表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガーディアン・リヴァース:境界を駆ける者たち  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/111

特務科隊長・夜宮レイジの着任

カムイ支部の朝は、いつもより静かだった。

境界観測フロアの警報が鳴っていないだけで、支部全体が落ち着いて見える──そんな錯覚を覚えるほどに。


ロビーの自動扉が、ひとりでに風を吸い込むような音を立てた。


黒いコートの男が足を踏み入れた瞬間、空気の温度が一段下がった気がした。

魔力が露骨に漏れているわけではない。

むしろ、完璧に抑え込まれ、密度だけが異様に高い。

その“圧”に、受付カウンターにいた新人支部員が思わず背筋を伸ばした。


男は、ゆっくりと支部内を見渡し、名乗った。


「特務科隊長、夜宮レイジ。今日付で北東支部に着任する。

しばらくは支部長代理として統括権限を預かる」


低く、硬質な声だった。

その場にいた十数名の支部員が、一瞬遅れて反応し、ざわめきが広がる。


「と、とくむ……科、隊長……?」

「なんでこんな地方支部に……」


その動揺を切り裂くように、階段から降りてきた椿霧亜が声を上げた。


「まさか、本部から直々に派遣なんて……聞いていません、夜宮隊長」


霧亜は表情には出さないが、驚きがその歩幅から滲んでいる。

特務科──ガーディアン組織でも最上位の権限と情報を扱う部署。

地方支部に隊長クラスが常駐するのは、異例中の異例だ。


夜宮は霧亜の前に立ち、淡々と答えた。


「カムイ市のゲート発生率は、いまや人間界トップだ。

軽視する方が無理だと思わないか?」


霧亜は言葉に詰まる。


夜宮はロビー中央から動かず、静かに支部内を観察していた。

結界柱の配置、高感度魔力レーダーの稼働音、支部員一人ひとりの魔力波形──

まるですべてが彼の“視界”に入っているかのような、冷静な目だった。


「……これで全員ではないだろう。学生見習いがいるはずだ」


「健太郎と美香のことですか?」

霧亜が反射的に言うと、夜宮はわずかに視線を向けた。


「ああ……高槻健太郎。

潜在値評価レポートは読んでいる。興味深い素材だ」


その声音は、褒め言葉というより“分析対象”を見ているものに近い。


霧亜は眉をひそめた。

夜宮がどういう意図で健太郎の名を出したのか、まだ読めない。


──夜宮レイジは、既に知っている。

健太郎の魔力耐性が常識外れであることも、

“リヴァース因子”の可能性が長く伏せられてきたことも。


しかし彼は、まだ誰にもそれを言わない。


支部ロビーの空気は張り詰めたまま、

新任隊長を中心に静かに渦を巻いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ