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最強のホラゲー配信者がゲーム世界に転生したら、全く怖くない。  作者: てんてんこ
第2章 北明新町

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第15話 彼女は文明の利器を手に入れました

 『歩く』は、基本的に音が出ない移動方法だ。

 その状態でワンボックスカーの影に入ることで、ゾンビ達からの視線を切ったのである。


 さらに、茜が向かう先には植木やその他の植物が茂った庭があった。

 庭に入ると、茜は『中腰』になる。


『ハイオハヨウ! ハイオハヨウ! ハイオハヨウ! ハイオハヨウ!』


『チラカシテッ! またマタタタタタチラッ! ちらチラッ! らちラチラちッ!』


 走り込んできたゾンビ達が衝突し、転がっていく。吹っ飛んだゾンビに巻き込まれ、何体かが転倒する。

 多重衝突事故に巻き込まれなかったゾンビも、既に『中腰』で隠密態勢になった茜の姿を見失っており、一瞬の空白地帯が発生した。


「はい、この隙に裏に回りましょう」


 主人公が『走る』から『中腰』などの無音移動に切り替えると、ゾンビは最後の音の発生源まで移動した後、視覚での探索を行うロジックになっている。


 そのため、うまいこと姿を隠すことができれば、ゾンビは茜を見失った状態になる。


「ちなみに、一瞬でも『中腰』を解除すると見つかりますので、注意してください」


 そして、ゾンビは探索状態になると、音にも視覚にも、非常に敏感になる。

 通常では見逃すような物陰も、少しでも身体がはみ出していると見つけてくる、ということだ。


「探索状態のゾンビは、とっても敏感なので……」


 そう言いながら、彼女は一瞬『歩く』に切り替えてすぐに『中腰』状態に戻った。


 注意喚起したそばから、これであった。


『ハイオハヨウ! ハイオハヨウ!』


『カシチラまたマタ! チラッ!』


『ゴメンナサイィ!』


 その一瞬の状態変化に、ゾンビ達は敏感に反応した。


 ぐるん、と音の発生源に向き直ると、一斉に走り出す。


『ハイオハヨウウゥ!?』


『チラカッしっ!?』


『ゴゴメンナァー!』


 ワンボックスと、ブロック塀の隙間。

 その狭い空間に、5体ものゾンビが殺到した。


 当然、そんな狭い場所を一気に走り抜けることなどできない。


 ゾンビ達は互いに互いの進路を邪魔する形で、その狭い隙間に挟まり込んでしまったのだ。


「はい、いまのうちに……」


 そして『中腰』の茜は、そのままゆっくりとワンボックスカーの反対側に移動すると、ソソソ、とそこを歩いて通り過ぎた。


 ゾンビ達が暴れ、ワンボックスカーがゆさゆさと揺れている。


「……と、このように、周囲のゾンビを狭い場所に押し込むことで、一時的に行動不能にさせることができます。この状態だと、ゾンビの視線は音を発生させた場所でしばらく動かなくなります。覚えておいてくださいね」


 茜は解説を続けつつ、『中腰』のまま道路に戻った。

 先ほどの『走る』の効果で、この周辺に、アクティブなゾンビは残っていない。


 後ろで押しくらまんじゅうをしているゾンビ達さえ乗り切れば、茜は今、このブロックを自由に移動できるということだ。


「あのゾンビ達が戻ってくる前に、まずは家捜しです。こちら、お隣のお宅。住人は、さきほど走って行ってしまいましたので。お邪魔します~」


 そんなわけで、茜は『中腰』のまま、開け放たれた玄関を通って屋内に侵入した。

 そのまま、迷わずキッチンに向かう。


「パントリーは、こちらですね。はい、ここに『エコバッグ』があります」


 彼女は『エコバッグ』を『拾った』。そして、そのままパントリー内の食糧を手に取っていく。


「パスタ1kg、マミーのパスタソース、いいですね。コンソメがありました。ケチャップの瓶、マヨネーズ。お、スナック菓子がこんなに。これはタンパクブレッド、ちょっと長持ちするパンですね。最後に、ミネラルウォーター。まあ、こんなものでしょう」


 そうしてエコバッグをいっぱいにすると、茜は踵を返す。


「長居は無用です。そろそろ、ゾンビ達も我に返るころですかね。裏口から脱出しましょう」


 キッチンに備え付けられた裏口のカギを開け、彼女は外に出た。その後ろで、バタンと扉が閉まり。


『マタチラカッ! カッカッシイィー!』


 女ゾンビの声が、響き渡る。


「……はい、悠長にしていると家主に見つかってしまいます」


 ドタドタと走る音が聞こえ、そして、スン、と静かになった。


 茜は、『中腰』で歩き、玄関に戻ってきていた。


「ということで、だいたい15秒くらい、あの裏口に釘付けにすることができます。今のうちに通っちゃいましょう」


 彼女は解説を続けつつ、『中腰』で庭を横切る。


 そこから見える、キッチンの奥。


 エプロンをした女ゾンビが、裏口の扉をじっと見つめているのが確認できた。


「普通にここを歩くと、リビングからもキッチンからも丸見えですからね。さっさっと」


 そして、茜は庭の隅に置いてある物置の前に来た。


「ちょっとタイミングがシビアなので、一気にやっちゃいますね」


 そう言って、彼女は物置の扉の前に立つと、やや傾いている扉の取っ手を『掴み』、腰を落として『引いた』。


「えい!」


 バキンッ!と何かが壊れる音がして、ガラガラ! と扉が開く。


『マタらかラカラちらカ! またマタマタちらかッ!』


 瞬間、女ゾンビが音に反応し、振り返った。

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