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ガーディアン・リヴァース:境界を駆ける者たち  作者: 南蛇井


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強制統合の開始 儀式発動

――反転祭壇が、呼吸を始めた。


石でも金属でもないその基壇は、かつて境界を縫い留めていた概念そのものを削り出した遺構だった。刻まれた紋様が逆向きに回転し、意味の流れが反転する。祈りは上へ昇らず、因果は前へ進まない。レゾナンス教団の最終儀式は、世界の「向き」を変えるための装置だった。


虚界は、外から侵入してこなかった。

それは重なり合う層として、静かに現れた。


空が二重写しになる。地平の向こうに、同じ地平がもう一つある。輪郭は一致しない。ずれた可能性が、ずれたまま重なり、互いの存在を否定し合う。五界の境界は、壁として壊れたのではない。膜として剥がれ落ちたのだ。


天使界の聖律が、最初に悲鳴を上げた。

「善」は即時に判断されるべきだった。だが、精霊界の自然法則が流れ込み、因果は遅延し、判断は分岐する。命令なき善は停止し、翼を持つ者たちは空中で立ち尽くす。正しさが、どこにも着地しない。


魔界の因果反転は、人間界へ滲み出た。

結果が先に現れ、原因が遅れて追いつく。瓦礫が崩れる前に、人が倒れる。弾丸は撃たれる前に命中し、悲鳴は死の後に発せられた。物理法則はまだ機能している――ただし、順序だけが破壊されていた。


霊界の思念層は、現実へ沈降した。

忘れられた街路、言えなかった別れ、選ばれなかった未来。記憶は霧となり、やがて地形となる。丘は後悔で盛り上がり、谷は沈黙で深まる。人々は自分の足元に、自分の過去が横たわっているのを見た。


世界は、一つになりつつあった。

だがそれは、縫い合わされる再統合ではない。押し潰される圧縮だった。異なる法則が折り重なり、耐えきれないものから消えていく。調停も、翻訳も追いつかない速度で。


反転祭壇の前に立つ教団上位司祭は、両腕を広げた。混線する空間に向けて、確信に満ちた声を放つ。


「分断は終わる。

 世界は、再び一つになる」


その言葉は祈りではなかった。

宣告だった。


そして世界は、答えを持たないまま、軋み始めた。

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