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ガーディアン・リヴァース:境界を駆ける者たち  作者: 南蛇井


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92/111

決着 ――思想の葬送

ゼロ化領域の中で、時間だけが流れていた。


戦いは、もう起きない。

力の衝突は存在せず、勝敗を分ける演出もない。


それでも――

決着は、確かに訪れていた。


篠原サクヤは、自分の手を見る。


そこにあったはずの“均す力”は、消えていない。

彼の思想も、能力も、否定されてはいない。


だが、それらはもう、世界に対する立場を持たない。


均しは、必要とされなかった。


霧亜は、静かに理解する。

篠原の思想は間違いではない。

世界の欺瞞を暴く鋭さも、構造的必然への洞察も、すべて正しい。


だからこそ、厄介だった。


だが今――

世界は、別の選択肢を持ってしまった。


美香の翻訳が、戦場の外へと流れていく。

精霊界の声は、救済も安定も要求していない。

人間界のざわめきは、誰かに決めてほしいとは言っていない。


夜宮は、武器を下ろしたまま、告げる。


「ここまでだ、篠原」


討伐宣告ではない。

排除命令でもない。


「お前の思想は、理解された。

 だが――選ばれなかった」


それが、この戦争の結論だった。


篠原は、ゆっくりと顔を上げる。

怒りも、嘲笑もない。


ただ、確かめるように健太郎を見る。


「……そうか」


短い沈黙のあと、彼は言う。


「それでも、選ぶのか」


健太郎は、即答しない。

だが、迷いもない。


「選ぶ」


それは勝利宣言ではない。

誰かを否定する言葉でもない。


人間が、人間であり続けるための、最低限の態度だった。


篠原は、目を閉じる。


世界に拒絶されたわけではない。

裁かれたのでも、滅ぼされたのでもない。


彼はただ――

選択肢として、ここで閉じられた。


「……なら、いい」


それが、篠原サクヤの最期の言葉だった。


均しの思想は、墓標も残さず、戦場から退場する。

否定されず、肯定もされず、

“選ばれなかった可能性”として。


ゼロ化領域が、静かに収束する。


残ったのは、

壊れかけた世界と、

それでも選び続けると決めた人間たちだけだった。

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