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最強のホラゲー配信者がゲーム世界に転生したら、全く怖くない。  作者: てんてんこ


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2/8

第2話 彼女は追い詰められました

「さて、それではバッテリーを探しに外に出ましょう。その前に、冷蔵庫にペットボトルがありますので、飲んでおきましょうね。いやー、寝起きの一杯は美味しいなあ!」


 そう言って取り出したペットボトルの水を、茜はこくりと飲み込んだ。


「さて、この5日前に汲んだペットボトルの水を飲むことで、現時点でマスクデータである『乾き度』が回復します。本来は、脱水症状で倒れるシーンで初めて解放されるメーターなんですが、ここでお水を飲むことで、先駆けて解放できます。はい」


 ペットボトルをそのままシンクに置くと、彼女は改めて玄関に向かって歩き始めた。


「靴を履きましょう。靴紐もしっかり結びましょうね。ここでは、3回確認すればオッケーです。2回以下だと、途中で紐がほどけるアクシデントが発生します。このゲーム、わりと落とし穴が多いので気を付けてくださいね。ゾンビアクションゲーの皮を被ったホラゲーの皮を被った死にゲーと言われる所以です」


 注意事項も交えて解説しながら、茜は玄関ドアののぞき穴から外を見る。


「ストーカーとかが居ないか、確認しておきましょうかねぇ。最近は何かと物騒ですから。はい」


 そうしてのぞき穴を覗いたまま、数十秒。


『……シン……。……シンブン……シンブ……ブシシブ……』


 ぼそ、ぼそ、というつぶやき声と共に、彼女の視界に青白い顔をした男性が現れた。


「お、新聞配達員のお兄さんですね。ウチは新聞は取ってないので投函されないんですが、お隣さんは新聞取ってたみたいですねぇ。あのお兄さん、新聞を入れたらそのまま下の階に移動しますので、その隙に外に出ましょう。はい、1、2、3、4、……15、オッケーです」


 がちゃり、と彼女はドアを開けた。

 そのまま無造作に、廊下を歩き出す。


「ちなみに走ることもできますが。ここで走ると、さっきのお兄さんに気付かれちゃいます。音に敏感なストーカーですね。なので、ここは慎重に歩いて行きましょう」


 小声で話しながら、彼女はすたすたと廊下を歩く。

 突き当たりまで移動すると、角部屋のドアをガチャリと開け、無造作に中に入った。


「はい、ここまでくれば安心です。ひとまず、ここはセーフゾーンですね。『うーん、さすがに食糧が尽きてきたわ。前の住人さん、ごめんなさい!』。はい、これで合法になりました!」


 ゲーム内の台詞を音読しつつ、茜は住人の居ない部屋に土足で侵入する。

 そのまま冷蔵庫には目もくれず、隣の棚の引き出しを躊躇無く開けた。


「はい、ここで重要アイテム、『エコバッグ』が手に入ります。これが無いと、物を持って帰れませんからね。ここでは、『乾麺』、『ペットボトル飲料』、『菓子パン』、『レトルトカレー』が手に入ります。菓子パンの消費期限は……昨日ですね。まあ大丈夫でしょう」


 ぽいぽいと手にしたエコバッグに食糧を放り込むと、彼女はそのまま部屋の机の前に移動する。机の上には、モバイルバッテリーがぽつんと置かれていた。


「このモバイルバッテリーがあれば、パソコンを使うことができます! ただ、皆さん、知っていますか? モバイルバッテリーがは、USBケーブルがないと接続できないんですよねぇ! これ、忘れずに持って行く必要があります。こっちの引き出しにケーブルがあるので、とりあえず全部持って行きましょう。もらえるものは全部もらう。鉄則ですね」


 モバイルバッテリーとUSBケーブルもエコバッグに仕舞うと、彼女はさっさと玄関に向かう。


「……さて、ここからが、この階の一番の山場です。廊下に出たら――走る!」


 茜は、廊下に出ると同時に走り始めた。

 自分の部屋まで、僅か10mほど。


 だが。


『――シシしんブンシンブンデェデでぇえェェすうゥゥー!!』


 反対側の階段から、運悪く配達員ゾンビが出てきたのである。

 瞬間、配達員ゾンビは奇声を上げながら彼女目掛けて走り始めた。


「おっと、これは運が悪い! というわけで、この部屋に入っちゃいましょう」


 配達員ゾンビを目視した彼女は、即座に途中の部屋のドアを開け、その中に入る。

 ドアノブを引き、バタン、と扉を閉めた。


「これ、運がよければ自分の部屋に間に合うんですが。間に合わなければこの部屋か、さっきの部屋に戻りましょう。ちなみに、お兄さんに見つかるかどうかは完全にランダムです。廊下からお兄さんの姿が見えたら、絶対に見つかりますので。タイミング調整もできない、クソゲー仕様ですね」


 ダダダダ、と配達員ゾンビが走る音。その足音が響く中、彼女は暢気に解説を続けていた。


 そして突然、配達員ゾンビの足音が消える。


「……さて、もう行ったかな?」


 彼女が、そう呟いた瞬間。


 ドン! と。

 目の前のドアに、何かがぶつかった。


「はい~。見つかっちゃいましたねぇ」


 ドン! ドン! ドン!


 配達員ゾンビが、玄関ドアに体当たりしているのだ。


 ドア自体は、金属製だ。そのため、元人間のゾンビに破られる、ということは無い。

 そして、少なくともこのゾンビには、ドアノブをひねるという知恵は無いようだった。


 だが、ゾンビに見つかり、出口に陣取られるという絶体絶命の状態で。


 彼女は、そのまま解説を再開した。

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― 新着の感想 ―
これはRTAあじが高い配信ですねぇ!
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