ありがとう、フェイアスの父さんと母さん。気持ちは嬉しいよ。でも、大丈夫」

2人から目線を逸らしながら話す。ここの家にいるのは幼馴染みの両親のみ。シルヴァの幼馴染みは、もういない。


◇◇◇◇◇

(数年前)

 シルヴァは幼少期は捨て子だったが村の人達に拾われてからは村で生活していた。そこでは一人、同い年の少女がいた。その少女の名前こそ『フェイアス』。

「フェイアス!今日も遊ぼうよ!」

「ふふっ、相変わらずシルヴァは元気だね。もちろん良いよ」

フェイアスは彼女の両親と顔が似ているわけではないが、いつもシルヴァに見せてくれる暖かな笑顔と優しい眼差しは、両親そっくりだった。2人はいつも一緒に過ごし、毎日側にいても飽きるなんていう言葉が出てくることは一度たりともなく、最高の友達で幼馴染みで家族だった。

 とある日。空の明るさは美しい黄昏時。2人はいつものように森で遊んだあと、家に帰ろうとしていた。そんな時、左を見ると今まで見たことのないような赤い球体が落ちていて、台座のような何かがあった。赤色の球体はまるで炎のように熱く眩い光が込められていた。いつもの帰り道に突然現れた不思議なもの。シルヴァは興味を惹かれそちらに行き、フェイアスも着いて行く。フェイアスが球体を拾い上げる。

「これ、なんだろう?」

「うーん、わかんない!でも、でも!これって不思議な大発見だよな!この前本で読んだ物語にでてくる冒険譚みたいだよ!」

「へぇ…すごいわ!シルヴァは物知りなのね」

「ねぇ、フェイアス。その丸いやつさ、この台座のくぼみに埋まりそうじゃない?ちょっと置いてみてよ!」

シルヴァにそう言われ、フェイアスが視線を台座に向けると確かにそこにはくぼみがあり、この球体がいい感じにはまりそうだ。

「うん、試してみるね」

フェイアスがそっと赤い球体をくぼみまで運び、そしてそっと置く。すると、くぼみは綺麗にはまった。

次の瞬間、突然突風が起き、雷雨まで襲いかかってくる。

「きゃあ!」

「フェイアス、こっちにきて!」

シルヴァがフェイアスの手を掴もうとしたその時。台座のほうから突然、次元が歪んだかのように空間が歪みだした。ゴゴゴ…と音を立てながら、歪みは大きくなり、やがて一つの穴が生まれた。さらに風は強くなり、そこでようやくシルヴァは、この風によって空間にできた穴の方へ引き摺られている事が分かった。そして、その風はフェイアスの方がより強く当たっていることにも。

「この風の狙いは……っ!フェイアス!!手を掴んで!」

そう言いながら手を伸ばすシルヴァ。

「シルヴァ…!シルヴァ…!!」

その手を掴もうとフェイアスは必死に腕を伸ばす。が、当然子供の体では手足は短いうえ、体重も軽い。届くわけでもなく、次第にフェイアスの体は中に浮かんでいき、空間の中へと引きずり込まれていく。

「きゃぁぁぁぁぁあああ!!!」

「フェイアスーーーっ!!!」

しがみついていた木から離れ、フェイアスの方まで駆けていくが、時すでに遅し。彼女は空間に飲み込まれ彼方へと飛ばされる。そんな彼女を追おうとするが、彼女を飲み込んだ瞬間空間は閉じ、何事もなかったかのような状態へと戻った。先程まであった台座と球体は消えており、ただ一人の子供が立ち尽くし…涙を流した。


◇◇◇◇◇

そんな事があり、フェイアスの両親とても悲しみ、落ち込み、苦しんだが、前へと向き、フェイアスは生きていると信じながら今を生きている。

そんな二人がすごいと思いつつ、シルヴァは罪悪感でこの家にはとても居づらい。

(あの時、自分が台座の方まで行かなければ、球体をフェイアスに運ばせなければ…。いや、そもそも森に行かなければよかったんだ)

自分の行動で大切な幼馴染を目の前で奪われた。そんな自分に腹が立ち、憎いと思える。

「お邪魔しました!」

「はーい」「いつでもこいよー!」

2人の明るい声を聞き、背を向けて歩き出す。あの時の同じような黄昏時。逢魔が時とも言うらしく災難に遭いやすい時間帯らしい。

「今日も行こうか」

いつもの日課のようにシルヴァは森へと向かう。あの日、あの時、フェイアスを失ってからずっと毎日のように森へと向かいひたすら歩く。散歩と称してはいるが、実際は見つけ出すため徘徊する。フェイアスの手がかりを求めて、あの時の台座を求めて。しかし何年経っても何も見つかることはなかった。

「これは、自分の罪なんだ」

硬く拳を握りしめ、唇を噛み締めながらシルヴァは歩き続ける。日は落ち、しばらく歩き回ったが、『今日も』何かを見つけることはなかった。

「……帰るか」

そう独り言をつぶやき、帰路へ歩む。

 その時、突然シルヴァは右の方向へ視線が奪われた。いや、とあるものが視界に入った。そこにあったのは、青色の球体。それには恐ろしいほどに冷たい印象を覚え、背筋が凍るのを感じたがそれも一瞬。そして、その奥に見えたのはあの時と同じ台座だった。

「…見つけた…!!」

すぐにそこへ駆けて行き、球体をすぐさま拾い台座の方へと近づく。あの時と何も変わっておらず、台座には手元の球体が丁度埋まりそうなくぼみがある。本来ならここで留まり、フェイアスの両親や他の村人たちに伝えるべきだろう。しかし、そんな警告音がシルヴァに届けわけもなかった。

「…フェイアス。今、助けるから」

シルヴァが青色の球体を嵌め込むと空間が歪んでいき、立っているのが徐々に難しくなっていくのが体感できる。さらに風が巻き起こり、空間の歪みが穴へと変わる。少しだけ、怖いという感情はあったが、すぐにその思考を振り払い、シルヴァはその穴へと走り、飛び込んでいった。


◇◇◇◇◇

 どれほど気を失っていたのだろうか?シルヴァが目を覚ますと、そこは桃色と紫色の美しい花々が咲き誇る楽園のような場所だった。空色はトワイライトのようで、飛び込んだときと同じ、いやそれ以上に美しい景色だった。

 しかし、そんな情景よりもシルヴァは目の前に立つ一人の少女に視線が動いた。少女は薄紫色と桃色の美しい長い髪を輪っかにしたりくくったりと不思議な形に結っている。目はいわゆるオーロラ色と呼ばれる色をしており、その眼差しは真摯なものだとこちら側にも伝わるだろう。

 その少女は何かを話すわけでもなく、ただシルヴァを見つめている。

「ここはどこ?」

シルヴァがそう問いかけると、目の前の少女は少し驚いたような表情をした刹那、少しだけ目を背け、憂いを帯びた表情へと変わった。そして口を開き、

「ごめんなさい」

と口にした。

「え?」と困惑するシルヴァに対し、続けて少女は話す。

「私は運命の女神と呼ばれている者。突然だけど、君にこの世界を救ってもらいたい。」

突然のことで何が何だか分からず、困惑しているシルヴァに少女は説明をする。

「いきなりこんなことを言ってもよく分からないよね。」

「う…うん」

「ここは、次元回廊を通じた世界と世界の狭間。『運命さだめの扉』と呼ばれている場所。君の視点から見ればここはもう君のいた世界とは異なる世界…と思ってもらえたらいいよ。『今の私』はここから動けない。ただ、この世界が滅ぶ瞬間を見届けることしか出来ないの」

「滅びる…!?」

「だから、君をここに呼んだ。この世界の者が理に干渉できないのなら、異世界から来た者なら干渉できると思ったの。それに、君になら私の力に耐えられるはず」

「私の…力?」

「説明は…できないわ。でも、大丈夫。」

「どうして?」

「確証があるわけじゃないの。だけど、私を信じて」

普通の人ならこんなことを言われても困惑するかもしれないが、シルヴァはそんなことはなかった。

「任せて。乗りかかった船だ、ここで困ってる人を助けなきゃ、冒険譚のようなヒーローじゃないな!」

「…ありがとう」

そう言うと女神はシルヴァへ腕を伸ばし、そっと手を握る。彼女が手を握ると、シルヴァの手の甲が熱くなるのを感じた。まるで火傷をしたような痛みがシルヴァを襲うが、そんな素振りを見せまいと、身体を硬直させ我慢をしてみせた。

 しばらく時間が経ったあと、女神はシルヴァからそっと手を離し、距離を少しだけ取る。

「これは私から君に贈る『運命の刻印』。…私はこれ以上君の側にはいられない」

「…っ!?ちょっと待って!まだ話したいことが!」

「君を突然、知らない異世界へと飛ばしてしまう私を、どうか嫌ってね………シルヴァ」

運命の女神は涙を流し、シルヴァと別れの言葉を告げる。その瞬間、シルヴァの視界はグラっと歪み、立っているのもままならない状態になる。シルヴァは身体の感覚もなくなっているが、それでも構わないという強い意志で彼女に手を伸ばし叫んだ。

「————フェイアス!!!」

伸ばした腕は何かを掴むことはなく空を切り、シルヴァは真っ暗闇の深い深淵へと落ちていった。

読了ありがとうございました。ここから先は、本編に入ります。更新ペースは遅いですが、徒然なるままに続けていきますので、よろしくお願いします。

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