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ガーディアン・リヴァース:境界を駆ける者たち  作者: 南蛇井


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少年=リヴァースの正体 ――器は、選ばれていなかった

反転祭壇の中央で、

少年は司祭と向き合っていた。


いや、向き合っているように見えるだけで、

司祭の輪郭は、常に定まらない。

視線を合わせようとするたび、

そこには別の位相が滑り込む。


司祭は、静かに告げる。


「君は、選ばれた存在ではない」


その言葉は、

刃のように鋭くはなかった。


だが、

逃げ場のない重さを持っていた。


少年は一瞬、言葉を失う。


英雄でもない。

預言の子でもない。

世界に期待された救世主ですらない。


司祭は続ける。


「リヴァースは、人為的に造られた装置ではない。

 我々が選び、君に押し付けた役割でもない」


「それは――

 虚界が、自ら戻るために生み出した反転核だ」


空間が、微かに脈打つ。


少年の鼓動と、

祭壇の振動が、完全に重なる。


虚界は、意志を持たない。

人格も、計画もない。


だが、

“戻れないまま在り続ける”という状態が、

必然として生んだものがある。


境界を越えるための媒介。

内と外を反転させるための通路。


それが、リヴァース。


そして――

少年は、その器に過ぎない。


「君は、虚界と五界の両方に属している。

 だが、どちらにも完全には属さない」


「境界反転のための存在。

 世界の内側と外側を、接続してしまう者だ」


少年の胸に、

言いようのない空白が広がる。


守られてきた理由。

狙われ続けた理由。

“鍵”と呼ばれた意味。


すべてが、

彼自身とは無関係だった。


少年は、声を震わせる。


「じゃあ……」


「俺は、何のために生きてきた?」


問いは、

叫びにならなかった。


あまりにも静かで、

あまりにも切実だった。


司祭は、

そこで初めて、言葉を選ぶ。


「それは、我々にも分からない」


救いのない答え。

責任を放棄したような告白。


だが、司祭は続ける。


「君が生まれた理由も、

 生き延びた理由も、

 利用された意味も――

 誰にも定義できない」


「ただ、一つだけ確かなことがある」


司祭の声が、

確かな位相を持つ。


「君は、“選び直す”ために在る」


過去を肯定するためではない。

世界を元に戻すためでもない。


捨てられた可能性と、

選ばれた現実のあいだで、


どちらを世界として引き受けるかを、

決めるために。


少年は、

その言葉を受け止めながら、

初めて理解する。


自分は、

世界の答えではない。


――問いそのものなのだと。

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