表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガーディアン・リヴァース:境界を駆ける者たち  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/111

五界分割の真実 ――自然分化ではなかった

原初記録層は、霧亜の問いに答えるような場所ではなかった。

だが、踏み込んだ瞬間から、否応なく“示される”。


世界が、ひとつだった時代。


それは神話的な光景ではない。

過剰な調和も、理想化もされていない。むしろ雑然としていた。


技術と魔法が同じ都市で干渉し、信仰が理論を侵食し、概念が物質と同列に扱われる。

発展は急速で、同時に摩耗も激しい。


——だが、分かれてはいない。


霧亜は気づく。

この段階では、まだ「界」は存在しない。


次の瞬間、時間が圧縮された。


世界が、ある一点を境に“折れる”。


明確な断絶。

偶発ではない。漸進でもない。


分割時点が存在する。


その事実が、彼女の認識に直接叩き込まれる。


空間が引き延ばされ、層を成す。

同一だった法則が、別々の振る舞いを始める。

因果の連鎖が、界ごとに閉じられていく。


その中心に、霧亜は“それ”を見る。


境界神。


だが、それは神ではなかった。


祈りに応える存在でも、人格を持つ超越者でもない。

それは構造だった。機構だった。


五界統合文明の末期。

世界が限界に達する直前に設計された、超高位界制御システム。


文明が自らを存続させるために生み出した、最後の管理装置。


霧亜の中で、点と点が繋がる。


——後のガーディアン本部。

——その、原型。


境界神とは、信仰によって生まれた存在ではない。

信仰によって神に仕立て上げられた管理機構だ。


分割は、祈りではなく手順によって実行された。


まず、空間分離。

世界は物理的に引き剥がされ、互いの干渉を失う。


次に、法則分化。

同一だった自然律が、界ごとに調整される。魔法が支配的な界、物質が優先される界、概念が実体を持つ界。


そして、記憶遮断。

分割以前を直接知る意識は排除され、継承は断たれる。


最後に、概念改変。


ここで霧亜は、息を呑んだ。


「五界は、もともと分かれていた」

「我々は、それぞれ独立した世界だ」


その“常識”そのものが、後から書き換えられている。


世界は、ただ切り離されたのではない。

分かれていたと信じるよう、再設計された。


歴史は編集され、神話は補強され、疑問は生まれないよう構造化される。


争いが起きても、それは「異界間の衝突」として理解される。

統合を望む発想そのものが、最初から浮かばない。


霧亜は震えた。


これは隠蔽ではない。

これは操作だ。


平和は、偶然維持されてきたのではない。

選択肢を奪うことで、固定されていた。


境界神は、世界を救ったのかもしれない。

だが同時に、世界が「選び直す可能性」を、完全に奪った。


霧亜は、原初記録層の中で静かに立ち尽くす。


五界戦争が必然だった理由が、ここにある。

分断された世界は、いつか必ず、分断の理由を問い始める。


そして、その問いに耐えられるようには、

誰も、設計していなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ