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最強のホラゲー配信者がゲーム世界に転生したら、全く怖くない。  作者: てんてんこ
第2章 北明新町

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第16話 彼女は音を立てました

 キッチンの奥から庭の全容を確認することはできないため、茜の姿は見られていない。

 だが、音に反応したということは、ゾンビは必ず、その場所に走ってくるということだ。


 茜は即座に身を翻し、『中腰』でブロック塀に寄り、そこを『登った』。


 女ゾンビは、玄関目掛けて走り始める。


 ブロック塀の上に登った茜は、『中腰』になって少し歩くと、物置の裏側に『張り付いた』。


『チラまたチラカッマタちらカしてッテ! テチらマタチラっ!』


 女ゾンビが、庭に走り込んでくる。

 茜は、『張り付いた』まま、じっと動かない。


「……1、2、3、4、……」


『…………』


 扉が全開になった物置の前で、女ゾンビは、ふらふらと揺れながら立ちすくむ。


「……12、13、14、15」


 きっかり15秒。


 茜は『中腰』に戻ると、す、と物置の裏から姿を現わした。


 その瞬間、女ゾンビは、さ、と身体を回した。

 何も見つからなかったため、家の中に戻り始めたのだ。


「……猶予はありません」


 茜はそう呟くと、ゆっくりと壁から『降りた』。

 『中腰』状態からのアクションスキルの使用であるため、無音状態を維持したままの動作が可能なのだ。


 女ゾンビを尻目に、彼女は物置の前に戻る。


 『大型リュックサック』


 目の前に置かれたそれを、彼女は『手に取った』。


 『アウトドア携帯コンロ』

 『アウトドアクッカーセット』

 『アウトドアケトル』

 『アウトドアマグカップ』


 手に届く範囲に置かれていたそれらを、彼女はリュックサックに詰め込んでいく。

 更に、さきほど食料品を詰め込んだエコバッグを、中身ごとリュックサックに入れると、蓋を閉めないまま立ち上がった。


「…………」


 そのまま彼女は歩き始める。『中腰』は解除していた。


 スタスタと歩き、彼女は庭を横切る。

 庭に面したリビングの窓の前を歩き、端まで辿り着いた瞬間。


 ぬ、と女ゾンビがリビングに姿を現わした。


 1秒の猶予も無かった。

 少しでも遅れていれば、茜は確実に、女ゾンビに発見されていただろう。


「……ふう、成功しました。ちょっとでも操作に引っ掛かったら、確実に発見されてしまいますので、緊張しますねぇ」


 彼女は解説を続けながらそのまま歩き、住宅の正面から道路に戻った。


「はい。ひとまず、このお宅でのミッションは完了です!」


 ややテンションの上がった声で、茜はそう宣言する。


 ここで、改めて彼女は、前に抱えた大型リュックサックの蓋を閉めた。

 カチン、とリュックの留め具がはまり込む音が、周囲に響いた。


「いやあ、緊張しましたねぇ。あそこのお宅では、この大型のリュックサックと、アウトドアクッカー一式が手に入ります! いやあ、文明の利器ですよ! これで、温かい食事を取ることができますね!」


 ほくほく顔で、茜は背負っている自身のリュックサックを下ろして大型を背負い直した。

 その後、元の小さめのリュックサックは、胸の前側に持ってくる。


「はい、茜ちゃんマキシマイズモードです。これ以上持つと動作が遅くなるので、気を付けましょう」


 そんなことを言いながら、茜は立ち上がって歩き始めた。

 次に目指すのは、この第一ステージのメインイベント。


 サバイバーの救出イベントである。


◇◇◇◇


 茜は、曲がり角からそっと顔を出した。ゾンビなどの障害が無いかを確認するため、『張り付き』からの『覗く』で、隠密態勢のまま先を確認する。


「さて……居ますね。一般通過ゾンビです。たぶん散歩中か通勤中か、そのあたりでゾンビになっちゃったおじさんでしょう。ああいうタイプは、ほとんど動かずに突っ立ってることが多いですね」


 彼女の視線の先。

 右手に、乗り捨てられたと思しきワンボックスカー。

 その先に、半袖のカッターシャツを着た中年の男ゾンビが、道のど真ん中で足を止めていた。


 ふらふらと揺れる姿は頼りないが、あれで一度人間を視認すると、とんでもない速度で駆け寄ってくる恐ろしい存在だ。

 なんなら、その叫び声で周りのゾンビも誘引する、厄介な警報装置なのである。


「あのタイプのゾンビは、一定間隔か、あるいはランダムな間隔で、向いている方向が変わるんですよね。今は向こうを向いていますが……」


 そんな解説を続けていると、中年男ゾンビがゆっくりと右側に向き直った。


「あの動き方は、一定間隔で右向きに回るタイプです。ランダムだと、もうちょっと動きが速いんですよね。なので、放っておけば一周回ってあっちを向いてくれます」


 ――そう。そろそろ、予想できる頃だろう。


 彼女は、「放っておけば」などと言いつつ、そのまま堂々と歩き出したのである。


 中年男ゾンビは右を見ているだけのため、まだ彼女の姿を捉えていない。

 だが、彼女の言葉が正しいのであれば、もうすぐ中年男ゾンビは、彼女の方を向く筈だ。


 茜は、ワンボックスカーのそばに寄ると、躊躇無くその扉を『殴った』。


 ばごん、と。


 当然の結果として、殴りつけた音が、周囲に響く。


 中年男ゾンビが、ばっと振り返った。


『ぉオおツかカレさマサマデデスぅアァー!』


「おっと見つかっちゃいましたね」

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