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ガーディアン・リヴァース:境界を駆ける者たち  作者: 南蛇井


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73/111

虚界の変質 ――救済は、蓄積される

虚界ヴォイドは、

消すための場所ではなかった。


それは、少年が最初に気づいた違和感だった。


押し出された戦争は、消えていない。

否定された思想は、無に還っていない。

敗北した文明も、誤った選択も、

ただ――留め置かれているだけだった。


時間が流れる。


虚界は沈黙したまま、

世界から零れ落ちるすべてを受け止め続ける。


存在しなかったはずの未来。

選ばれなかった世界線。

成立しなかった生命の可能性。


それらは互いに溶け合い、

区別を失い、

一つの巨大な“蓄積”となっていく。


虚界は、満ちていった。


それは怒りでも、憎悪でもない。

復讐でも、支配欲でもない。


だが、確かな衝動が、

ゆっくりと形を持ち始める。


――戻りたい。


声ではない。

意思とも呼べない。


ただ、

「内側へ向かう圧力」。


存在できなかったものすべてが、

世界に対して発する、

無言の問い。


なぜ、私たちは選ばれなかったのか。


その変化を、

統合の王は見逃さなかった。


彼は恐れたのではない。

虚界を憎んだのでもない。


理解していたのだ。


このままでは、

虚界はやがて世界に触れる。

救済として生まれたものが、

世界そのものを揺さぶる存在になる。


統合の王は、

最後の決断を下す。


「虚界を切り離す」


それは、破壊ではない。

再利用でもない。


断絶だった。


虚界を世界の外へ封じ、

残された領域を再編する。


こうして、

世界は五界として再構成される。


境界が生まれ、

干渉は制限され、

衝突は管理される。


世界は、安定を得た。


だが、その代償は大きかった。


再統合の可能性。

失敗をやり直す権利。

別の選択肢を選び直す自由。


それらはすべて、

虚界と共に封じられた。


世界は救われた。

だが同時に、

世界は固定された。


少年は、

その光景を見ながら、

はっきりと理解する。


虚界は、

暴走した怪物ではない。


切り捨てられた可能性が、

ただ在り続けただけの場所。


そして――

自分の中に眠る「リヴァース」は、


その蓄積された救済を、

再び“内側へ返す”ための核。


世界を壊す力ではない。

世界を、選び直す力なのだと。

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