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最強のホラゲー配信者がゲーム世界に転生したら、全く怖くない。  作者: てんてんこ
第2章 北明新町

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第29話 彼女は振り切りました

『――キエェエエェェエエエェアァァアアアアアァァ!!』


 北明新町きたあかりしんまちのギミックである、ランナーゾンビ。


 十数分に1度、という頻度で町を1周しているこのゾンビは、その叫び声によって周囲のゾンビの聴覚を麻痺させる、という能力を持っている。


 これは、一見、ステージの難易度を下げるお助けギミックに見える。


 だが、見通しの良い道路を自動車に劣らぬ速さで走り回る存在は、想像以上に厄介だ。


 遥か遠くから主人公を視認し、凄まじい勢いで近付いてくるランナーゾンビに殺されたプレイヤーは数知れず。


 物理的な突破力も兼ね備えているため、視認されてから車などの障害物に隠れると、障害物を破壊して突進してくることすらあるのだ。


 そのため、ランナーゾンビから視認されないように立ち回るというのが、このステージの進め方だ。


『――ァァアアアアァァアアァィィィイイイイイィィ!!』


 そうして、ランナーゾンビが道路を爆走し、通り過ぎていく。


「はい。行きましたね。では私も出ましょう。ほいっと」


 それを確認し、茜は塀を乗り越え道路に飛び降りた。


 すたんと着地し、クリアリング。この辺りは完全に手癖だ。無意識レベルで、彼女は周囲の情報をインプットしている。


「さて、これでイベントフラグがオンになりましたので――」


 そして。


 彼女の行動により、ストーリーが動き出す。


「――第一章のクライマックスが始まります」


「――あ、茜さん!!」


 道路に降り立った茜。


 そして、()()()()、その姿を目撃した佳子。


 佳子は、茜が出立して程なく、寝泊まりしていた住宅を出発していたのだ。

 物陰に隠れながらゆっくりと移動していた彼女は、ランナーゾンビが通り過ぎたところで周囲を確認しようと顔を上げ、そして道路に降り立った茜を見つけた。


 元来、天真爛漫でどこか抜けたところのある佳子は、茜と過ごしたことで、少しだけその本質を取り戻していた。


 よって、彼女はその瞬間だけ普通の少女に戻った。


 ()()()()()()()


 ぱあ、と顔を輝かせ、佳子は隠れていたブロック塀から身を乗り出し、道路に降り立つ。

 そのまま、彼女は茜目掛けて走り出した。


 そして当然。


 そんな迂闊な行動を、ゾンビが見逃すはずが無い。


『――マぁまぁまあまあマアまあぁァァアアァァ!!』


 佳子の視界からは隠れていた、向かいの路地の奥。


 そこに佇んでいた子供のゾンビが、駆け出した佳子を視認した。


「えっ」


 ランナーゾンビが走り去った後は、音を立ててもゾンビは気付かない。


 だが、直接視認されれば、その限りでは無い。


 子供ゾンビの叫び声に、佳子はびくりと身体を硬直させた。

 足がもつれ、体勢が崩れる。

 躓きそうになった佳子は慌てて身体をひねり、地面に転がる。


 転倒による怪我は、恐らく無いだろう。


 だが、ゾンビの前で転倒するということは。


「あ……」


 佳子が慌てて顔を上げると、こちらに向かって走る子供ゾンビが正面に――


◇◇◇◇


「鉄パイプを『持ちます』」


 佳子が走り出すと同時に、茜も行動を開始した。


 鉄パイプを両手で握りしめ、バットを持つように斜め後ろに構える。


 そして、茜は『走り』始めた。


『――マぁまぁまあまあマアまあぁァァアアァァ!!』


 転倒した佳子。


 子供ゾンビの叫び声。


 ゲーム中では、ここで選択肢が発生する。


 即ち、『佳子を見捨てて逃げる』か、あるいは『佳子を助ける』か。


 見捨てて逃げるなら、茜は踵を返して走り出す。


 助けるなら、彼女は佳子に駆け寄る。


 そしてもちろん、茜は佳子に駆け寄る選択をした。


 ――手に、鉄パイプを構えて。


「あ……」


 佳子が、呆然と子供ゾンビを見つめている。


 両手を前に突き出し、走り寄る子供ゾンビ。


「――よい、しょおっ!」


 子供ゾンビは、最初にターゲッティングした佳子しか見ていない。

 よって、隣から走り込む茜には気付いていない。

 あるいは、気付いていたとしても完全に無視する。


 茜は、子供ゾンビに向かい、躊躇無く鉄パイプを振り切った。


 ゴィン、と小気味の良い音が響く。


『マミィアァインッ!!』


 双方がほぼ全力で走り寄った状態で、鉄パイプで殴られれば。


 いくら茜が非力な少女とはいえ、相手が彼女の体重の半分しか無ければ、押し負けるはずが無い。


 茜は全力で鉄パイプを振り切り、それは子供ゾンビの胸の辺りにぶち当たった。


 走る勢いと、体重差。


 子供ゾンビは、おかしな悲鳴を上げつつ吹き飛んだ。


 その結果を確認すること無く、茜は躊躇無く鉄パイプを『捨てる』。


「佳子ちゃん、こっち!!」


「あっ……!」


 茜は佳子の腕を『掴み』、『引っ張った』。


 たたらを踏みながら立ち上がった佳子に目もくれず、茜は子供ゾンビが出てきた路地目掛けて走り始める。

 佳子も、慌てて茜を追った。


『マ、まぁ……ママぁアアぁ! ママドコぉおおぉ!』


 そして、鉄パイプで殴り飛ばされた子供ゾンビだったが、飛ばされた先ですぐに起き上がると、()()()()()()


『どこどこドコォ! どまドドママママァ!』


 ゾンビは、攻撃されると優先ターゲットが切り替わる。


 ゾンビを殴った茜が、今度は最優先に狙われるのだ。

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