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最強のホラゲー配信者がゲーム世界に転生したら、全く怖くない。  作者: てんてんこ
第2章 北明新町

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第23話 茜は出発しました

 「…………」


 寝袋にくるまり、あかねはじっと、暗い天井を眺めていた。


 「……すー、すー」


 隣には、同じく寝袋にくるまって寝息を立てている、佳子よしこがいる。

 この寝袋は、佳子が準備したものだ。どうも、家に何個か転がっていたものらしい。


 あれから、無事に完成したカレーを食べた後。

 完全に心を許した(チョロい)佳子は、ベタベタと茜にまとわりついてきたのだ。


 詳細は省くが、濡れタオルで背中を拭き合うところまでやらされたのである。

 茜のHPはレッドゾーンであった(比喩表現)。


 まあ、それはいい。

 佳子と仲良くなること自体は、これからのことを考えても、害は全く無い。


 だが、ただ一つ。


 気になるのは、明日の行動だけだった。


 茜は最初に、佳子の同行を拒否している。

 そして、それを曲げるつもりはない。


 それを曲げてしまうと、茜が想定する佳子ルートが破綻してしまうのだ。


 ――本当に?


 「…………」


 佳子を、救うため。


 茜は、全力でルートをトレースしなければならない。

 そうでないと、ストーリーは茜の手を離れ、その結末がどう転ぶかわからなくなってしまう。


 だから、明日は別れなければならない。


「…………」


 ゲーム内では明言されていなかったが、佳子は、別にこの家の住人だったというわけではなかった。

 もちろん、言動の端々にそのような情報は散りばめられていたため、考察サイトなどでは当たり前に、そのような設定だと書かれていたのだが。


 佳子は、別の家に住んでいた、ごく普通の少女だった。


 パンデミック当日、彼女を除いた家族全員はゾンビ化し、家から居なくなってしまった。

 たまたまゾンビ化を逃れた彼女は途方に暮れつも、家に残った食料で生き延びた。


 だが、1週間もすれば、食糧は尽きてしまう。

 現代の家庭では、保存食を溜めるという習慣はない。なにせ、スーパーに行けば何でも揃うのだから。


 そして、食糧が完全に尽きてしまう前に、佳子は行動した。

 自宅から見える範囲にあった、ゾンビが出入りしていない家に目を付けたのだ。


 それが、この家だ。恐らく、ご近所付き合いもあったのだろう。


 とはいえ、基本的には他人の家である。

 食糧は、まあ、あと数日はもつだろう。

 だが、それ以上は、どこからか調達してくる必要がある。

 あるいは、拠点を変える必要がある。


 佳子は、拠点を変えようと行動するだろう。


 ――何故なら、自宅の周りには、家族のゾンビがうろついているのだ。


 近所の知り合い達が、ゾンビ化した彼らが、ずっと動き続けているのだ。


 そんな場所に、長く留まりたいと思うはずがない。


「…………」


 茜は、ゲームのチャートを頭に思い浮かべる。

 ゲーム内では、完璧だったその行動順チャート


 果たして、それ通りに、現実は動いてくれるのだろうか。


◇◇◇◇


 朝。


「私の分はまだあるから、持って行って! 昨日はカレー、作ってくれたし!」


「……そんなに、持てないから。これだけで、大丈夫」


 佳子は、茜に大量の食糧を渡そうとしていた。


「ほら、パスタとか! これなんて、どうせ私、作れないし!」


「……それなら。パスタと、塩はもらっていく」


 恐らく、家中の食糧を積み上げたのだろう。


 パスタなどの乾燥麺、生米、各種調味料。ペットボトルのミネラルウォーターや、ジュース類。電気は止まっているため、さすがに生ものは残っていないようだが。


 茜はその中から、調理が面倒なもののみピックアップし、自身のリュックサックに詰め込んだ。

 茜なら、これらの食糧があれば1週間は食べていけるだろう。

 だが、生活能力が非常に怪しい佳子だと、そもそも食べられるところまでもっていけそうにないものばかりだ。


 そのまま食べることができるものは、佳子のために残してやりたい。

 ただ、その数は目に見えて少なかった。


 ――だからこそ、佳子はこの家を離れようとしているのだろう。


「……。……ジュースは、空腹を誤魔化すのに使える。こういうレトルトも、そのまま食べられる。缶詰は、大事にしておいて。これなら、何年も保存できる」


「うん……」


()()()()、案外、なんとかやっていけるから。それに、もしかしたら……」


 ゲームのストーリーを、正常にクリアできたなら。

 もしかすると、このパンデミックも収束させられるかも、しれない。


「……ううん。とにかく、気を付けて。十分知ってると思うけど、ゾンビに見つかったら」


「……隠れる場所を、確保しておく。見つかったら、すぐに逃げ込む。大丈夫……」


 このアドバイスは、もしかすると、ストーリーを破壊してしまうかもしれない。


 だが、言わなくても、佳子は知っているはずだ。

 ゲーム内では、佳子も、そうやって生き延びていたのだから。


 だから、このくらい、大丈夫なはずだ。


「じゃあ……バイバイ、佳子さん。明るいうちに、距離を稼いでおきたいから。……私は、行く」


「……うん。バイバイ、茜さん」


 家の、裏口。


 なるべく、未練は見せない。残さない。

 下手な感情を見せれば、佳子が崩れてしまうかもしれない。


 いや。


 茜が、既に崩れそうだった。


 だから、さっさと出発しなければならないのだ。

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